布川敏和

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 またがっている自転車からロールス・ロイスの後部座席に踏ん反り返る光景が頭を過(よ)ぎるのは、人が夢見る生き物だからだ。しかし、その自転車まで失う可能性に思いが至らないこともままあって、それは人が欲望の飼い主たり得ぬ現実を物語っている。年利700%超を謳うネズミ講陣営は人寄せパンダに有名芸能人を据え、配当にはビットコインを用いるという舞台装置作りに余念がなかった。

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 被害者のひとりによると、

「投資先はブラジル。サッカーの勝敗予想で利益を上げているから絶対に倒産しないと説明されました。そもそも日利2%と超高配当なところ、他人を勧誘すれば、それだけ配当にボーナスがつく。しかも、話題のビットコインを介した取引だという言葉にもつられ、手を出してしまったのです」

布川敏和

 この仮想通貨は乱高下を繰り返しつつも高騰しており、目下1ビットコイン30万円を超え、過去最高を更新中。政府はこの4月から仮想通貨を商品券と同じように代金の支払手段の一つとするなど、日常へ急速に溶け込みつつある。

 そんな折、東京のヒルトン東京お台場でこんなイベントが開かれた。

「お客さんの勧誘に成功した人を表彰する催しで、司会は元シブがき隊のふっくん(布川敏和)。500人程の参加者からは黄色い声援が飛んでいましたね」(同)

 これが4月16日のことだが、数日後、投資会社はシステムトラブル等を理由に一切のカネの引き出しに応じなくなったという。自転車操業でカネをやりくりしていた胴元の自転車が止まったということだろう。

中村雅俊
“アゴアシ枕”台北ツアー

 その後、間髪いれず新たな投資話が走り回るのがネズミ講。別の被害者は、

「世界7都市に支社があるという先物投資会社への投資話。元本100%保証で絶対に儲かると言われて。勧誘するとボーナスがもらえる仕組みで、50万円を突っ込んでしまいました」

 と渋面を作るが、むろんこれにもイベントが用意されており、

「それが6月2日からの “アゴアシ枕つき”台北ツアー。俳優の中村雅俊さんがステージに上がって、気持ち良さそうに持ち歌を披露し、会場は大いに盛り上がっていました」(同)

 そして、この日から程なく、例の如く一切のカネが引き出せなくなるのである。

 ふっくんに聞くと、

「ゲストMCとして出演したのはイベント企画会社を通じてオファーがあったからで、広告契約として出演を行なった事実はない」

 とし、中村はこう答える。

「アメリカの大きな投資・資産運用会社の日本人社員向けパーティーで歌唱するという内容のオファーで、投資詐欺の広告塔となることなどあり得ません」

 被害対策弁護団の荒井哲朗弁護士が見通しを語る。

「超高利の配当からしても詐欺商法であることは明らかで、破綻までの期間が著しく短いことが特徴。刑事告訴も視野に入れて調査を進めていますが、被害が広範囲に亘っているため、被害者の数や、被害総額、首謀者の存在など全容が掴み切れていないのが実情です」

 恰(あたか)も詐欺の博覧会のように、あの手この手の被害の実態が渦巻く気配なのだ。

「週刊新潮」2017年8月3日号 掲載