Wantedly 騒動で話題となったGoogleやTwitterに削除依頼できる「DMCA」って何?

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WantedlyがDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づいた削除申請を行ったとして、頻繁にニュースの見出しに出てきたのが「DMCA」。

そもそもDMCAとは何なのか? 
それが、どうしてGoogleやTwitterと関連して出てくるのだろうか?

◎デジタルミレニアム著作権法とは?
デジタルコンテンツ上の著作権に関する法律として、いわゆるデフォルト的に位置付けられているのがDMCAだ。
デジタルミレニアム著作権法はそもそも米国の法律。米国著作権法などの一部を改正する法律として、1998年10月に成立、2000年10月に施行されたもの。

背景には、当時、普及をはじめたインターネットや情報通信網の上で取り扱う著作物(デジタルコンテンツ)についてその権利をどう規定し、それをどう守るべきか、その基準を世界的に取り決めましょうという動きがあった。

それが「著作権に関する世界知的所有権機関条約」、いわゆるWIPO著作権条約(WCT)と呼ばれる「世界知的所有権機関(WIPO)」が管理する国際的な著作権の保護に関する条約だ。1996年12月に作成され、2002年3月に発行された。

DMCAは、従来の著作権に関する国際法である「ベルヌ条約」などがカバーしきれていなかった、
・著作権物の譲渡・貸与
・インタラクティブ送信
・技術的な保護手段
・著作物の保護情報の未許可での改変の禁止
などについて規定している。

米デジタルミレニアム著作権法は、このWCTに対応した国内法として制定されたもの。
ちなみに、日本では2000年に加入書を寄託、「著作権に関する世界知的所有権期間条約(WIPO著作権条約)」として2002年2月に公布・告示、2002年3月に発行されている。
ヨーロッパ(EU)においても2009年に批准、2010年3月に有効となっている。WIPOのサイトによると、全締約国は95に上る。

世界的な著作権の取り決めのおおもとに「WIPO著作権条約」があり、各国の法律が整備され、その代表格として「米デジタルミレニアム著作権法」があるというわけだ。

◎なぜ、GoogleやTwitterと関係するの?
DMCAは「標準」的な位置付けになっている理由は、ざっくり言ってしまうと、多くのウェブサービスが米国発で、運営元の企業が存在する米国内の法律が適用されるためだ。

どういうことかというと、たとえばGoogleは、
> デジタルミレニアム著作権法(原文はアメリカ合衆国著作権局ウェブサイト http://www.copyright.gov を参照)およびその他の適用される知的財産法に基づく著作権侵害の申し立てに対して、適切な対応をとることをポリシーとしている

として、
「著作権を侵害されたサイト」をGoogleウェブ検索の結果からの削除を申請するページを用意している。

そして、申し立てを受け、権利が侵害されていると特定できた場合は、Googleウェブ検索の検索結果から削除される。

現在のインターネットで、
Googleの検索結果に表示されないということは、ほぼアクセスができなくなると同義だ。
過去には、こうしたGoogleによる検索結果へのある種の検閲行為を称して「グーグル八分」という言葉が使われたこともある。

グーグル八分にはさまざまなパターンがあり、ここでは詳しくは触れないが、DMCAによる削除申請を行う場合は、その行使に妥当性があるか? ということが議論になる。

TwitterもFacebookも、Google検索と同様に、著作権侵害について報告するフォームが用意されている。こちらの場合は、DMCAによる削除申請が妥当であると判断されると、投稿そのものに対する「削除」の行使となる。

もちろんGoogle やTwitter、Facebook以外のサービスであっても、多くの場合、著作権が侵害された場合、削除申請をすることで何らかの対処がされるはずだ。

「パクリ」騒動では、そうした例もよく取り沙汰されてきた。
多くの場合、該当のページ・投稿の書き込み元に削除するよう連絡が来たり、運営元が削除したりするなどの措置がとられている。

サービスの運営元にとって「違法なものを排除する」のは当たり前である。
しかし問題になるのは「それが妥当かどうか」ということだ。

Googleの「著作権侵害による削除」ページには、虚偽の申請に対しペナルティが課せられる場合もある旨が明記されてはいる。

しかし削除申請が、適切なのか? 不適切なのか? 悪用なのか? 妥当なのか?
といった判断は難しいところ。

こうした懸念に対し、悪用や虚偽など不正な削除申請および削除への対策として、自浄的な活動もインターネットには存在している。

DMCAや法的な苦情による削除申請は、
「Lumen」(https://lumendatabase.org/)というサイトで一般に公開されているのだ。
もともとインターネットの有志により収集・分析が始まったものだが、Googleも現在ではDMCA申請による削除の詳細をこのLumenで公開しており、誰でも見ることができる。

Lumenで検索することで、
・誰が削除を申請したか
・削除申請の理由
・対象となるURL
などを知ることができるのだ。

こうしたことが、Webコンテンツの削除申請における不正利用のストッパーになっていくことが望まれる。
もちろん著作権侵害はあってはならないことだ。
しかし、こうした法律やそれに準ずるサービスのポリシーを悪用することも、あってはならないことなのだから。


大内孝子