「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「鳴く」の「鳴」。「雷鳴」「鳴動」の「鳴(メイ)」とも読む漢字です。



「鳴」という字は「口」という字の隣に「鳥」と書きます。

ここでの「口」を、鳥の「口」だと見立てる説もありますが、それは「鳥」という文字の中にすでに含まれているはず。

そうした疑問を解決したのが、独自の方法で漢字の成り立ちをひもといた白川静博士です。

彼はこの「口」の形を、神への祈りの文を入れた器だと考えました。

古代文字で描かれた鳥の姿に、天を仰いで鳴く鳳凰を見ます。

そこから「鳴」という漢字は、祈祷に使われる器のそばで、神からの啓示を伝える鳥の様子を描いたものと解釈したのです。

鳥の鳴き声に、神へ届けた祈りや願いに対するこたえが示されている。

いにしえの人は、その神意に耳をそばたて、推し量ろうとしています。

現に、中国古代の殷王朝の甲骨文には、鳥の鳴き声が聞こえてきた日時が記され、吉凶を占っていたことがわかっています。

一方、「花鳥風月」という言葉もあるように、日本人もまた、いにしえの頃から鳥たちへ深い親しみを覚えてきました。

たとえば、夏の訪れを教えてくれるのが時鳥(ほととぎす)。

五月頃南から日本へ渡ってきて、夏の終わりに再び南へと帰ってゆきます。

その様子を見て季節の移り変わりを知ったいにしえの人たちは、「時の鳥」と書いて「時鳥(ほととぎす)」と読ませたのです。

ほととぎすの鳴き声として有名なのは「テッペンカケタカ」。

あるいは、早口言葉としても知られる「東京特許許可局」。

そのほか地方によっては、「一本つけたか」「借金とったか」など。

思わずほととぎすと会話を続けたくなるような「聞きなし」もあるようです。

ではここで、もう一度「鳴」という字を感じてみてください。

晴れた日はもちろん、梅雨や夕立のその合間でも、空を見上げて耳をすませば、鳥たちのさえずりが聞こえてきます。

仲間内のなわばり宣言や、雄から雌への恋のささやき。

そして私たち人間には、神から授かった大切な伝言。

その鳴き声が、あなたに答えを教えてくれるかもしれません。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『読んでわかる俳句 日本の歳時記 夏』(宇多喜代子、西村和子、中原道夫、片山由美子、長谷川櫂/著 小学館)

6月2日(土)の放送では「薬」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/