転職理由は「年収アップのため」だけじゃないけれど、今より多少は上げたいのがホンネ。

とはいえ、「自分のスキルや経歴にそこまで自信があるわけじゃないし」「傲慢な人と思われて、印象を悪くしたくないし」と考えて、つい低めに伝えてしまうケースも少なくありません。

自分も納得できて、採用担当者の心象も悪くしない「正しい希望年収の伝えかた」とは?

50万円もソンしていたと後から気づいて

「50万円もソンしていたなんて、あとから気づきました。ほとんど同じタイミングで入社した同僚は、自分より職歴が浅いのに年収は上だったんです」

そう語るのは、都内の通信系企業に勤めるLさん(31歳)。前職の年収が380万円程度だったため、400万円で希望年収を出したところ、実際に同僚の年収が450万円だったことが判明。実際に、同僚より自分の方が仕事はできるし、成績も上。今も歯がゆい思いをしているそう。

Lさんはもともと人前でお金の話をするのが苦手。また控えめな性格なので、面接で「自分はこういうスキルと実績があるので、○○万円の年収を希望します」とアピールすることも考えなかったと言います。

「ホンネでは希望年収はもうちょっと欲しかった。でも、当時の年収よりあんまり上だと理由を聞かれそうで怖かったし、そもそも印象がよくないかな、と思って……。そのせいで不採用になるくらいなら、控えめに書いておこうかな、と考えてしまいました」

Lさんのようにあとから悔しい思いをしないためにはどうすればいいのでしょうか?

絶対にアップを希望ならこう伝える

転職活動では「希望年収」はどのように考えるべき? キャリアコンサルタントと東証1部上場企業の採用担当者に聞きました。

「転職先での年収は現年収が基準になってしまうというのが現実です。面接がうまくいって採用担当者からの評価がかなりいいか、今のスキルや経験をピンポイントで活かせる場合でないと大幅アップは難しいですね(キャリアコンサルタントSさん)」

「やはり面接を通した評価でほとんどは決まりますね。まったく無根拠に年収アップを求められたり、未経験なのに現年収より上げたいと言われると、内心首をかしげちゃいますね(人事担当者Hさん)」

やはり「希望年収」は「現年収」が基準となってしまうようですが、本気で今より年収を上げたければ、転職エージェントを味方につけて戦略を練るという方法もあるようです。

「エージェントと相談しながらどう出るか戦略を練るしかないですね。エージェントには、本当はどこまでアップしたいか本音をぶっちゃけて、志望企業の反応を探ってもらいます。そうすれば、エージェント側は採用担当者に向けて『御社への志望度は高いのですが、他社の評価も高く、年収○○万円くらい出さないと意思決定できないかもしれません』のような伝えかたをしてプレッシャーをかけます(Tさん)」

実際にエージェントを挟んで交渉をしてもらいながら、面接では次のような伝えかたが無難とのこと。

「ちなみに面接における希望年収の無難な伝えかたは、『希望年収は現年収以上ですが、あとは御社のご判断にお任せします』。もし『年収○○万円以上でなければ転職しない』という固い意志があるのなら、あいまいにせずにはっきりと『現年収以上を希望します』と伝えた方がいいですね。そして重要なのは、根拠をちゃんと説明できるか。こういうスキルや経験で貢献できるという点を具体的にアピールしなくてなりません(Tさん)」

「うちの場合は、社内で同じようなスキルセットを持っている人材の年収を参考にすることが多いですね。なので、逆に『私の市場価値はこうです』とアピールされてもイメージしづらくて(人事担当者Hさん)」

年収は確かに譲れない大事なポイントですが、とはいえ、そこにこだわりすぎることで生じる盲点もあるよう。

「ただ、転職において年収だけを重視して転職活動をすると、なかなかうまくいかないものです。年収は大幅アップで“やったー!”と思っていても、入社後に“こんなはずじゃなかった……”とすぐに辞めたくなる人も少なくありません。年収は、案外入社してからの自分のがんばり次第で上げられますが、他の用件はいったん入社してしまうと、自分の力ではどうにもならないですから(Sさん)」

大事なことだけど、なんとなく積極的に持ち出しにくい希望年収の話。でも、年収は新しい職場での仕事のモチベーションにも大きく関わってくるので、後悔しないように伝えたいものですね。今回のアドバイス、ぜひ参考にして納得できる転職活動をしてください。

ウートピ編集部