日本は悲願の8強入りを果たした【写真:石倉愛子】

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「日本が世界に反骨精神を示す」―ガーディアン紙のコラムが日本でも話題に

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は13日、A組最終戦で日本がスコットランドに28-21で勝利し、史上初の8強入り。4連勝で首位通過を決めた。台風19号の接近により開催が危ぶまれながら、被災者に多くの勇気と元気を与えた一戦。開催の尽力を目の当たりにした英紙記者は「日本人の『おもてなし』は皆の想像より、さらに数段階先にあった」と感銘を受けたことを感動的なコラムでつづっている。

 横浜で行われた一戦は日本のみならず、大きな感動を与えていた。英紙「ガーディアン」で「台風被害にもかかわらず、日本が世界に彼らの反骨精神を示す」と題したコラムを掲載したのはアンディ・ブル記者だった。試合後、ピッチ上で寝転んだリーチ・マイケル主将、田村優を中心に、笑顔で集合写真に収まる選手たちの印象的な1枚とともに感動コラムを展開している。

 日本戦の試合前に捧げられた黙祷から書き出した記事。試合開始からハーフタイム、試合終了まで、明らかになる台風犠牲者の人数が増えていく、日本にいるからこそわかる経過を克明に記した。会場周辺もまだ水が溢れ、近辺の川崎では多くの人が避難し、相模原では被災者の人数も正確に把握できていない。そんな甚大な被害を受けながら大会関係者が会場に泊まり込み、関係各所との協力により、開催にこぎつけた尽力についてレポート。さらに、こうも記している。

「気を紛らわせるため、日常を取り戻すため、(台風への)挑戦、もしくは我々は生きていて、今あるものを楽しむのだ、という決意を示したのかもしれない」

 そんな姿に感銘を受けたようだ。同記者が考えたのは、今大会日本が示している「おもてなし」の精神についてだった。「日本では、このW杯でどのように『おもてなし(日本流の奉仕)』をすべきか、と誰もが議論していた。正確な訳語は無いが、ここで4週間を過ごした私の不完全な理解によれば、それは客を喜ばせるために全力を尽くすことだった」。このように、解釈について理解していたというブル記者。それは“浅はか”だったという。

「しかし、彼らの『おもてなし』は皆の想像より、さらに数段階先にあった」―

「しかし、彼らの『おもてなし』は皆の想像より、さらに数段階先にあった。多くの人々が試合前の数日間、誤解していたのはそのためかもしれない」と言及。「日本が(過去に)負けたことしかないスコットランドと対峙するより引き分けを得るため、この試合を中止したがっていると感じたこともそのためかもしれない。スコットランドを妨害する大いなる策略と示唆する者すらいた」と、日本が戦わずして勝ち抜く戦略を立てているという疑念の声に触れた。

 その上で「スコットランド協会の最高責任者、マーク・ドッドソン氏も完全に誤解していた」とも記した。同氏が中止になった場合は法的措置を取ると試合前に示唆し、激怒していたことに触れ、記事では「これは、ここで起きていることや、日本人の心情、彼らがこの試合をプレーし勝利することについてどれほどの覚悟をしていたのかについての恥ずかしいほど気の荒い勘違いだった」と言及。他の海外ファンと同様に日本人の心を正しく理解していなかったと指摘した。

 それほど、死力を尽くした開催準備に受けた感銘は大きかったようだ。黙祷の後の国歌斉唱でファンが一つとなって歌い、強力な後押しを受けた日本は相手の脅威になったと紹介。そうして始まった試合について「前半の日本は、日曜に戦う南アフリカを含む、どの大会参加チームも断ち切れるような30分の獰猛で集中したラグビーの魔法を解き放った」「スコットランドも展開の早い試合をプレーしたが、より調子を上げ、鋭く、素早いチームに凌駕され、完全に圧倒された」と絶賛した。

「今なら何だって可能と誰もが信じているかのような日本のファンたちに対して、日曜夜の出来事の後で誰が違うと言えようか」

 記事では粋な表現で締めくくられている。常に相手を思いやる「おもてなし」の精神は、どんな困難な状況にあっても変わらない。その裏にある「反骨精神」に心を打たれた様子のブル記者。このコラムはネット上で日本のファンでも大きな話題になっており、日本人の価値を再び、考えるきっかけとなっている。(THE ANSWER編集部)