プロレスラー世界遺産 伝説のチャンピオンから未知なる強豪まで── 「中邑真輔」今や全世界で一番有名な日本人
今年4月8日(現地時間)、アメリカ・ニューオリンズでWWE主催の『レッスルマニア34』が開催される。この世界最大のプロレスイベントにおいて、新日本プロレス出身の中邑真輔がWWE王座に挑戦することになった。
まだ、すべてのカードが決定しておらず、ユニバーサル王者のブロック・レスナーや近々の引退を示唆するジ・アンダーテイカーらの試合が組まれる予定だが、団体トップのタイトルに挑む中邑も、それらと同じく主役級の扱いになることは間違いない。
「世界100カ国以上で放送され、100万件以上のPPV購入が見込まれるこの大会で主役を張るということは、映画のハリウッド大作でメーンキャストに抜擢されるようなもの。そこに日本人の中邑が選ばれたことは、日本のプロレス史に刻まれる快挙と言えるでしょう」(プロレスライター)
2月現在の王者は、新日本にも常連参戦していたAJスタイルズ。3月に行われる大会で王座移動しない限りは、この両者の対戦となる。
「中邑がWWEに入団した当初からこのカードは噂されており、ファンからの期待もあるだけに、恐らくはこのまま実現の運びとなるでしょう」(同)
1月29日(現地時間)、WWEにおける4大PPV大会の一つである『ロイヤルランブル』が開催され、これに優勝したことで中邑の王座挑戦が決まった。
ロイヤルランブルとは、30人の選手が時間差で登場して闘うバトルロイヤル。14番目にリングインした中邑は最後の3人にまで勝ち残り、満場の観客から大声援を受けてジョン・シナ、ロマン・レインズのトップスター2人を立て続けにリング外へ追いやった。
「シナやレインズは普段からファンのブーイングの的にされがちな選手ではありますが、だからといって、それだけで中邑コールは起こらない。もはや完全にWWEファンのハートをつかんでいます」(同)
シンスケ・ナカムラというリングネームや試合スタイルは、基本的に日本仕様のままである(フィニッシュ・ホールドの膝蹴り『ボマイェ』は『キンシャサ・ニー・ストライク』に名称変更されたが、これは商標登録の関係)。
冠されたニックネームも“キング・オブ・ストロングスタイル”で、これはWWEが新日本の中邑をそのまま輸入した格好であり、それが現在進行形でアメリカのファンに受け入れられているのだ。
来る『レッスルマニア34』で予定されるAJとの一戦にしても、2016年の1・4東京ドーム大会『レッスルキングダム10』で行われた同カードの再現を狙ったものと推察される(この時は中邑がボマイェからのフォール勝ち)。
リング外のストーリーラインや選手の戯画的なキャラクターが重視され、それが人気の要因ともされるWWEだが、だからといって試合内容を軽んじているわけではない。
2000年代以降でもクリス・ジェリコ(ライオン・ハート)やクリス・ベノア(ワイルド・ペガサス)、エディ・ゲレロ(2代目ブラック・タイガー)、フィン・ベイラー(プリンス・デヴィット)ら、日本で経験を積んだ選手がトップスターとして活躍している。
中邑もまた、入場場面から試合中にかけてのパフォーマンスが目立つのと同時に、試合内容への評判も高い。
近年はアメリカのファンもネット動画で日本の試合を見ており、その影響もあるだろう。
「例えるならば、K-1に極真空手のフランシスコ・フィリォが登場したときの感覚に似ているのかもしれません。ストロングスタイルを標榜する新日本から、未知の強豪がやってきたことへの期待感が、今の中邑の人気につながっている」(スポーツ紙記者)
一部ファンには、日本人である中邑を強力にプッシュすることへの反感もあるようだが、現状では「レッスルマニアのベストバウトになる」と中邑vsAJへの期待の声がそれを上回っている。
ちなみに、中邑がクネクネと身をよじりながら、「イヤァオ!」と叫ぶ現在のパフォーマンスを始めたのは、新日本時代の'09年に、ヒールターン(悪役への路線変更)をして以降のことだ。
新日本への入団当初から、総合格闘技戦での勝利を託されたり、アントニオ猪木の後継者となるよう期待されたり、背負わされ続けてきた重荷を振り払い、自分なりの表現を突き詰めた結果のことだった。
新日本創成期を知る昭和のファンからすると、クネクネした中邑を見て「どこがストロングスタイルなのか?」と違和感を持つ向きもあるだろう。
しかし、そんな中邑だからこそアメリカで受け入れられたわけで、同じく今のWWEでトップを走る女子のアスカ(日本では華名)ともども、応援していきたいものである。
