カルロス・ラモス主審【写真:Getty Images】

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「謝れ」発言受けたラモス主審に豪州紙擁護論「セリーナこそ謝罪すべき」

 テニスの全米オープンで男女シングルス日本人初優勝を果たした大坂なおみ(日清食品)。決勝では、女王セリーナ・ウィリアムズ(米国)が客席からのコーチングによる警告をきっかけに、主審への暴言などで警告を受けた。コート上で再三、主審に謝罪を求めた元女王だが、海外メディアは「セリーナこそ主審に謝罪すべき」と批判。忖度なしの判定でセリーナに槍玉に挙げられたポルトガル人審判を擁護する声が高まっている。

「アンパイアのカルロス・ラモスに謝罪すべきはセリーナ・ウィリアムズだ」と見出しを打って特集したのは、南半球で唯一グランドスラムを開催するオーストラリアの最大紙「シドニー・モーニング・ヘラルド」だった。

 大荒れの女子決勝のもう一人の主役となったラモス主審について、記事は「世界的な話題の中心になるというローラーコースターのような精神状態の真っ只中だろう。プロテニス界のアンパイアとしては回避したいはずだ」と同情している。

 グランドスラム31度目の決勝の晴れ舞台で怒鳴り散らし、号泣するなど取り乱したセリーナ。第1セットで大坂に圧倒された後、第2セットでコーチのパトリック・ムラトグルー氏はハンドシグナルでセリーナに指示を送った。これがコードバイオレーションとなって警告を受けたが、元女王は逆上した。記事では、そのやりとりをレポートしている。

「私は勝つためにインチキはしない。負けたほうがいい」とチェアアンパイアのラモス氏に逆上。「あなた、謝りなさいよ。謝りなさいよ。私は一度もインチキをしたことがない。娘もいるのよ。あなたは謝罪の必要がある」と審判に詰め寄り、その後も劣勢でラケット破壊に加え、さらなる「盗人」呼ばわりの暴言。ラモス氏は3つの違反によるぺナルティを毅然と言い渡した。

 敗北後の審判への挨拶でも「謝罪はないわけ?」と詰め寄ったセリーナ。元女王支持者で埋まったスタンドは主審に激しいブーイングを送った。記事では「選手、ファン、ソーシャルメディアの批判の指に晒された」と報じている。

忖度なしのラモス主審の判定を支持「決定は性差別や人種差別と関係ない」

 だが、本当にラモス氏は批判に値したのか。客席からの指示はコーチ自身が米スポーツ専門局「ESPN」に対し、「事実」と認めている。

 怒りのラケット破壊について、記事では「乱暴にコート上でラケットを破壊する姿はテニスにとってイメージが悪いだけでなく、コート上のオフィシャル、ボールパーソン、前列の観衆に破片が飛ぶ可能性もある」とし、選手も違反と理解していたと指摘。さらに「盗人」呼ばわりした審判への暴言も規律違反だった。

 記事では「ラモスはこれらの3つの事象において、いずれもチェアアンパイアとして正しい判断を間違いなく行った」と100%支持。また、ウィリアムズは試合後の会見で、男子ツアーならペナルティを受けなかったはずと力説し、性差別と人種差別を持ち出したが、特集ではそのような事実はなかったと断定している。

「ウィリアムズはグランドスラム決勝で性差別も人種差別も受けなかった。我々は彼女の輝かしい記録でもって、この日の事実に影を落とさせてはいけない。この試合で間違っていたのはウィリアムズだ。ラモスの決定は性差別や人種差別と関係ない。全ては明確なグランドスラムの規律違反だ。そして、恐れや贔屓をせずに、コールを言い渡した勇気だ」

 セリーナ自身のルール違反こそが全ての原因と指摘。怒りの女王に忖度せず、観衆のブーイングを浴びながら、毅然に振る舞ったラモス主審は正しかったと、結論付けている。(THE ANSWER編集部)