女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたのに、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、私大の雄と言われる名門大学を卒業した和田祥子さん(仮名・36歳)。彼女は今、オフィス設計会社の契約社員として勤務しており、手取りの給料は20万円。自己破産秒読み状態で、クレジットカードの残債は100万円。消費者金融も含めると、借金の総額は300万円で、自己破産も考えていると言います。しかも、今住んでいる東京都葛飾区亀有の超ボロアパートは、電気もガスも止まっているそう。水道は大家さんがまとめて支払っており、家賃6万円の中に含まれていると言います。この家賃システムでなければ、とっくに水も止まっていたと語ります。

「私の実家が鹿児島県で、母は20年前に交通事故で亡くなっているし、父には後妻がいるし、腹違いの弟はまだ10歳だし……。誰にも頼れないし、不安だし。私の人生、こんなはずじゃなかったんですよね」

祥子さんは、小学生の頃から勉強ができた。言われたことをきちんとコツコツやるタイプで、ガマンをして何かを成し遂げることが大切だと親から教え込まれていたといいます。小学校、中学校とひたすら勉強を続け、県内でも有名な進学校に進みました。

「もちろん高校でも毎日5時間以上勉強していたので、上位の成績をキープ。それゆえに推薦で名門大学に進学できました。亡くなった母は勉強ができる私をとても誇りに思っていてくれたので、きっと喜んでくれたんだろうな、と感じました。母は私が高校生の時に、交通事故で突然亡くなってしまったので、今でも思い出すと涙が止まらないんです。その日のことは今でも覚えていて、朝、学校に行くときに、母がお弁当を作ってくれたのですが、私は購買で友達と買って食べる約束をしていたんです。母は“食べなさいよ”としつこくすすめてきたのですが、私は“お弁当はいらないって言ったよね!”と強い口調で言い返してしまったんですよね。結局それが母との最後の会話になってしまったんです」

交通事故で亡くなった母に対して、抱える後悔

なぜ母が作った弁当を持って行かなかったのか、母が生きていたら何を考えていたのか……そういう思いに囚われながら、祥子さんはこの20年を生きてきたといいます。

「できることなら、あの朝に戻ってすべてをやり直したいし、母にありがとうって言いたいし、もっと肩をもんだりお手伝いをしたり、母の望むことはなんでもしたい。でも死んでしまうと何もできないんですよ。あの朝、弁当を持って行かなかった私にムカついて、母はクルマを飛ばしてしまったかもしれないし。そうすると母の死因は私なんじゃないかと思います。間接的に母を殺してしまったのではないか……いつもそう思って、自殺したくなることさえあります」

“自殺”という単語がスラッと出てくる祥子さんの現在の仕事は、オフィス設計会社の事務職。

「毎日、毎日、雑用の嵐です。今、都心はオフィスのリノベーションラッシュで、どのように机を配置して、配線して……というような設計をしているのですが、限られたスペースの中に多くの人員を入れることに頭を悩ませています。大手の会社はフリーアドレスになっているみたいですが、私が仕事で相手にしているのは中小企業。設計図を見ながら、相手との距離が実際に40cmくらいしかないスペースで、毎日毎日働かされている人を思うと、これじゃ健康も害するよな、と思います」

仕事は朝8時から、夜10時くらいまで、会社に缶詰めになることもあるとか。

「とにかく終わらないんですよ。ずっとエクセルに数字を入れている気がします。たぶん、1人で10人分くらいの仕事をしているのですが、一向に給料は20万円のまま。“正社員”と銘打っている求人に転職活動をしたことがあるのですが、実際に面接に行くと、契約スタートで、正社員になるには年齢制限があります。結局、一度、契約社員や派遣社員になってしまうと、正社員にはなれないんですよね」

電気とガスが止まっていると、会社にいる時間が長くなっても苦にならないとか。(写真はイメージ)

月収20万円のワーキングプア、電気が止まるほどの借金の内容とは……?〜その2〜に続きます