中邑真輔
1941年1月11日生まれ、カナダ出身。身長186㎝、体重150㎏。得意技/地獄突き、エルボードロップ
文・脇本深八(元スポーツ紙記者)
まだ、すべてのカードが決定しておらず、ユニバーサル王者のブロック・レスナーや近々の引退を示唆するジ・アンダーテイカーらの試合が組まれる予定だが、団体トップのタイトルに挑む中邑も、それらと同じく主役級の扱いになることは間違いない。
「世界100カ国以上で放送され、100万件以上のPPV購入が見込まれるこの大会で主役を張るということは、映画のハリウッド大作でメーンキャストに抜擢されるようなもの。そこに日本人の中邑が選ばれたことは、日本のプロレス史に刻まれる快挙と言えるでしょう」(プロレスライター)
「中邑がWWEに入団した当初からこのカードは噂されており、ファンからの期待もあるだけに、恐らくはこのまま実現の運びとなるでしょう」(同)
1月29日(現地時間)、WWEにおける4大PPV大会の一つである『ロイヤルランブル』が開催され、これに優勝したことで中邑の王座挑戦が決まった。
ロイヤルランブルとは、30人の選手が時間差で登場して闘うバトルロイヤル。14番目にリングインした中邑は最後の3人にまで勝ち残り、満場の観客から大声援を受けてジョン・シナ、ロマン・レインズのトップスター2人を立て続けにリング外へ追いやった。
「シナやレインズは普段からファンのブーイングの的にされがちな選手ではありますが、だからといって、それだけで中邑コールは起こらない。もはや完全にWWEファンのハートをつかんでいます」(同)
シンスケ・ナカムラというリングネームや試合スタイルは、基本的に日本仕様のままである(フィニッシュ・ホールドの膝蹴り『ボマイェ』は『キンシャサ・ニー・ストライク』に名称変更されたが、これは商標登録の関係)。
冠されたニックネームも“キング・オブ・ストロングスタイル”で、これはWWEが新日本の中邑をそのまま輸入した格好であり、それが現在進行形でアメリカのファンに受け入れられているのだ。
来る『レッスルマニア34』で予定されるAJとの一戦にしても、2016年の1・4東京ドーム大会『レッスルキングダム10』で行われた同カードの再現を狙ったものと推察される(この時は中邑がボマイェからのフォール勝ち)。
リング外のストーリーラインや選手の戯画的なキャラクターが重視され、それが人気の要因ともされるWWEだが、だからといって試合内容を軽んじているわけではない。
2000年代以降でもクリス・ジェリコ(ライオン・ハート)やクリス・ベノア(ワイルド・ペガサス)、エディ・ゲレロ(2代目ブラック・タイガー)、フィン・ベイラー(プリンス・デヴィット)ら、日本で経験を積んだ選手がトップスターとして活躍している。
中邑もまた、入場場面から試合中にかけてのパフォーマンスが目立つのと同時に、試合内容への評判も高い。
近年はアメリカのファンもネット動画で日本の試合を見ており、その影響もあるだろう。
「例えるならば、K-1に極真空手のフランシスコ・フィリォが登場したときの感覚に似ているのかもしれません。ストロングスタイルを標榜する新日本から、未知の強豪がやってきたことへの期待感が、今の中邑の人気につながっている」(スポーツ紙記者)
一部ファンには、日本人である中邑を強力にプッシュすることへの反感もあるようだが、現状では「レッスルマニアのベストバウトになる」と中邑vsAJへの期待の声がそれを上回っている。
ちなみに、中邑がクネクネと身をよじりながら、「イヤァオ!」と叫ぶ現在のパフォーマンスを始めたのは、新日本時代の'09年に、ヒールターン(悪役への路線変更)をして以降のことだ。
新日本への入団当初から、総合格闘技戦での勝利を託されたり、アントニオ猪木の後継者となるよう期待されたり、背負わされ続けてきた重荷を振り払い、自分なりの表現を突き詰めた結果のことだった。
新日本創成期を知る昭和のファンからすると、クネクネした中邑を見て「どこがストロングスタイルなのか?」と違和感を持つ向きもあるだろう。
しかし、そんな中邑だからこそアメリカで受け入れられたわけで、同じく今のWWEでトップを走る女子のアスカ(日本では華名)ともども、応援していきたいものである。
中邑真輔
1941年1月11日生まれ、カナダ出身。身長186㎝、体重150㎏。得意技/地獄突き、エルボードロップ
文・脇本深八(元スポーツ紙記者)