今日も残業… 夜遅いときの食事はどうすればいい?

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執筆:桜 イクミ(管理栄養士)
医療監修:株式会社とらうべ


残業などで、家に帰ってからの食事時間がどうしても遅くなる方も少なくありません。

「お腹は空いているけれど、太りたくない」そんな方におすすめの食事のコツをお伝えします。

夜遅くの食事はどうしていけないの?

夜遅くに食事をとると、体重の増加につながり肥満のリスクになります。

とくに内臓に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満は、血糖値、中性脂肪やコレステロール値の異常などを引き起こし、生活習慣病のリスクを高めます。夜に脂肪を溜め込みやすい理由の1つに「BMAL1」(ビーマルワン)というたんぱく質が関係しています。

BMAL1は脂肪を溜めこむようにと細胞に指令をだします。

午後2時ころに一番少なく、時間とともに徐々に増加して、午後10時には急激に増えてしまいます。午前2〜4時頃にはさらに増えてピークを迎えます。このため、夜遅い時間に食事をとると身体に脂肪として蓄積しやすくなります。

また、夜は身体を休息させ、疲労の回復やリラックスをさせるよう副交感神経が働きます。副交感神経が働くことで代謝が抑制されます。

そのため、使われなかったエネルギーが身体に脂肪として蓄積されます。

このような身体の仕組みに加えて、夜は寝るだけなので、活発には活動をしておらず、エネルギーをほとんど消費しないということも脂肪の蓄積に影響しているといえるでしょう。

夜遅くなった時の食事の摂り方:そのポイント

残業などで食事がどうしても遅くなる場合、どのような食事を心がければよいのでしょうか。5つのポイントにわけてみていきましょう。


BMAL1の働きからもわかりますが、夜遅くなればなるほど、同じ量(kcal)の食事を摂った場合でも、早い時間よりも遅い時間に摂る方が脂肪は蓄積しやすくなります。

ですから、遅くなる場合は、食事の量のとり過ぎに注意し、ふだんよりも控えめにしましょう。

炭水化物


ごはん、パン、麺類、イモ類など炭水化物の多い食品は、身体のエネルギー源となりますが、余った分は脂肪として蓄えられます。

夜遅い場合は、炭水化物の量を少なめに調節しましょう。おかゆや雑炊などにすると水分が多いため、少量のご飯で満腹感を得られます。

脂質


脂質は胃での滞留時間が他の栄養素よりも長いため、消化に時間がかかります。消化する前に寝てしまうことにもつながり、エネルギーが消費されないため脂肪がつきやすくなります。

夜遅い食事には油の多い揚げ物などの食事は控えましょう。たとえば、肉料理を食べる場合は、赤身やヒレなどの脂の少ない部位を選ぶとよいでしょう。

控える食品

甘いお菓子やスナック菓子、ジュースなどの食品は糖や油をたくさん含み、エネルギー(kcal)も高い食品です。とくに、砂糖は吸収がよく脂肪になりやすいのですし、身体に必要な栄養素も含みません。

ですから、菓子類は夜にはとらないように心がけましょう。

また、果物はビタミン、ミネラル食物繊維が豊富で毎日摂っていただきたい食品ですが、果糖は脂肪になりやすいため、朝や日中の時間に摂るとよいでしょう。

分割法のススメ

仕事や残業で遅くなった場合、食事の「分割法」をおすすめしています。「分割法」とは、夕方早い時間に炭水化物をとっておき、家に帰ってからおかずだけを摂るという方法です。

たとえば、夕方6時頃におにぎりやサンドウィッチなどの炭水化物の多い食品を摂っておきます。帰宅してから野菜料理や肉、魚、卵、大豆製品などメインの料理を摂るようにします。

分割することでBMAL1の多い時間に食事の量を抑えられます。また、空腹時間が長いと身体が飢餓状態になり、次に食べた食事を吸収しやすくなります。分割法をすることで、空腹時間を少なくすることができます。

具体的にどんな食事をとればいいの?

以上に挙げた食事の摂り方のポイントをふまえて、具体的な食事例をご提案します。夜遅くなる場合でも、バランスよくとることをおすすめします。

基本的には、主食、主菜、副菜を揃えた食事を心がけましょう。

主食えはご飯、パン、麺類など炭水化物の多い食品です。主菜はメインの料理で、肉、魚、卵、大豆製品などたんぱく質の多い食品です。副菜は野菜、海藻類、イモ類などを使ったビタミン、ミネラル、食物繊維の多い、サブのおかずです。

主食はエネルギー源になり、主菜は筋肉や身体の材料になるもの、副菜は主食や主菜が効率よく身体で使われるためのサポートをする役割があります。それぞれ役割があるため、少量ずつでも組み合わせることがおすすめです。

分割法のところでもお伝えしたように、主食は早い時間にとっておくとよいです。

おすすめの主食

主食は早い時間に食べておくとよいでしょう。遅くに食べる場合は、チャーハンなど油を使用したものではなく、白ごはんや雑穀ごはんなどにするとよいでしょう。

白ごはんや雑穀ごはんの場合は、お茶碗に軽く半分〜1膳までと少なめに調整しましょう。また、おかゆや雑炊は水分が多いので、ごはんの量は少なくてすみます。

おすすめの主菜

肉、魚、卵、大豆製品は手のひらにのるくらいの量(1皿程度)を目安にします。肉なら薄切り3枚、魚は切り身一切れ、卵は1個分、豆腐は1/3分丁程度が目安となります。

揚げ物や炒め物にするよりも、生のまま、焼く、蒸す、煮るなどの調理方法をおすすめします。


たとえば、しゃぶしゃぶや蒸し鶏、刺身、焼き魚、煮魚、冷ややっこ、納豆などです。肉なら脂の少ない赤身やヒレを選ぶとよいでしょう。魚の場合、青魚はエネルギーが高いので食べ過ぎには注意しましょう。また、白身のものを選ぶとエネルギーを減らせます。

おすすめの副菜

副菜は1〜2皿程度を目安に摂りましょう。炭水化物の多いイモ類のとり過ぎに注意しましょう。ごはんを控えても、ポテトサラダをたくさん食べては、あまり意味がありません。サラダや具たくさんのみそ汁やスープ、和えもの、酢の物、野菜の煮物などがオススメです。

とくにサラダのドレッシングは油の多いものやマヨネーズではなく、油の少ない和風のドレッシングを使用するのもよいでしょう。


夜遅くに食事を摂ると、肥満や生活習慣病のリスクがあがります。炭水化物の多いもの、脂質の多いもの、菓子類などは活動時間に楽しみ、夜の食事内容は摂り方の見直しをしてみてはいかがでしょうか。


<執筆者プロフィール>
桜 イクミ(さくら・いくみ)
管理栄養士・健康運動指導士・フードスペシャリスト
株式会社 とらうべ 社員。病院での栄養管理・栄養指導の経験を経て、現在は企業で働く人の食と健康指導を行っている


<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供