アメリカ自動車のビッグ3のトップ、3人とも自家用ジェットで乗りつけ、お灸をすえられる。
経営危機に陥っている米自動車3大メーカーのトップ3人が18日、公的支援の是非を協議するためワシントン入りし、上院公聴会に出席した。
事前に3人が申し合わせたかのように、それぞれの自家用ジェットで現地入りした。
このことが、公聴会の行方を左右し、自分の首を絞める結果になることなど、この3人は微塵も予想していなかっただろう。
民主党は17日に金融安定化法の7000億ドルの公的資金枠のうち250億ドル(約2兆4000億円)を不振にあえぐ自動車メーカー救済のためにあてることを提案した。
販売急減に資金繰りの悪化で窮地に陥っているビッグ3に、公的支援の手を差し伸べるか否かの判断材料として、GMのワゴナー会長、フォードのムラーリー最高経営責任者(CEO)、クライスラーのナルデリ会長というビッグ3のトップを招いた。
事前に議会からは、支援を行うとすれば、「大幅なリストラや実現可能な再建計画の策定が条件」という声が上がっていた。これは当然で、自力で再建への努力を怠るものに公的支援などできるはずがない。この発言の影響もあって、GMとクライスラーの合併構想も大詰めまで話が進んでいたにもかかわらず白紙に戻っている。
前に行われた、米上院銀行住宅都市委員会で、GMのワゴナー会長らは、支援を受けなければ「壊滅的な」被害が自分たちでなく、米経済に及ぶとして、公的資金による米自動車産業向けの緊急融資法案の早期成立を訴えてた。
自社の危機はアメリカの危機であると。だから支援しなさいと・・・。かつてGMが「GMにとって良いことは、アメリカにとって良いことだ」と発言したが、同じ意味のことをこの期に及んで言っている。全く他力本願の発言である。
その、危機感のなさが、今回の公聴会で浮き彫りとなった。
事前に3人が申し合わせたかのように、それぞれの自家用ジェットで現地入りしたことに対し、シャーマン下院議員から質問があった。
「今から私の質問に挙手で答えてください。」と
「今日ここに来るのに、公共交通機関を使った者はいますか?」
誰も手を挙げない。当たり前である。自家用ジェットで来たのだから・・・。
「では、自家用ジェットを置いて公共交通機関で帰る者は?」
やはり誰も手を挙げない。いや、挙げれなかったのかもしれない。ここで初めて自家用ジェットで来たことがまずかったと気がついたはずである。予想したいなかった展開にどうにもできなかったのが本音であろう。
このあと、自分たちの置かれている立場をわきまえていない3人は、「公的援助を求める前に、することがあるのでは?」とお灸をすえられたのは言うまでもない。
ワゴナー会長が乗ってきた自家用機は30億円を超えるという。もちろんGM所有である。
結果、公聴会では、3人の危機感のなさだけが浮き彫りとなった。
ビッグ3は、90年代から不振にあえぎ、好転せぬまま今日を向かえ、アメリカの経済のためにも公的援助を、と叫ぶ。
しかし、再建に1番必要なのは、この3人の意識改革であろう。
今日に至ったのは、何よりも自分たちの危機感のなさ、経営感覚の欠如が最大の原因であったと気づくことが、再建への第一歩であり、唯一の道である。
編集部:自動車魂”世界一car journalist 木下)
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