勢力が弱まったハリケーン「ハービー」の残部(左上)と、ハリケーン「イルマ」(右下、2017年9月2日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】米南西部テキサス(Texas)州ヒューストン(Houston)の大半が水に漬かった大型ハリケーン「ハービー(Harvey)」。次いで、大型ハリケーン「イルマ(Irma)」がカリブ海(Caribbean Sea)やフロリダ(Florida)州で猛威をふるった。大西洋では「カティア(Katia)」が、メキシコ湾(Gulf of Mexico)では「ホセ(Jose)」が警戒態勢を引き起こしている。

 注意深い読者なら熱帯暴風雨やそれが発達したハリケーンの頭文字が「H」、「I」、「J」、「K」となっていることに気づくだろう。これらの名称は、米国立ハリケーンセンター(NHC)が毎年あらかじめ用意する21の名前からアルファベット順につけられており、リストは向こう7年分ある。

 ハリケーンの季節が終わらないうちにリストの名が尽きてしまった場合(今のペースでいくと今年はそうなりそうだが)、「アルファ」で始まるギリシャ文字の出番となる。だが、ハリケーンに発達する恐れがある熱帯暴風雨に名前をつけるのは大仕事だ。

 国連(UN)の世界気象機関(WMO)は熱帯暴風雨の命名に対する拒否権を持っている。拒否権が行使されることはめったにないが、2015年4月にはイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」と同じ名称だという理由で、古代エジプトの豊穣(ほうじょう)の神の名「Isis」が、WMO専門委員により2016年の命名リストから削除された。

 WMOのウェブサイトの説明によると、大西洋海盆の熱帯暴風雨に名前をつける習慣が始まったのは1950年代初期。目的は「警報で嵐を素早く識別できるようにするため」で、「名前の方が番号や専門用語よりもはるかに覚えやすい」からだ。それ以前の緯度と経度に基づく識別方法は扱いにくく、また嵐が同じ所に止まっているのはまれなこともあり、間違いを生じやすかった。

 一方、北太平洋西部の熱帯暴風雨とそれが発展した台風の命名はもっと最近のことで、同地域内の14か国からのインプットに基づくため、はるかに複雑となっている。こちらの場合、各国から10の候補名を提出する。動物、植物、占星術のサイン、神話上の人物など何でもよい。それを東京に拠点を置くWMOの台風委員会が審査する。WMOの採択名が決定しても、各国の国内の天気予報では違う呼称を使える。さらに混乱を避けるために念のため、暴風雨には番号も付けられている。

 大西洋では、ハリケーンの待機中の名前は最も危険な地域にある国々の言語を配慮し、英語、スペイン語、フランス語が混在している。また男性名と女性名が交互になっている。だが、ずっとそうだったわけではない。

 第2次世界大戦(World War II)中、米国の軍人たちは妻や恋人の名前を暴風雨につけた。戦後も数十年間にわたり、米政府の気象専門家らは周辺地域の熱帯暴風雨やハリケーンに相変わらず女性名のみをつけていたが、1970年代に入ってこの命名の仕方は性差別的だとあざけりを受け、1979年には覆された。

 だが女性蔑視はなかなか消えない。査読学術誌の米科学アカデミー紀要(PNAS)に2014年に発表されたある論文は、「女性名のハリケーンの方が死者が多い」のは人々が軽視するからだと論じ、物議を醸した。
【翻訳編集】AFPBB News