骨折の種類とカルシウムの必要性

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 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 5月も中旬を過ぎ、過ごしやすい季節となりました。公式戦を勝ち続けているチームはもちろんですが、そのほかのチームも休日などを中心に練習試合など実践的な練習を積んでいることと思います。その中で気をつけたいのがデッドボールや接触プレーなどによる突発的なアクシデントによるケガです。この時期にケガをしてしまうと夏の大会に間に合うかどうかも気になるところですよね。さて今回はアクシデントによって起こることが多い骨折と競技復帰に向けたコンディショニングについてお話をしたいと思います。

骨折も種類はさまざま骨折とは骨の連続性が断たれた状態のこと

●スポーツ外傷によく見られる骨折とその種類 突発的に起こるケガのことをスポーツ外傷と呼びますが、打撲や衝突、転倒などで骨に大きな衝撃が加わり、その連続性が断たれてしまったものを骨折と言います。骨折部位にずれのないヒビ(不全骨折)や骨の一部がはがれたもの(剥離(はくり)骨折)、骨が一部陥没(かんぼつ)したもの(陥没骨折)なども骨折に含まれます。

 また骨折には骨が皮膚を突き抜けていない閉鎖骨折と、骨折と同時に骨が皮膚を突き破って骨折部位が見た目でもわかる開放骨折とがあり、開放骨折については開放部が直接外界に触れているため感染を起こすリスクが高く、迅速な対応と治療が必要となります。

 骨折部が複雑に粉砕(ふんさい)されたものは粉砕骨折、大きな外力ではなくても毎回同じ部位に繰り返し外力がかかり続けることで起こる骨折を疲労骨折といいます。疲労骨折だけは突然起こるものではなく、繰り返しの外力によって生じるケガなのでスポーツ外傷ではなく、スポーツ障害に分類されます。

●疲労骨折は慢性的なスポーツ障害 ランニング量やジャンプ動作などのトレーニング量が極端に増えると骨に慢性的な痛みを生じることがあります。疲労骨折は1回の大きな外力で骨が折れるのではなく、同じ部位に外力が繰り返し加わることで骨に小さなひび割れが入り、通常ならば安静にするところを、さらに痛みなどを我慢した状態でプレーを続けてしまった結果、骨の連続性が断たれて亀裂を生じたものです。

 脛骨(けいこつ:すねの内側の骨)、中足骨(ちゅうそっこつ:足の甲の骨)、腓骨(ひこつ:すねの外側の骨)などに起こりやすいですが、肋骨(ろっこつ)、大腿骨、骨盤、膝蓋骨(しつがいこつ:膝のお皿の部分)などにも起こります。

 腰椎分離症は腰椎の疲労骨折です。成長期である高校生は大人に比べて骨が柔らかいため、繰り返し物理的ストレスが加わることによって疲労骨折を起こしやすい時期であるということも理解しておきましょう。

「骨折=カルシウムの摂取」だけではない!「骨折=カルシウム」だけではなく、土台となるタンパク質など他の栄養素も必要

●骨折にはカルシウムが必要? 骨折すると「牛乳を飲まないと」「カルシウムをとらないと」と言われることが多いと思いますが、カルシウムの摂取は骨折の早期回復につながるのでしょうか。

 答えは「カルシウムはもちろんですが、その他の栄養素もあわせて必要」です。カルシウムが特に強調される理由としては、骨密度の評価につながるからだと考えられます。

 骨密度は骨に存在するカルシウムなどのミネラル分がどの程度あるかという単位面積あたりの骨量を示し、骨の強度を表します。骨密度が高まれば、物理的ストレスに負けない強い骨に再生されるため、「骨折=カルシウムの摂取」ということが言われるようになったのだと思います。

 一方、その他の栄養素が必要という理由としては、骨はカルシウムだけで構成されているのではなく、カルシウムを定着させるための構造の土台となるコラーゲンが必要だからということです。例えるならば、建物の鉄骨にあたるところが骨の支柱(コラーゲン)であり、そのすき間を埋めるようなセメントの役割をカルシウムが担っています。支柱とセメントがそろってこそ強い骨ができると考えましょう。

 コラーゲンはタンパク質の1つですので、骨折をしたときにはカルシウムに加えてタンパク質を多く含む食事を心がけましょう。また骨の再生を促すようなビタミン、ミネラル分もあわせてとり、栄養面からも骨癒合をサポートすることが競技復帰に役立ちます。

 さらに睡眠中には骨の成長・修復を促す成長ホルモンが分泌されるため、十分な睡眠をとることも大切です。骨折は長期離脱を余儀なくされるケガの一つですが、医師と相談の上で患部外トレーニングを実施し、骨折部位については段階的なリハビリテーションと栄養面からのアプローチを行うことによって少しでも早い競技復帰につながるようにしていきましょう。

【骨折の種類とカルシウムの必要性】●骨折は大きな衝撃が骨に加わり、その連続性が断たれてしまったもの●骨が皮膚を突き破った状態の開放骨折は、迅速な対応と治療が必要●疲労骨折は繰り返す外力によって、骨の連続性が断たれて亀裂を生じるスポーツ障害の一つ●骨折を栄養面からサポートするためにカルシウムだけではなくタンパク質も必要●骨を鉄骨にたとえるなら鉄骨部分がコラーゲン、そのすき間を埋めるセメントがカルシウム●骨折部位の管理とともに患部外トレーニングも忘れずに行って早い競技復帰を目指そう

(文=西村 典子)