先日、愛知県のホテルで中国人観光客が室内に置いてあった便座を勝手に持ち帰り、その後返却して謝罪するというトラブルがあり、日中両国内で話題となった。中国のネット上では「中国人の面汚し」といった批判意見や、個人のモラル向上を呼び掛ける言論が続々と出現した。(イメージ写真提供:123RF)

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 先日、愛知県のホテルで中国人観光客が室内に置いてあった便座を勝手に持ち帰り、その後返却して謝罪するというトラブルがあり、日中両国内で話題となった。中国のネット上では「中国人の面汚し」といった批判意見や、個人のモラル向上を呼び掛ける言論が続々と出現した。

 もはや見飽きた感のある「中国人の恥」、「マナー向上を」といった言論のなか、中国メディア・今日頭条は23日に「便座お持ち帰りのドタバタ劇、全て日本のホテルのせいだ」という挑発的な見出しを付けた記事を掲載した。タイトルこそ挑発的だが、その中身は日本がいかに高い信用で成り立っている国かということを紹介するものである。

 記事は、今回の「事件」について「中国人の恥」、「寧波出身だ」、「いや台州出身だ」などといった議論が「全く意味を持たない」としたうえで、その原因が日本のホテルにあるという論理を展開。「日本のホテルがチェックアウト時に部屋を点検しないから、この夫婦は窮地に追いやられたのだ」と主張した。

 そのうえで、作者が初めて日本のホテルに宿泊した際、チェックアウト時にルームキーをフロントに渡しただけでスタッフから「OKです」と言われ、退室が完了したことを紹介。「客室スタッフに電話して、部屋を確認させないのか」と疑問に思ったことを明かした。さらに、その後何度か日本のホテルに宿泊するうちに、「ミニバー」の有料飲料などはネットワーク上で記録されていること、さらにリネン類や電気ポットなどの備品については「客の自覚に任せている」ことを理解するようになったとしている。

 そして、日本のホテルがチェックアウト時に部屋を「チェック」しない背景には、「1つに客人へのリスペクト、1つにチェックアウト時の待ち時間短縮」というホテル側の配慮があるとした。一方で、客も自らの行動に責任を持っており、備品を壊した時には自発的に申し出ると説明。仮にグラスなどの小さな部品であればホテルが賠償を請求しないこともあるとし、「互いを尊重する好循環が存在するのだ」と論じた。

 日本のホテルでのチェックアウトは、大概キーを渡して「はい、結構です。ありがとうございました」で終了する。そのあっけなさは、日本人でも「え、それでいいの」と思うほど。記事の指摘どおり、その「あっけなさ」はホテル側と客側の相互リスペクトの上に成り立っている。

 しかし、持ち帰り不可の備品を勝手に拝借するような客が増えれば、この関係が崩れてしまう。そして、中国同様「フロントから宿泊階の客室係に電話をして、部屋の状況を逐一チェックしたうえで『はいOK』」という面倒なチェックアウト体制を取らざるを得なくなるのだ。自分の利益ばかり求めていては、かえって不便なことになるということを、今回便器を拝借してしまった中国人観光客には理解してもらいたい。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)