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 次々と明るみに出る児童虐待。虐待を受けた過去を持つ人々に取材する中で、「何年たっても当時のことを思い出すと恐怖で息ができなくなる」と取材を断られることが多かった。それほど虐待は癒えない傷として人生に影を落とすのだ。心身に大きな傷を受けた少女たちは、その後どのような人生を歩むのだろうか。

◆虐待された少女の“その後”に迫る

 幼少期から高校時代まで、父親から虐待を受けていた有森美祐さん(仮名・26歳・広告)は、社会人になって親元を離れた今も、虐待の後遺症に苦しんでいる。

「父の気分次第で、服や勉強道具を浴槽に沈められたり、ガラスの灰皿を投げつけられました。人格を否定するような暴言も日常茶飯事で、『お前は何をやってもダメだ』『どうせうまくいかない』と否定され続けてきたせいか、今も自分に自信が持てません。

 自信がないから、仕事で意見を求められても何も言えず『ディスカッションにならない』といつも注意される。さらに少しでもミスをすると、『やっぱり私はダメ人間だ』と精神的に落ちるところまで落ちてしまう。父の言葉が呪縛となって、悪循環から抜け出せずにいます」

 美祐さんいわく「自己肯定感が低いので、認めてもらえないとすぐ精神的に不安定になる」らしい。

◆顔色ばかりを気にして疲れ果て

「いつも体じゅうにアザを作っていた」と語る三村結衣さん(仮名・31歳・飲食)も、虐待から15年近くたっても悩みは尽きない。

「嫌われないことが最優先なので、自分の気持ちは常に押し殺す。敵認定されないために相手に合わせてキャラを装ったり、ひたすら共感や肯定を繰り返して仲間だと思ってもらえるように頑張る。

 でも、顔色ばかりを気にして立ち回っているうちに疲れ果てて、自分がさらに追い詰められるんです……」

◆虐待の経験はその後も心を蝕み続ける

 虐げられてきた少女は、過剰に温もりを求めてしまうこともある。

「重いアームバーで殴られたり、息ができないくらいシャワーを顔面にかけられた」

 という経験を持つ女性(24歳・SE)は水商売の副業がやめられない。

「体を売る理由はお金じゃない。口先だけでも愛が欲しい」

 と声を震わせていた。

◆一般人とは比較できない恐怖

 自身も壮絶な虐待経験を持つ精神科医のまさきまほこ氏は語る。

「虐待を受けた子供たちは、基本的に自分を大事にできません。私もそうでしたが、どんな酷いことをされても、家庭という閉鎖的な空間では『これが普通なんだ』と、親の異常さに気づけない。

 そして精神的な傷は自然治癒することはなく、摂食障害やうつ病、衝動的に自殺を図る境界性パーソナリティ障害などに悩まされます。

 大人になってからも人の顔色を気にして人間関係に疲れたり、叱られることに恐怖を感じて転職を繰り返すことも珍しくありません」

 この恐怖は一般人が感じるそれとは比較できないレベルらしい。

「大人の男の人の怒鳴り声や、イライラした声を聞いた途端、萎縮して動けなくなることもある。一瞬で過去の記憶がフラッシュバックし、注意やお説教も“恐怖の塊”として襲ってくるのです」

 我々の身近なところにも、過去と必死に向き合い、闘い続けている人々がいるかもしれない。虐待は、その人の未来を壊す大罪だ。

【精神科医・まさきまほこ氏】
著書に、自身が受けた壮絶な虐待の経験をもとに書きあげた小説『もう独りにしないで/解離を背景にもつ精神科医の摂食障害からの回復』(星和書店)など

取材・文/青山ゆか キンゾー
※3/12発売の週刊SPA!特集「虐待される少女たち」より