受信料取り立てを進めるNHK

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   NHKが、訴訟を起こすなど、受信料の取り立てを加速させている。地デジへの投資やテレビ離れもあって、お金が必要らしい。ただ、取り立てコストに見合うだけの効果があるのか疑問も出ている。

今後は、一般家庭も含めて訴訟を検討する

   これはアナウンス効果を狙ったものだろう。NHKが、受信契約に応じなかったり、受信料を払わなかったりする視聴者に、「法的措置」を次々に取っている。

   未契約だった埼玉県内のホテルに対しては、3か月分約142万円の受信料支払いを求める訴訟を、NHKとして初めて起こした。また、未払いに対して申し立てた簡裁への支払い督促は、2006年11月から現在まで全国で436件にも上っている。

   きっかけは、NHK職員の一連の不祥事を不満とした未払いの急増だった。NHKでは、取り立て強化の理由を「受信料負担の不公平さをなくすため」と説明。さらに、最近、地デジの設備投資にお金がかかることや、ネット普及などでテレビ離れが進んで視聴者が増えないことなども背景にあると認めている。

   未契約者に対しては、今後は、一般家庭も含めて訴訟を検討するという。また、未払い者に対しては、NHKから最終通知をしても支払わなかった場合、簡裁に支払い督促を申し立てている。視聴者が異議申し立てをしなければ、支払い命令が出て、従わなければ、差し押さえの可能性がある。

   NHKによると、訴訟や支払い督促の対象は、無作為で選んでいる。悪質さの程度からとしなかった理由について、広報部では、「順々にやっていきますので、悪質さで絞る必要がないからです」と説明している。

   アナウンスが効いて、前出のホテルは09年7月8日、契約や支払いに応じ、NHKも翌日訴訟を取り下げた。また、簡裁の支払い督促では、8割に当たる349件が支払ったり、支払いに合意したりしている。

個人からの取り立ては難しい

   受信料問題に詳しい万代佳世弁護士は、「簡裁などから通知があり、給料などの差し押さえの可能性があると思うと、びっくりして慌てて支払うのでしょう」とアナウンス効果を分析する。

   ただ、支払い督促のうち、2割の87件は、異議申し立てがあったり、住所が不明になったりして決着がついていない。万代弁護士は、法人と違って個人からの取り立ては難しいと指摘する。

「ホテルは、会社なので財産が把握しやすいんです。テレビを持っているかどうかも分かりやすい。しかし、個人は、そうはいきません。勤め先や住所を含めて、個人情報は分かりにくいのですよ」

   特に、難しいのが未契約者のケースだ。「マンションなどでは、テレビを持っているのか確かめるのも困難です。手間暇がかかるので、本当にできるのかなと思っています。取り立てまでする費用対効果があるのかは、疑問が残りますね」。実際、未契約の件数は、未払いの4.5倍もあり、大きな問題になっている。

   視聴料を払おうとしない理由には、放送内容や経営体制への不満も挙げられる。「確かに、テレビを買えば、見たくなくても、支払いを押しつけられます。地デジも国策で決められたもので、必ずしも国民が望んだものとはいえないでしょう」と万代弁護士。ただ、「法律上は支払い義務があり、抗議としてはいいのかということはあります。もし不満があるとしたら、放送法を変える形しかないでしょう」と言っている。

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