夢だったプレミアリーグ行きが決定的となった武藤。そんな日本代表FWに、ニューカッスルで求められることとは? (C) Getty Images

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 現地時間7月27日、ニューカッスルは、「武藤嘉紀と個人合意に達した」と公式サイトで発表。就労ビザの申請が認可され次第、正式に移籍が完了することも合わせて伝えた。

 昨シーズン終盤にプレミアリーグ挑戦願望を口にしていた武藤からすれば、ついに念願が叶った形だろう。一方、契約にこぎつけたニューカッスルにとっても、日本の韋駄天獲得は、今夏の移籍市場における重要な補強だったようだ。

 2部から昇格して望んだ昨シーズン、知将ラファエル・ベニテスの巧みな采配もあり、当初の目標だった残留を上回る10位でフィニッシュ。今シーズンは欧州行きを懸ける1年と位置付けており、そのため今オフは、武藤を含め、スイス代表DFファビアン・シェア、韓国代表MFキ・ソンヨンら、新戦力5人をここまで獲得している。

 そのなかで武藤獲得は、何より指揮官のベニテスが「自らの進退を懸けてまで希望した」(『Sky Sports』より)と言われるほど、重要なピースだった。
 

 ではなぜ、ベニテスは武藤を熱望したのか? 地元紙『Evening Chronicle』は、次のように綴っている。

「スピーディーなムトウは、チームに欠ける9番タイプの解決策ではない。あくまでベニテスの攻撃陣における、もうひとつの武器のように思える。彼はニューカッスルに、オプションを提供できる」

 昨シーズンのニューカッスルは、アレクサンダル・ミトロビッチ、イスラム・スリマニ、ドワイド・ゲイル、ホセルらがいずれも不発……。頼みの綱となる9番タイプのストライカーがおらず、得点力不足に悩まされた。

 よって今夏は、新たなストライカーの補填に奔走中だ。去就が不透明なミトロビッチを見限り、WBAに所属するベネズエラ代表CFのサロモン・ロンドンの獲得に動き出していることが、しきりに報じられている。

 しかし、大型CFではない武藤は、そうしたチームの悩みを満たす存在ではない。むしろ、ニューカッスルに新しい何かをもたらすことが期待されているようだ。『Evening Chronicle』の見立ては、こうである。

「残念ながら、950万ポンド(約14億円)というのは第一人者(トッププレイヤー)の移籍金ではない。とはいえ、掘り出し物になることもある。そしてベニテスは、ムトウがそうなれると確信している。

 彼の主な特徴はスピードであり、放出が濃厚視されているミトロビッチの代役になるようには見えない。177cmと、間違いなくターゲットマンではないからだ。ホセルのようなフィジカルも、ミトロビッチがもたらした空中戦の脅威もない。もし、ムトウの獲得でベニテスのストライカー探しが終わるとすれば驚きだ」
 武藤があくまでもCFのファーストチョイスではないことを断じる同紙は、さらにベニテスの戦術的な考えを推測し、日本の韋駄天に与えられる役割についても記している。

「ベニテスがウイングからの攻撃を好むことを考えるなら、CFのファーストチョイスには、クロスに飛び込むための、より大きな選手を探すだろう。

 そしてムトウのスピードは、疲労した相手DFを撹乱するためには効果的で、途中投入で状況を打破するのに、その融通性を使うほうが自然だ。つまり、ムトウはプレミアリーグの全監督たちが必要としている攻撃での、もう一つのオプションとなりうる重要なキーマンなのだ」

 マインツでは主に2トップ、もしくは1トップを務めてきた武藤だが、新天地となるニューカッスルでは、自慢のスピードを活かした新たなる役割が与えられそうだ。

 いずれにせよ、プレミアリーグ史上11番人目の武藤のプレーには期待をせずにはいられない。正式な移籍決定の知らせを待ちたい。