炎天下で駐車していると、車内温度は60度近くに達することも。乗車前にドアを何度か開閉する、走行中は対角線上に位置する窓を開ける、などの対策が温度を下げるのに効果的ともいわれますが、どのような仕組みなのでしょうか。また、エアコンはどう使うのが効果的なのでしょうか。

ダッシュボードは80度近くなることも!?

 真夏の炎天下で駐車している車内の温度はどれほどでしょうか。JAF(日本自動車連盟)が2012(平成24)年に実施したユーザーテストによると、外気温35度(摂氏。以下同)でサンシェードなどの対策をせず、4時間駐車した黒いワンボックスカーでは、車内の最高温度57度、平均温度51度、ダッシュボードに至っては最高79度にも達したそうです。


炎天下で駐車しているイメージ(画像:Gudella/123RF)。

 車内を早く冷やしたい場合、とにかくエアコンを全開で作動させたほうがよいのでしょうか。それとも、窓を開けるなどしたうえでエアコンを使ったほうがよいのでしょうか。カーエアコンシステムや、関連部品などを製造するカルソニックカンセイ(さいたま市北区)に話を聞きました。

――車内温度を早く下げるにはどうすればよいのでしょうか?

 乗車前に窓を開けて換気するのがおすすめです。夏場の車内温度は50〜60度になりますが、これは外気温より15〜20度程度高く、密度が小さい(軽い)ので、窓を開けると熱気が窓から上昇して出ていき自然に換気できます。このときドアも開けると開口面積が増えてより早く換気できますが、むやみにドアを開けたり、バタバタと開閉したりするのは事故にもつながりかねないので、あまりおすすめできません。

 一部車種では、リモコンキーのドアロック解除ボタンを長く押し続けると、自動的に窓が開くものがあります。乗り込む前に窓を全開にしておくと、乗り込んだときの暑さはかなりちがいますよ。

走り出したら「対角線上の窓を開ける」 時間は1分!

――走り出してからも窓を開けるとよいのでしょうか?

はい。対角線上に位置する前席と後席の窓を開けると早く換気できます。つまり前席の右側と後席の左側、あるいは前席の左側と後席の右側です。というのは、車体の周囲には走行風により、たとえばセダン型のクルマでは次のような圧力分布ができるからです。

・フロントピラー:強い負圧
・前席サイドガラス:フロントピラーに近いところはやや負圧〜センターピラーに近いところはやや正圧
・センターピラー:やや正圧
・後席サイドガラス:センターピラーに近いところはやや正圧〜リアピラーに近いところはやや負圧
・リアピラー:強い負圧
※正圧は外気から車体側に働く圧力、負圧はその反対。

 前席サイドガラスと後席サイドガラスは負圧と正圧が入り交じった状態ですが、同じ圧力ではありませんので。前後のガラスのあいだで流れが発生します。対角線上にある窓を開けることで、その流れが車室内中央部を通過するのです。10〜20秒で換気され、空気の流れも気持ちよく快適です。


走行中のセダン車における窓付近の圧力分布イメージ。対角線上に位置する窓を開けると、正圧(緑)から負圧(青)に風が流れる(乗りものニュース編集部作成)。

――エアコンを使う場合は、窓を開けながらのほうが温度を下げやすいでしょうか?

 いえ、窓ガラスを開けて走る場合、換気の効果があるのはせいぜい1分くらいでしょう。その後は窓を閉め、エアコンを内気循環モードで冷房性能を最大にして使うほうが効果的といえます。なぜなら、車室内の温度がなかなか下がらないのは空気の問題だけではないからです。シートやカーペット、ドアや天井のトリム、インパネなどなど、いろいろな部品もしっかり暖まっています。これらの熱容量は車室内の空気の熱量よりも大きいため、換気だけして車内を冷却できるわけではないのです。

 換気のために窓を開け、そのまま走行し続けると、せっかく冷却した車室内の空気を換気して捨てていることになり、エアコン動力が増えて燃費も悪化します。また、空気抵抗の影響もばかになりません。高速道路で窓を全開にして走ると、20%くらい燃費が悪くなるのです。

「窓開け換気→エアコン」の効果、テストでも証明

 JAFでは2016年に、炎天下で駐車し55度になった車内を早く冷やす方法を比較したユーザーテストも行っています。このときは次の5つの方法が比較されました。

・1:助手席の窓を開けて運転席のドアを5回開閉
・2:窓を開けず冷却スプレーをシートに10秒吹きかけ、3分後の温度を測定
・3:窓を開けずエアコンを最低温度・外気導入で作動、10分後の温度を測定
・4:窓を開けずエアコンを最低温度・内気導入で作動、10分後の温度を測定
・5:窓を全開でエアコンを最低温度・外気導入にして走行し、2分後に窓を閉めて内気循環に切り替え、3分後の温度を測定

 このなかで5の方法は、窓を全開にしてエアコンを外気導入で作動していた最初の2分間において20度台まで下がったそうです。また、1のドア開閉も、40秒程度のうちに47.5度まで低下。一方で、窓を開けなかった3の方法では3分間で50度程度までしか下がらず、3と4の方法でも20度台に下がるまでに7分以上を要しています。まず換気して熱気を逃がしてからエアコンを使用するのが効果的であることがわかります。


「MAX A/C」モードのある車種の例(画像:Korn Vitthayanukarun/123RF)。

 ちなみに、カルソニックカンセイによると、一部のクルマには「MAX A/C」と書かれたスイッチなどが付いているとのこと。これを押すと自動で最大風量・最低風温・内気循環になり、エアコンの冷房性能を簡単に最大設定にできるそうです。

【グラフ】55度の車内を最も早く冷やした方法は


JAFが2016年に実施したユーザーテストの結果。5つの方法のうち、窓を全開でエアコンを最低温度・外気導入にして走行し、2分後に窓を閉めて内気循環に切り替え、3分後の温度を測定した「エアコン+走行」が最も効率がよかったとしている(画像:JAF)。