NBA10大「B級」ニュース@前編

 ゴールデンステート・ウォリアーズの優勝で幕を閉じた2016-2017シーズン。ファイナルを観た多くのファンは、彼らの圧倒的な強さに驚愕したことだろう。ただ、NBAの魅力はプレーだけではない。コート内外で盛り上げてくれた「B級」な話題にもスポットを当ててみよう。


多くのNBAプレーヤーと浮き名を流してきたクロエ・カーダシアン(1)ファイナル史上最高記録を更新。ついに「神様」を抜いた!

 クリーブランド・キャバリアーズを4勝1敗で退け、ウォリアーズが2年ぶり4度目の優勝を飾った今年のNBAファイナル。その熱狂ぶりは、ついにあの「神様」マイケル・ジョーダンも超えた。

 何を超えたかといえば、それはNBAファイナルの視聴率。ジョーダンがシカゴ・ブルズで2度目のスリーピート(3連覇)を達成した1998年を頂点に、近年のファイナルの視聴率は低迷していたが、今季最終戦となった第5戦は平均視聴者数2500万3000人を記録したのである。瞬間最高視聴者数に及んでは、なんと2952万5000人まで到達。さらに視聴率も16.0%をマークし、視聴者数・視聴率ともに1998年のファイナルを上回って過去最高の数字を叩き出した。

 たしかに「ウォリアーズvs.キャブス」という組み合わせは、現在のNBAで考え得る最高のカードだ。今季のジャージーの売上ランキングは、1位がステファン・カリー(ウォリアーズ/PG)、2位がレブロン・ジェームズ(キャブス/SF)、そして3位がケビン・デュラント(ウォリアーズ/SF)。両チーム合わせて7人ものオールスター選手が共演するファイナルだったのだから、ファンの関心が高かったのも当然かもしれない。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 ただ、プレー以外での見どころも多かった。まずは、第4戦を観戦したドウェイン・ウェイド(シカゴ・ブルズ/SG)のファッション。ブルース・リーを彷彿とさせる緑のトラックスーツに巨大なサングラス、そして首もとには金色のネックレス……。個性的すぎる格好がツイッターで波紋を呼んでいた。

 さらに第5戦では、第2クォーター残り3分8秒にトリスタン・トンプソン(キャブス/C)とデイビッド・ウェスト(ウォリアーズ/PF)が乱闘寸前の揉みあいとなり、一触即発のシーンとなった。しかしその瞬間、勢いあまった両者は近づきすぎて、まさにダチョウ倶楽部さながらの公開キス。しかも2度。ネット上では「今のシーンをスローモーションにして『タイタニック』のテーマ曲を流せ!」と大盛り上がりを見せていた。

 こんな珍事も、過去最高の視聴率にわずかながら貢献していると思うのは気のせいだろうか……。

(2)「エース封じ」を託されたパチュリアのプレーは故意か偶然か?

 今年のプレーオフで大きな話題となったひとつが、「ウォリアーズvs.サンアトニオ・スパーズ」のウェスタン・カンファレンス・ファイナル第1戦で起こった、第3クォーターでの接触プレーだ。スパーズのエース、カワイ・レナード(SF)がジャンプショットを放って着地しようとした瞬間、その足がショットを防ごうと間合いを詰めていたザザ・パチュリア(ウォリアーズ/C)の足の上に乗っかる格好に。その結果、レナードは左足首を捻挫して退場する事態となったのである。

 このレナード退場をキッカケにウォリアーズは息を吹き返し、18連続得点を決めて大逆転勝利を収めた。レナードは第2戦以降も出場することができず、スパーズにとっては初戦を失った以上に痛手となったことだろう。

 パチュリア本人は「振り向いたらファウルをコールされた。そのときに初めてレナードが倒れていることに気づいた。何が起きたのかわからなかったんだ」と弁明。故意かどうかは不明なものの、パチュリアはレギュラーシーズン中にもラッセル・ウェストブルック(オクラホマシティ・サンダー/PG)を故障させた前科が……。その疑惑は深まるばかりだった。

