同社は自動車部品を加工する専用機が主力製品だ。受注生産で顧客ごとに仕様が異なり部品も特殊。標準部品をまとめて発注する量産系の大手各社に比べて影響が大きい。

 「お客さまに迷惑をかけられない」(西島社長)と、受注を先読みした先行発注で地道に部品を確保し、納期を堅持している。

 工作機械業界は記録的な活況だ。今年の受注額は過去最高がほぼ間違いない。日本工作機械工業会(日工会)がまとめた最新データは1―11月が1兆4796億円。07年の1兆5899億円を超えれば10年ぶり過去最高を塗り替える。初めての1兆6000億円台も見えてきた。

 単月1000億円のラインが好不調の目安とされる中、月平均1345億円の進捗(しんちょく)は異常とも言える高水準だ。11月には外需だけで1000億円を超えた。現在の活況について、「来年、大きく伸びることはなくても、維持はしそう」(三上高弘東芝機械社長)と息の長いものになるとの見方が多い。

 前例のない旺盛な設備需要は要素部品の不足を生んだ。工作機械各社は現状を打開すべく奔走する。ただ、まさにウルトラCはなく、「発注の内示を早め早めにしっかり出す」(安形哲夫ジェイテクト社長)、「リスクを抱えて早く発注する」(三上東芝機械社長)、「先行発注で生産枠を確保する」(DMG森精機)と、早期の発注が基本だ。

 その上で、生産工程を前後させる取り組みも目立つ。オークマは通常、全部品をそろえ組み立てている。これを、そろった部品を使う箇所を先に組み立てるように変えた。さらに東芝機械などで他社製品に置き換える転注の動きもある。

 一方、要素部品以外にも調達に時間を要するものがある。DMG森精機は中小協力会社からの部品の品質と納期を確保するため、加工機の貸し出しに加え、生産技術部・製造部の社員が出向して支援する体制を整えた。さらに18年1月4―5日を働き方改革の一環で休業日とし、生産が滞っている協力会社に「この期間を利用してキャッチアップしてもらう」(DMG森精機)考えだ。

(西沢亮、六笠友和)