九州大手私鉄の西鉄が事業戦略説明会を開催。天神大牟田線の観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO(ザ・レール・キッチン・チクゴ)」の利用状況や、福岡空港内を走るバスの自動運転化などについて説明しました。

高架化のタイミングを狙う

 九州の福岡を中心に鉄道とバスのネットワークを展開している西日本鉄道(西鉄)が2019年5月20日(月)、東京都内で2019年度のグループ事業戦略説明会を開催。倉富純男社長は、3月から運行している観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO(ザ・レール・キッチン・チクゴ)」について、順調に推移しているとの見方を示しました。


西鉄天神大牟田線を走る通勤列車(2019年2月、草町義和撮影)。

「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は、3月23日に運行を開始した天神大牟田線の観光列車です。運行区間は西鉄福岡(天神)駅から大牟田駅(福岡県大牟田市)までですが、6月からは、西鉄福岡(天神)駅から太宰府天満宮が近くにある太宰府駅(福岡県太宰府市)までの区間も加わります。車両は通勤形の6050系電車を改造。テーブル席と、電気窯を設置したオープンキッチンがあり、車内で調理した料理を客に提供しています。

 倉持社長は「相席にならないよう4人分のテーブル席を3人グループに販売したりすることがありますので、(腰掛けの数で見た場合は)おおむね8割から9割程度の稼働、実質ほぼ満席です。当初の見込みより上々です」と話しました。その一方、「まずは(現在の)『THE RAIL KITCHEN CHIKUGO』を生かして沿線の活性化にしっかり取り組むのが大事と思っています」と述べ、車両の増強や新たな観光列車の運行は現時点では考えていないとの認識を示しました。

 また、中期経営計画(2019年2月策定)に盛り込んだ「天神大牟田線への有料座席制度の導入」については「現時点では特にこれといった、決まったことはありません」としつつ、「夕方のラッシュが終わったころ、通勤客が酔っぱらっても安心して座って帰れる列車をイメージしていたんですが、鉄道(の部署)では朝に何とか運転できないかなど、いろんな検討をしています。既存の車両をベースにすると思います」と述べました。

 運行開始の時期は「(天神大牟田線の一部を高架化する)連続立体交差事業が進んでおりまして、あと2年で(線路を地上から高架に)入れ替えます。そのときに大規模なダイヤ改正が必要になりますから、高架化が予定通りに進めば、その辺になると思っています」と話しました。

福岡空港連絡バスの自動運転化など目指す

 バス事業の現状と将来については、西鉄自動車本部の清水信彦本部長が説明。ここ数年は高齢者や訪日外国人観光客の増加の影響で、バスの利用者も増加傾向に転じたといいます。


西鉄の路線バス(2018年10月、草町義和撮影)。

 しかし、清水本部長は「バス事業者にとっては大変喜ばしい傾向なんですが、皮肉なことに運転手不足という問題が起きています」と話し、福岡市内のバス路線では減便や最終バスを繰り上げるなどの影響が出ているといいます。

 こうしたことから、交通系ICカードの利用データなどを活用してバスの最適な運行計画を作成するための支援システムの開発や、スマートフォンのアプリを活用したMaaS(Mobility as a Service=マース、最適な移動手段を利用者に提示するサービス)の導入、人工知能(AI)を活用したオンデマンドバスの運行や安全監視システムの導入などを推進しているといいます。

 このほか、福岡空港内の国内線ターミナルと国際線ターミナルを結ぶ連絡バスの改良も推進するとしています。まず2020年に連節バスを導入し、2023年ごろから走行区間をすべて専用道に変更。これにより所要時間を片道5分(現在は10〜15分)に短縮するといいます。

 また、2018年には小型バスによる自動運転の実証実験が行われましたが、さらに中型バス、大型バス、連節バスと段階的に実証実験を進め、自動運転バスの導入に挑戦するとの方針を示しました。