 しかも、リーグ屈指のディフェンダーとして過去にスパーズでプレーしたこともあるブルース・ボウエンが「あれは故意に見えるね。明らかに危険なプレーだ」と発言したことが、さらに火に油を注ぐことに。ウォリアーズファンから「現役時代に汚いプレーでビンス・カーター(メンフィス・グリズリーズ/SF)やスティーブ・フランシス(元ヒューストン・ロケッツ/PG・SG)を捻挫させた野郎が何を言ってんだ!」と言い返されていた。

 ただその後、騒動はパチュリアの家族がSNSで脅迫される事態に発展する。妻と3人の子どもに危害が及ぶことを懸念したパチュリアは、子どもの通う学校の入り口に警備員を増強させて、このようにコメントした。

「僕を脅してもいい。だけど、僕の妻を脅したり、子どもたちに何かを言うのはやめてほしい。それは間違っている」

(3)ドラフト2位選手のパパが暴言連発。名選手に「ドーナツでも食ってろ!」

 6月22日(日本時間6月23日)に行なわれた2017年のNBAドラフト。今年3月末にアーリーエントリーをしたUCLA大1年のロンゾ・ボール(PG)は、1巡目・全体2位でロサンゼルス・レイカーズに指名された。ただ、本人以上に注目を集めていたのは、父親のラバー・ボールだ。

 ボール家は長男のロンゾのみならず、次男のリアンジェロ、三男のラメロも将来を有望視されるバスケ一家である。父ラバー自身も、ワシントン州立大時代に平均2.2得点(!)を記録した元プレーヤーだ。

 そんなラバーが、バスケ界の全方位に向けてケンカを売った。

 ラバーは各シューズメーカーにロンゾとのブランド契約を10億ドル(約1110億円)で要求したところ、ナイキ、アディダス、アンダーアーマーに拒否されたという。しかし今年5月、レイカーズがドラフト2位指名権を獲得すると、一転して「ここが商機だ」と判断。各ブランドメーカーに「私と話したいなら30億ドル(約3330億円)を用意しろ!」と超強気な発言を飛ばしたのだ。

 さらにマイケル・ジョーダンに対しては「俺の全盛期なら1on1で葬れる」と挑発し、ステファン・カリーにも「息子は現時点でカリーより上」と言い放つ始末。そして、レブロンの息子に対しても「スーパースターの子どもは親を超えられない」と息巻き、チャールズ・バークレーが目にあまる発言の数々に苦言を呈すと、「デブ! ドーナツでも食ってろ!」とさらなる暴言を吐いたのだった。

 父親のビッグマウスは、新人のロンゾにとってプラスに働くとは思えない……。少なくともラバーは来季、試合会場でバークレーに会ったら、その口は閉じておいたほうが身のためだろう。

(4)レブロンやカリーは露骨に反発。トランプの大統領就任余波

 ラバー・ボールと同じく、コート外から混乱を巻き起こした人物を挙げるなら、今年1月に第45代アメリカ合衆国大統領に就任したドナルド・トランプだろう。

 トランプは就任直後、イスラム圏7ヵ国の入国制限を行なうという大統領令を発令した。ミルウォーキー・バックスのソン・メイカー(PF)は、その対象国である南スーダン出身。発令の時点でカナダに本拠を置くトロント・ラプターズとの試合は残っていなかったが、プレーオフで対戦する可能性もあったため、「そのときの入出国はどうなるのか?」と周囲に不安が広がった。

 そもそも、スポーツ界はヒラリー・クリントンの支持者が多く、レブロン・ジェームズは彼女の応援演説にも駆けつけている。また、レブロンはニューヨークでニックスと対戦する際、チームの宿泊先であるであるドナルド・トランプの名を冠した『Trump SoHo』への宿泊も拒否していた。

