【プレー分析|今野泰幸】値千金の同点弾も、攻守に“中途半端”だった理由
[キリンチャレンジカップ] 日本 1-1 シリア/6月7日/東京
怪我明けでコンディションが不安視されていた今野泰幸だったが、大方の予想通り、シリア戦はインサイドハーフで先発を飾った。
ただ、前半は攻守両面で中途半端な印象を受けた。持ち前のアグレッシブさは鳴りを潜めて、今野自身も「相手はフィジカルが強くて、出足もプレッシャーも早く、ちょっと戸惑った」と振り返る。
周囲との連係では、ボールの流れをよく見て、パスコースを作るポジショニングは悪くなかった。そこでパスを受ければ、正確に味方に預けて次のプレーに備える。ミドルゾーンでのつなぎは問題なくこなしてはいたが、「インサイドハーフをやらしてもらっているので、もう少し、攻撃に絡めれば良かった」と語るように、決定機につながるような配給は数える程度だった。
もっとも、そのパフォーマンスは今野の力量だけによるものではなかった。“中途半端”に映ったプレーも、今野なりに試行錯誤した結果とも言える。
チームとして、とりわけ前半はボールを前に運ぶのに苦労していた。その状況をなんとか修正したかった。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督からは、前への推進力を求められている。それは十分に理解しているが、ビルドアップもサポートしたかった。
「なかなかゴール前に運べないから、けっこう下がっちゃって。ボールを受けて、リズムを作ろうとしたけど……」
ゴールに絡む働きを示さなければならない。一方で、中盤の選手として攻守を連動させる必要性も感じていたのだろう。迷いがあったのかもしれない。どこか思い切りの良さを欠いた前半の出来には、こうした背景があったように思う。
香川真司の負傷交代で急きょ、ピッチに立った倉田秋とは「どうやってボールを前に運ぶか」を話し合っていたという。
「秋の特長は分かっているし、流れを変えようとしていたけど」
G大阪のチームメイトとインサイドハーフでコンビを組んだが、相手を揺さぶり、押し込むような息の合ったコンビネーションはあまり見られなかった。
【日本代表1-1シリア代表 PHOTO】香川が負傷交代…先制許すも今野の同点弾でドロー
持ち味のボール奪取が成功したのは2回。しかし、ロストしたのも同じ回数をカウント。シュートはゼロと、本人は納得できない部分が多かった前半かもしれないが、見せ場がなかったわけでもない。
20分、吉田麻也から大迫勇也に縦パスが入ると、相手の最終ラインの背後を突く動きを見せる。飛び出した今野に大迫がワンタッチで流す。惜しくもシュートは打ち切れなかったが、縦への速さを重視するハリルジャパンの攻撃を見事に体現する“3人目の動き”だった。
二次攻撃に備えるため、セカンドボールを拾える位置でスタンバイするだけでなく、CFの大迫がひとつ落ちてきてできたスペースに、顔を出す場面は何度かあった。ゴールチャンスに絡む確率は低かったとはいえ、前への意識は少なからず見せていた。
そのプレーが実ったのが、58分だ。左サイドで原口元気からのショートパスを受けた大迫が、オーバーラップを仕掛ける長友佑都にアウトサイドで流す。長友は相手のチェックをかわしてニアゾーンに侵入し、左足でクロスを供給。そこに走り込んで確実にゴールに流し込んだのが、今野だった。
「走り込んだらフリーだった。あのゴールに関しては、左サイドの崩しが完璧だった」
チームを敗戦から救う同点弾も、今野はチームメイトの奮闘を称えるが、前半から見せていた前への意識を保ち、ここぞという勝負どころを見極めたファインゴールだった。
試合後、指揮官は「今野は(怪我で)2か月プレーをしていなかった。今はコンディションを取り戻しつつある段階。まだトップフォームではない」と今野について言及したが、逆に言えば、万全の状態でないにもかかわらず、決定的な仕事をこなしたのだから、その点は高く評価してもいいはずだ。
シリア戦は63分でお役御免となったが、6日後に控えるイラクとの決戦までに、どこまでトップコンディションを取り戻せるか。
「チームがうまく回るようなプレーをしたい。それが自分の特長でもあると思うので」
味方の良さを引き出すのはもちろん、フィニッシュにも絡む。シリア戦は「そこまで満足のいく試合ではなかった」と話すが、最低限の仕事は果たしたのは間違いなく、イラク戦につながる活躍ぶりだった。
【今野泰幸のプレーデータ】※以下、( )は前半/後半の回数。データは編集部集計。
出場時間:63分(途中交代)
プレー回数:84回(63回/21回)
パス数:38本(28本/10本)
シュート数:1回(0回/1回)
ボール奪取:3回(2回/1回)
ボールロスト:2回(2回/0回)
▼今野がパスを出した回数(選手)ランキング
1位/酒井宏樹/5回(4回/1回)
久保裕也/5回(5回/0回)
倉田 秋/5回(3回/2回)
4位/山口 蛍/4回(4回/0回)
大迫勇也/4回(4回/0回)
昌子 源/4回(3回/1回)
井手口陽介/4回(0回/4回)
8位/吉田麻也/2回(2回/0回)
原口元気/2回(1回/1回)
10位/香川真司/1回(1回/0回)
川島永嗣/1回(1回/0回)
本田圭佑/1回(0回/1回)
▼今野がパスを受けた回数(選手)ランキング
1位/酒井宏樹/7回(7回/0回)
2位/山口 蛍/6回(5回/1回)
3位/久保裕也/5回(5回/0回)
4位/吉田麻也/4回(3回/1回)
井手口陽介/4回(0回/4回)
6位/昌子 源/3回(3回/0回)
長友佑都/3回(2回/1回)
8位/大迫勇也/2回(2回/0回)
倉田 秋/2回(2回/0回)
原口元気/2回(2回/0回)
本田圭佑/2回(0回/2回
