日本代表が、W杯に向けてパラグアイ戦の4ゴール以上に注目すべき変化とは?【写真:Getty Images】

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4-2で勝利したパラグアイ戦のデータを分析

 日本代表は現地時間12日、国際親善試合パラグアイ戦に臨み、4-2で西野ジャパン初勝利を飾った。

 トップ下を務めたMF香川真司が1ゴール2アシスト、好連携を見せたMF乾貴士が西野ジャパン待望の初得点を含む2ゴールを決める活躍で勝利に貢献した。4ゴールを奪う展開に、試合後は攻撃陣の充実ぶりに注目が集まっているが、データから浮かび上がった“勝因”は「守備の組織化」だった。

 8日に行われたスイス戦から継続して4-2-3-1システムを採用した日本だが、パラグアイ戦ではスタメンを10人入れ替えた。1トップにFW岡崎慎司が起用され、トップ下に香川、左サイドハーフに乾、右サイドハーフにFW武藤嘉紀を配置。2ボランチにはMF山口蛍とMF柴崎岳、4バックは左からDF酒井高徳、DF昌子源、DF植田直通、DF遠藤航が並び、GKには東口順昭が入った。

 スイス戦のメンバーは、最終ラインを自陣中央あたりまで押し上げつつ、サイドバックをワイドに展開させ、1トップのFW大迫勇也との距離をコンパクトに保ち、守備ブロック内に入ってくるボールの奪取を狙った。回数は多くないものの、前線からのプレッシングと中盤でのボール奪取から良い形で攻撃も繰り出していた。

 一方、パラグアイ戦のメンバーは最終ラインから最前線と両サイドを一定の陣形に保つブロックを構築し、岡崎や香川、武藤といった前線の選手たちからプレスやチェックを繰り返し、攻守において個々人の役割を明確にするなど、コンパクトな陣形の中で連動していた。

 4得点とこれまでの鬱憤(うっぷん)を晴らす攻撃を見せた日本だが、ここではデータ分析会社「InStat」社が集計したデータを用いて、「守備の組織化」をチェックしていきたい。


コンパクトになった陣形と、役割の明確化

 まずは選手たちの陣形だ。スイス戦での平均プレー位置を見ると(図1参照)、両サイドバックの位置がアンバランスで、ボランチやアタッカーの選手がセンターサークル付近に集結してしまっていた。しかし、パラグアイ戦では、最終ラインから前線まで左右対称に近い形となっており、一定の距離感でブロックを作り上げている(図2参照)。ボール奪取後も前線の選手が下がりすぎていないため、明確な狙いのもとに攻撃を仕掛けることができる状態となっていた。

 相手にプレスをかける際は、最前線に並ぶ岡崎か香川がチェックを行い、2〜3人が連動してプレスをする。1列目で突破されても、次は2列目が対応。奪い切るのではなく、1〜2人で当たりながら相手の攻撃を遅らせ、苦し紛れのパスを出させることで、中盤や最終ラインの選手たちがそのルーズボールを回収するケースが多く見られた。特にこのルーズボールのピックアップ数が、スイス戦の35回から60回と大幅に増えていることからも、パラグアイ戦での守備が機能していたことを物語る。

 同様に、ボールリカバリー数も39回から53回へ増え、逆にボールロスト数は56回から47回に減少させるなど、守備戦術の変化がチームに大きな影響を与えていたことがよく分かる。


攻撃陣のボールロスト数をカバーした組織的な守備陣

 2得点で勝利に貢献した乾は、全選手中最多のドリブル数(7回)を誇ったが、ボールロスト数も全選手最多(9回)であり、「守備におけるチャレンジ」は6戦全敗、タックルも一度も成功しなかった。

 しかし、守備陣が奮闘した。「守備におけるチャレンジ」で見れば、遠藤(100%)、植田(61.5%)、昌子(63.6%)、酒井高(71.4%)とパラグアイ攻撃陣との1対1に勝利するケースが多く、昌子と酒井高はチーム最多のインターセプト数(8回)を計測。植田は空中戦でパラグアイFWサンタンデールとの勝負に12戦で8勝するなど、守備陣が組織的に機能することにより、攻撃陣の強みを活かす結果となった。スイス戦で空中戦で5回以上勝利した選手はおらず、植田の強さや高さは一つのオプションと考えてもいいのかもしれない。

 19日のW杯初戦コロンビア戦のスタメンはいまだベールに包まれているが、パラグアイ戦で見せた組織的な守備網や植田の強さは、本大会でも活かすことができると言えそうだ。

データ提供元:InStat


(Evolving Data labo)