 また、アンダーアーマーの幹部がトランプについて「アメリカの『asset(財産)』だ」と語ると、契約選手のステファン・カリーはそれに反発し、「その解釈に同意する。『asset』の『et』がなければ」と発言したという。「et」を抜いた「ass」は、「バカ」などの意味を含むスラングだ。ブランドの看板選手と仲違いするわけにはいかない幹部は、「発言は大統領の社会的な見地ではなく、経済政策について」と語り、カリーの機嫌を損ねないようにすかさずフォローしていた。

 一方でデリック・ローズ(ニューヨーク・ニックス/PG)は、トランプが所有するシカゴのトランプ・インターナショナル・ホテル・アンド・タワーの84階に280万ドル(約3億1000万円)で購入したコンドミニアムを保有している。ローズはトランプ反対派の意見も理解できるとしつつ、「ロケーションが最高で気に入っている。家族のために残しておきたい」と述べ、コンドミニアムの売却予定はないとのこと。

 アメリカでは、年間王者に輝いたプロスポーツチームがホワイトハウスを表敬訪問するのが慣例だ。だが、カリーはファイナル制覇後、ホワイトハウスへの表敬訪問を拒否する趣旨の発言をしている。トランプ騒動は、どうやら今後もしばらく続きそうだ。

(5)キャブスが連覇を逃した原因は「あの悪女」の呪いだった?

 MLBでは「バンビーノの呪い」「ビリー・ゴートの呪い」などの逸話が有名だが、NBAにも新たな呪いが誕生するかもしれない。それは「クロエ・カーダシアンの呪い」である。

「お騒がせセレブ」として名を馳せるクロエは、2009年にラマー・オドム(当時レイカーズ)と交際わずか1ヵ月でスピード結婚したことで、一躍NBAファンにも注目される存在となった。しかし2013年には別居し、2015年に離婚手続きを始めたというニュースが飛び交うと、今度はオドムがラスベガスの売春宿で意識不明の状態で発見され、緊急搬送されるという事態に。クロエ関連のゴシップ記事は連日、全米中のNBAファンを大いに楽しませた。

 さかのぼれば、クロエは2005 年のドラフト1巡目・全体14位でミネソタ・ティンバーウルブズに指名されたラシャード・マキャンツとも交際した過去を持つ。マキャンツはノースカロライナ大時代にNCAAトーナメントを制したエリート選手だった。

 しかし、クロエの開くパーティーに夜な夜な足を運んだ結果、才能を開花させることのないまま、わずか3シーズンでNBAを去っている。そんなマキャンツは最近、「クロエと交際していなければ、俺は6000〜7000万ドル(約66億〜77億円)クラスのプレーヤーになっていた」とこぼしている。

 オドムとの離婚が正式に成立したのは昨年12月だが、その間もクロエは数々の浮き名を流している。そのひとりが、ジェームズ・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ/PG)だ。

 2014年、カンファレンス・ファイナルまで進出したロケッツは、翌年さらなる飛躍が期待されていた。しかし、2015年にハーデンとクロエが交際するとチームは不調に陥り、ギリギリ8位でプレーオフに出場。しかも、1回戦で敗退している。

 そして現在、クロエと交際しているのがキャブスのトリスタン・トンプソン(PF)だ。クロエはトンプソンとの結婚を強く望んでいるようだが、レブロンをはじめ多くのチームメイトが結婚に反対しているという。

 ただ、周囲の反対があればあるほど燃えるのか、クロエはキャブスのファイナル第2戦の勝利を願って、自ら焼いたクッキーをSNSにアップ。その試合、キャブスは132-113で大敗を喫している。さらにクロエはファイナル終了後、トンプソンとふたりでバカンスを楽しんでいる写真もSNSにアップしていた。来季が開幕するころも交際を続けている可能性は大だ。

 今季のファイナルでキャブスが負けたのは、「クロエ・カーダシアンの呪い」なのかもしれない……。

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