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
怪我明けでコンディションが不安視されていた今野泰幸だったが、大方の予想通り、シリア戦はインサイドハーフで先発を飾った。
ただ、前半は攻守両面で中途半端な印象を受けた。持ち前のアグレッシブさは鳴りを潜めて、今野自身も「相手はフィジカルが強くて、出足もプレッシャーも早く、ちょっと戸惑った」と振り返る。
周囲との連係では、ボールの流れをよく見て、パスコースを作るポジショニングは悪くなかった。そこでパスを受ければ、正確に味方に預けて次のプレーに備える。ミドルゾーンでのつなぎは問題なくこなしてはいたが、「インサイドハーフをやらしてもらっているので、もう少し、攻撃に絡めれば良かった」と語るように、決定機につながるような配給は数える程度だった。
もっとも、そのパフォーマンスは今野の力量だけによるものではなかった。“中途半端”に映ったプレーも、今野なりに試行錯誤した結果とも言える。
チームとして、とりわけ前半はボールを前に運ぶのに苦労していた。その状況をなんとか修正したかった。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督からは、前への推進力を求められている。それは十分に理解しているが、ビルドアップもサポートしたかった。
「なかなかゴール前に運べないから、けっこう下がっちゃって。ボールを受けて、リズムを作ろうとしたけど……」
ゴールに絡む働きを示さなければならない。一方で、中盤の選手として攻守を連動させる必要性も感じていたのだろう。迷いがあったのかもしれない。どこか思い切りの良さを欠いた前半の出来には、こうした背景があったように思う。
香川真司の負傷交代で急きょ、ピッチに立った倉田秋とは「どうやってボールを前に運ぶか」を話し合っていたという。
「秋の特長は分かっているし、流れを変えようとしていたけど」
G大阪のチームメイトとインサイドハーフでコンビを組んだが、相手を揺さぶり、押し込むような息の合ったコンビネーションはあまり見られなかった。
持ち味のボール奪取が成功したのは2回。しかし、ロストしたのも同じ回数をカウント。シュートはゼロと、本人は納得できない部分が多かった前半かもしれないが、見せ場がなかったわけでもない。
20分、吉田麻也から大迫勇也に縦パスが入ると、相手の最終ラインの背後を突く動きを見せる。飛び出した今野に大迫がワンタッチで流す。惜しくもシュートは打ち切れなかったが、縦への速さを重視するハリルジャパンの攻撃を見事に体現する“3人目の動き”だった。
二次攻撃に備えるため、セカンドボールを拾える位置でスタンバイするだけでなく、CFの大迫がひとつ落ちてきてできたスペースに、顔を出す場面は何度かあった。ゴールチャンスに絡む確率は低かったとはいえ、前への意識は少なからず見せていた。
そのプレーが実ったのが、58分だ。左サイドで原口元気からのショートパスを受けた大迫が、オーバーラップを仕掛ける長友佑都にアウトサイドで流す。長友は相手のチェックをかわしてニアゾーンに侵入し、左足でクロスを供給。そこに走り込んで確実にゴールに流し込んだのが、今野だった。
「走り込んだらフリーだった。あのゴールに関しては、左サイドの崩しが完璧だった」
チームを敗戦から救う同点弾も、今野はチームメイトの奮闘を称えるが、前半から見せていた前への意識を保ち、ここぞという勝負どころを見極めたファインゴールだった。
試合後、指揮官は「今野は(怪我で)2か月プレーをしていなかった。今はコンディションを取り戻しつつある段階。まだトップフォームではない」と今野について言及したが、逆に言えば、万全の状態でないにもかかわらず、決定的な仕事をこなしたのだから、その点は高く評価してもいいはずだ。
シリア戦は63分でお役御免となったが、6日後に控えるイラクとの決戦までに、どこまでトップコンディションを取り戻せるか。
「チームがうまく回るようなプレーをしたい。それが自分の特長でもあると思うので」
味方の良さを引き出すのはもちろん、フィニッシュにも絡む。シリア戦は「そこまで満足のいく試合ではなかった」と話すが、最低限の仕事は果たしたのは間違いなく、イラク戦につながる活躍ぶりだった。
【今野泰幸のプレーデータ】※以下、( )は前半/後半の回数。データは編集部集計。
出場時間:63分(途中交代)
プレー回数:84回(63回/21回)
パス数:38本(28本/10本)
シュート数:1回(0回/1回)
ボール奪取:3回(2回/1回)
ボールロスト:2回(2回/0回)
▼今野がパスを出した回数(選手)ランキング
1位/酒井宏樹/5回(4回/1回)
久保裕也/5回(5回/0回)
倉田 秋/5回(3回/2回)
4位/山口 蛍/4回(4回/0回)
大迫勇也/4回(4回/0回)
昌子 源/4回(3回/1回)
井手口陽介/4回(0回/4回)
8位/吉田麻也/2回(2回/0回)
原口元気/2回(1回/1回)
10位/香川真司/1回(1回/0回)
川島永嗣/1回(1回/0回)
本田圭佑/1回(0回/1回)
▼今野がパスを受けた回数(選手)ランキング
1位/酒井宏樹/7回(7回/0回)
2位/山口 蛍/6回(5回/1回)
3位/久保裕也/5回(5回/0回)
4位/吉田麻也/4回(3回/1回)
井手口陽介/4回(0回/4回)
6位/昌子 源/3回(3回/0回)
長友佑都/3回(2回/1回)
8位/大迫勇也/2回(2回/0回)
倉田 秋/2回(2回/0回)
原口元気/2回(2回/0回)
本田圭佑/2回(0回/2回
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)