各所から評価の高かった久保。さらなる飛躍へ、安間監督は「味方に信頼されるように」と注文を出した。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ33節]広島 2-1 FC東京/11月26日(日)/Eスタ
 
「(久保建英をどうプレーさせたいという意図があったのか?)特にないですよ。自由にやってもらえばいいと思う。ボールを持てば良いプレーをするし、ポジショニングも素晴らしい。別に僕から『何かをしてほしい』ということはない」
 
 チームメイトの郄萩洋次郎の久保評だ。ゲーム開始前から耳目を集めた「久保はどのタイミングでJ1デビューするのか?」という疑問は、67分に結論が出されたわけだが、堂々とした“プロサッカー選手”像を披露した16歳に対して、同じプロサッカー選手からもその評価は高いようだ。
  
 16歳5か月22日でのJ1デビューは歴代3番目の若さ。ちなみに最も若いのは15歳10か月6日の森本貴幸(当時東京V、現川崎)で、次点には宮吉拓実(当時京都、現広島)の16歳1か月14日がランクインする。
 
 輝かしい才能を持つ少年は、「緊張しなかった」と試合後に振り返った。交代は広島に勝ち越しを許した直後、永井謙佑に代えての投入となったが、安間貴義監督は「正直、同点の場面で彼を入れたかった」と本心を打ち明けている。その姿は指揮官の目にどう映ったのだろうか。安間監督の言葉からは、決して「久保J1デビュー」が世間に向けた大々的なパフォーマンスではなかったことが窺える。
 
「中盤でミスが出てなかなかボールが落ち着かなかったので、中盤(での優位性)を取り戻すために彼には『たくさんボールを触ってくれ』と話した。見ての通り、彼のところでボールをしっかりと前に運べ、溜めることもできたので、十分だったかな。
 
 それ以上にドリブルでの仕掛け、周りを上手く活かし、しっかりと状況判断をしながらプラスアルファで要求以上のプレーをしてくれていたと思う。ただし、味方に信頼され、自分のほしいタイミングでボールを預けてもらえるようにもっと意思表示していく必要がある」
 
 押し込まれていた状況で、さらに1点ビハインド。無策に勝利を目指して前掛かりになり過ぎれば選手間が間延びして、さらに広島にボール支配を許す悪循環になりかねない。
 
「中盤を改めて作ったうえで、前線につなげていく」(安間監督)という、解決策としての久保投入。その存在が世間を賑わすためだけの“道化”では決してないことは、ピッチ上でのプレーが雄弁に物語っていた。
 
取材・文●古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)

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