「平均寿命」と「健康寿命」  その差が大きい日本の課題

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執筆:Mocosuku編集部
監修:坂本 忍(医学博士)


英医学誌「ランセット」によると、米ワシントン大学などの国際チームが、男女ともに日本は「健康寿命」が世界のトップであることを発表しました。

長寿国家として知られる日本ですが、「平均寿命」だけでなく「健康寿命」においても世界のトップとなり、恵まれた環境であることは間違いなさそうです。


とはいえ、課題がないわけではありません。幸福なシニアライフのために何が必要なのかを考えてみたいと思います。

まず「健康寿命」をご存知ですか?


寝たきりなど健康上の問題がなく、日常生活を送れる状態を健康寿命といいます。平均寿命に比べて健康寿命が低いと、介護を必要とする期間が長くなります。

高齢化社会において、人間が自立して人間らしく生活するには、健康寿命を伸ばすことが大切だと考えられています。

「健康寿命」世界のトップ5


国際チームが世界188か国のデータを分析した結果、健康寿命のランキングは次のようになりました。

<男性>

1位 日本

2位 シンガポール

3位 アンドラ

4位 アイスランド

5位 イスラエル

<女性>

1位 日本

2位 アンドラ

3位 シンガポール

4位 フランス

5位 キプロス

このように日本は男女ともに1位となっています。

日本は平均寿命と健康寿命の差が大きい


日本は平均寿命と健康寿命の両方が高い水準にあるものの、じつは平均寿命の伸びに健康寿命の伸びが追いついていない状況です。

とりやべ新聞は2013年における平均寿命と健康寿命の差について各国の比較を行っています。


日本の男性の場合、平均寿命80.2歳に対して健康寿命70.6歳、その差は9.6年です。女性の場合、平均寿命86.6歳に対して健康寿命75.5歳、その差は11.1年です。

なお、アメリカ8.0年、フランス7.7年、イギリス7.6年、ドイツ6.9年、中国7.0年など、多くの国では平均寿命と健康寿命の差は7年程度にとどまっています。

平均寿命と健康寿命の差が大きいということは、それだけ寝たきりになったり、介護を必要としたりと、自立が失われた状態で生活する期間が長くなることを意味します。

「寝たきり」になる原因はなに?


日本における寝たきりの原因を見ると、もっとも多いのが脳血管疾患で37.9%、次いで、高齢による老衰15.2%、転倒・骨折12.4%、認知症10.1%などとなっています(生活習慣病オンライン)。こうした寝たきりの原因を回避することができれば、平均寿命と健康寿命の差を縮めることができるでしょう。

とくに最も多い脳血管疾患は動脈硬化や、糖尿病、高血圧などが原因になります。生活習慣の改善によって発症のリスクを抑えることができます。

健康寿命を伸ばすには


健康寿命を伸ばすには、バランスの良い食事と運動、そして、積極的に外出する習慣が大切です。

食事の理想は、1日の食事中に10品目(肉・魚・卵・乳製品・油・大豆・緑黄色野菜・イモ根菜・海藻・果物)を摂ること。また、意識的に肉や魚を食べることで、丈夫な筋肉や骨の形成へと促すことができます。

運動で足腰を鍛えれば骨折リスクが軽減します。骨折による長期間の入院生活は認知症につながる恐れもあります。また、歩く速度が速い人、歩幅が広い人ほど認知機能の衰えが小さいといいます。ウォーキングなどの運動を取り入れましょう。

外出の頻度が低くなると、認知機能が低下し、認知症リスクが3〜4倍になるといわれています。積極的に外出し、仲間と話したり、笑ったりすることが健康長寿につながります。

私たちは長寿国家に暮らしています。そのこと自体は喜ばしいことですが、寝たきりや、介護を必要とする状態で長期間過ごすことになる可能性があることを知っておきましょう。


運動機能や認知機能は高齢になるほど個人差が顕著に現れるといいます。幸福なシニアライフを送るために、健康を人まかせにせず、自分自身でできることに早めに取り組んでおくのが賢明といえそうです。


<参考>

日本人の「健康寿命」、男女とも世界でトップ(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/20150828-OYT1T50114.html

日本人の健康寿命は70歳台前半!(とりやべ新聞)
http://www.toriyabe-h.co.jp/toriyabe-news/no054/index.html

日本人の寝たきり原因 NO.1(37.9%)は、何の病気?(生活習慣病オンライン)
http://sageru.jp/lsd/statistics_02.html