おもにJRの駅にある売店「KIOSK」。その読み方は「キオスク」と「キヨスク」、どちらなのでしょうか。実は、両方とも“正解”であるようです。

駅の売店「KIOSK」、どう読む?

 JR駅の構内でよく見かける小さな売店「KIOSK」。日本語では一般的に「キヨスク」や「キオスク」と表現されますが、どちらが正しいのでしょうか。

 この「KIOSK」は英単語であるため、日本語としての“正解”はなさそうにも考えられますが、実は日本語としての“正解”があります。しかも、ふたつです。


東京駅の山手線ホームにある売店「KIOSK」(2016年9月、恵 知仁撮影)。

「KIOSK」という英単語はトルコ語の「あずまや」に由来するもので、英語としての意味は「売店」「ニューススタンド」などです。そして読み方は、『プログレッシブ英和中辞典(第4版)』(小学館)の発音記号に従うと、「キオスク」もしくは「キアスク」に近いものになります。

 そう考えると、「キヨスク」という日本語での表現は不適切のように思えますが、実は「キヨスク」は、先述した“正解”のひとつです。

 おもにJR東日本の駅構内で「KIOSK」やコンビニエンスストア「NewDays」などを展開しているJR東日本リテールネットによると、前身の鉄道弘済会が創立40周年を迎えた1973(昭和48)年に、職員や関係者から募集して決まった駅売店の名称が「KIOSK(キヨスク)」とのこと。「清い」「来やすい」「気軽さ」などのイメージで利用してほしいという願いを込め、あえて「キヨスク」と命名したといいます。

 つまり「キヨスク」は国鉄時代だった当時、駅売店の名称として誕生した「固有名詞」なのです。そのため英単語の発音に近くはなくとも、日本語として「キヨスク」は“正解”になります。

しかし、地域によって「キヨスク」は不正解に?

 しかし現在、JR東日本エリアの駅にある「KIOSK」や「NewDays KIOSK」は、「キヨスク」ではなく「キオスク」と読むのが“正解”です。

 JR東日本エリアのそれら店舗を運営するJR東日本リテールネットによると、同社は1987(昭和62)年の国鉄分割民営化で、鉄道弘済会が行っていたキヨスク事業の大部分も6社へ分割された際に「東日本キヨスク株式会社」として誕生。そして創立20周年を迎えた2007(平成19)年、社名を現在の「株式会社JR東日本リテールネット」へ変更したとき、それまでの「キヨスク」という名称を、英単語の発音に近い「キオスク」に改めたそうです。


函館本線滝川駅(北海道滝川市)にある「KIOSK」。読みは「キヨスク」で、運営会社も北海道キヨスク株式会社(2012年10月、恵 知仁撮影)。

 つまり、「キオスク」も駅売店の名称として使われている「固有名詞」であるため、日本語としてそれも“正解”。つまり「キヨスク」と「キオスク」、どちらも“正解”というわけです。

 まとめると、英語の発音では「キオスク」もしくは「キアスク」に近く、店舗の固有名詞として、2007年までは全国的に「キヨスク」、それ以降はJR東日本エリアに限り「キオスク」、ということになります。

 ちなみに鉄道弘済会は、福祉事業などを行う公益財団法人として現在も活動を続けており、1932(昭和7)年に同会が東京駅などで始めた売店が、現在の「キヨスク」「キオスク」の直接的なルーツです。鉄道弘済会は鉄道に従事し、殉職した職員の遺族や、身体に障害を負った職員を救済、援護する目的で設立された団体で、同会によると売店の営業開始も、殉職した鉄道職員の妻に働き口を提供する目的があったそうです。