ポルシェが、次期型「マカン」を「電気自動車にする」と宣言
ポルシェが次期型「マカン」は「完全な電気自動車になる」と26日に宣言しました。発売時期は2020年代の初期になる見込み。ポルシェの電気自動車としては、2019年内に発売される「タイカン」とその派生モデルでワゴン型の「タイカン クロスツーリスモ」に続く3番目のモデルになる予定です。生産は現行マカンと同じドイツ・ライプツィヒ工場で行われます。ポルシェと言えばドイツの高級スポーツカー・メーカーとして知られていますが、近年その稼ぎ柱となって経営を支えているのはもっぱらSUV。中でも(比較的)コンパクトで(ポルシェとしては)低価格なマカンは、最も売れているポルシェ車です。同社の2018年における全販売台数は25万6255台。そのうちマカン・シリーズは8万6031台、つまり全売り上げの約34%を占めています。ちなみにもっと大型のSUV「カイエン」を合わせると、2つのSUVでポルシェ全販売台数の6割を超えます。

とはいえ、マカンの基本設計はポルシェの現行ラインアップで最も古く、そのデビューは2013年にまで遡ります(昨年マイナーチェンジが施されましたけど)。プラットフォームやコンポーネントの一部を共有していたアウディの「Q5」は、既に昨年フルモデルチェンジして2代目に替わりました。

今回のポルシェによる発表では、次期型マカンにはポルシェとアウディで共同開発した「PPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)」と呼ばれる電動車用プラットフォームが使われるとのこと。つまり、現行型アウディ Q5をベースにした新型マカンは登場せず、昨年のマイナーチェンジのみで2020年以降の電動化まで持ち堪えるという計画が明らかになったと言えます。

アウディよりも台数が捌けないポルシェは、世代交代を1段飛ばして、そのぶん次期型にリソースを集中させたいということでしょう。PPEを使った新型車はアウディ側からも登場するので、2代目マカンの兄弟車は3代目アウディ Q5になるとも考えられますが、現行型Q5はメキシコにアウディが新設した工場で生産されていることもあり、PPEを採用する電動モデルは次期型Q5とは全く異なる新型車になる可能性もあります。


なお、アウディは既に電気SUV「e-tron」を昨年発表していますが、こちらは既存の内燃エンジン車と同じプラットフォームに手を加えて電動化したもの。このe-tronが次期型マカンのベースになるわけではないようです。PPEは幅広いクラスのクルマに使えるように設計されているので、将来的にはアウディやポルシェから複数のEVが発売される見込みです。

電気自動車となる次期型マカンのスペックについてはまだ明らかにされていませんが、ポルシェはタイカンと同じ800ボルトのバッテリー・システムを採用すると発表しました。現在の一般的なEVが採用する電圧の2倍に相当するこのシステムは、従来よりも短時間で充電できることが利点。15分も充電すれば400kmの距離を走れると言われています。ドイツでは昨年12月にこの800ボルトに対応した超急速充電ステーションが試験的に開設されました。アストンマーティンも今年中に発売予定の「ラピードE」というEVに、800ボルトのシステムを採用すると発表しています。

ポルシェのオリバー・ブルーメ会長は、同社が2022年までに60億ユーロ(約7,500億円)を超える額を、将来の電動モビリティのために投資すると発表しました。2025年には50%のポルシェ車が電動化されるとのことですが、これには完全な電気自動車だけでなくプラグイン・ハイブリッドも含まれます。電動化は排ガスを減らすだけでなく、ポルシェのスポーティなキャラクターに「完璧に合う」とブルーメ会長は述べています。

なお、次期型マカンは完全に電気自動車のみとなるのか、それともEVはバリエーションの1つで、内燃エンジン搭載モデルも残されるのかという質問に対し、ブルーメ会長は明確な返答を避けました。日本で販売されている現行マカンは、直列4気筒エンジン搭載モデルなら699万円から。EV化される次期型モデルはこれより高くなることが予想されますが、約1,000万円からと言われるタイカンよりは安くなるはずです。