冷静に専門家の意見や情報を探すことも大切(写真はイメージ)

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近年、インターネット上で発信される医療や健康情報の信頼性が問題になっている。最近もネット上で「ウコンには薬効はない」という記事が掲載され、「ショックだ」と波紋を広げた。

「けっこう飲んでたのに」

きっかけは一部ネットメディアが、米ミネソタ大学の研究チームによる論文の内容を紹介し、「ウコンに薬効はない」と報じたこと。

ネット上には「これはショックでかいなあ」「けっこう飲んでたのに」「思い込みだったということ?」など、動揺を隠せないコメントがいくつも投稿された。

ウコンを使った健康食品は多数あり、人気で身近な存在なだけに、不安に思う人が多かったのだろう。

本当のところはどうなのか、機能性食品研究の専門家でウコンにも詳しい大澤俊彦氏(愛知学院大学 心身科学部 健康栄養学科教授)に話題のもとになった論文を改めて見てもらった。

効果のあり・なしを決めるものではない

「今回の論文は、ウコンに含まれるポリフェノール成分のひとつ『クルクミン』の医薬品として利用できる可能性に対して、これまで発表された数々の研究論文を取り上げ、研究者らが見解を示しているレビューです。
論文の中にはポジティブなデータとネガティブなデータの両方が紹介されています。人での科学的な根拠を示す結果が出ていないと指摘されていますが、これはクルクミン研究におけるひとつの考え方で、効果のあり、なしを決めるものではありません」(大澤氏)

ネット上では、食品のウコンの効果を否定されたと受け止めている人が多かったが、大澤氏は今回の問い合わせに対し、「この論文から、なぜそんな誤解が?」と驚いた様子だった。

「食品と医薬品の研究はそれぞれ評価が違うものです。私は、機能性食品開発の基盤的な研究を行っていますが、クルクミンには皮膚がんや乳がん、腎臓がんなどに予防作用が期待できるというデータもあります。近年では、クルクミンが代謝されてできる『テトラヒドロクルクミン』という成分の抗酸化力も注目されています」(大澤氏)

ネットの健康情報では昨年末、ディー・エヌ・エー(DeNA)が関わる医療情報サイト「ウェルク(WELQ)」で科学的根拠が不明確な記事や無断転用の疑いを指摘され、WELQを含むキュレーションメディア10サイトの停止に追い込まれたばかり。

ネットでは様々な情報があふれている。一つの情報だけを鵜呑みにせず、冷静に専門家の意見や情報を探すことも大切といえそうだ。

参考論文
The Essential Medicinal Chemistry of Curcumin.
DOI: 10.1021/acs.jmedchem.6b00975 PMID: 28074653

医師・専門家が監修「Aging Style」