Kindleなどの電子書籍リーダーに採用されている電子ペーパーは、スマートフォンなどの液晶ディスプレイよりも消費電力が圧倒的に少ないため、バッテリー持ちが非常に良いというのが大きな強みになっています。そんな電子ペーパースマートフォン用のケースに取り付けることで、スマートフォンに2つ目のディスプレイや液晶画面以外のコントローラーを追加する、というコンセプトのもとに誕生したのが「FlexCase」です。

FlexCase - Enhancing Mobile Interaction with a Flexible Sensing and Display Cover (CHI 2016) - YouTube

ムービーで映し出されたのは、Windows Phoneが搭載されたスマートフォン電子ペーパーを採用したスマホカバー「FlexCase」は、スマートフォンの左横に付いている左手で触れている部分になります。



このFlexCaseの電子ペーパー部分をタップすると……



スマートフォンの画面に表示されている地図が、タップする前とは異なる地点を示しました。



次は「B」をタップ。



すると、さらに異なる地点が表示されます。どうやら電子ペーパー部分に地図アプリのお気に入りの地点を登録しておける模様。



続いて右手でスマートフォンの画面をスワイプして地図上を散策しながら……



左手でFlexCaseをぐにっと曲げて、地図をズームイン・アウト。このように、FlexCaseは電子ペーパーディスプレイとしてだけでなく、スマートフォンを操作するためのコントローラーとしての役割も果たします。



このFlexCaseがどのように作られているのかというと、圧電型のプリンテッドセンサーを……



4インチの電子ペーパーディスプレイと組み合わせることで、ディスプレイ兼入力装置として機能できるようになっているわけです。



これをスマートフォンのカバー部分に搭載することで、邪魔にならない自然に使える機器に仕上がっています。ムービーに写っている試作機は、カバーから白色の線が伸びていますが、線がなくともしっかり動作するようです。



FlexCaseではスクリーンを拡張する「ブックモード」、ディスプレイをタッチしたりディスプレイを曲げたりする動作をスマートフォンの操作に使用する「ラップトップモード」、デバイスの裏側に配置されたFlexCaseをタッチしたり曲げたりすることでスマートフォンを操作する「バックサイドモード」という3つのモードを想定しています。



FlexCaseの圧電型のセンサーは、縦に5つ、横に3つの合計15個を搭載しています。以下の画面ではセンサーがどのような圧力を感知しているのかをモニターしており、青色の15個のマス目がセンサーの状態、その左にある3DモデルがスマートフォンおよびFlexCaseの状態を示しています。



FlexCaseの上部を曲げると以下の通り、センサーの中央付近が圧力を検知し、モニターのマス目が赤色に変化。



逆向きに曲げるとこう。センサーの反応は同じように見えますが、FlexCaseの3Dモデルを見ると「電子ペーパーディスプレイがどちらの方向に曲げられたのか」まで正確に検知していることがわかります。



さらに、電子ペーパーディスプレイの右上だけを曲げるとこう。センサーの一部のみ反応しており、こういった違いを使ってさまざまな曲げ動作をスマートフォンの操作に応用している模様。



また、電子ペーパーディスプレイは曲げを検知するだけでなく、ディスプレイ上で行われるスワイプ動作もしっかり判別できます。



さらには圧力も検知可能です。



以下の場面では、まず電子ペーパーディスプレイの表面をタップ。すると、モニターに映し出されているグラフが上方向に反応します。



続いて、電子ペーパーディスプレイの裏面をタップ。すると今度はモニターに映し出されているグラフが下方向に動きました。つまり、FlexCaseのディスプレイディスプレイの表面と裏面のどちらをタッチしたのかを判別可能であり、どちらの面をタッチしたかによって異なる動作を割り振ることもできるようになっている、というわけです。



さらに、FlexCaseのディスプレイはマルチタッチにも対応しています。





FlexCaseの優秀なセンサーを用いたデモンストレーションがスタート。



電子ペーパーディスプレイスマートフォンディスプレイを同時にタップ。



すると、電子ペーパーディスプレイのタップした場所に地図画像がストックされました。



次は電子ペーパーディスプレイの異なるマスと、スマートフォン上のテキストを同時にタップ。



すると、テキストも電子ペーパーディスプレイ上にストックされました。



そしてメールを開き……



電子ペーパーディスプレイに保存したテキストと地図画像をタップすると……



以下の通り、テキストと地図を簡単にコピペすることに成功です。



他にも、電子ペーパーディスプレイに電子書籍を表示して……



スマートフォンディスプレイにビジュアル的なコンテンツを表示したり……



FlexCaseを曲げて電子書籍のページ送りをしたりします。



続いてムービーの最初に行われた地図アプリのデモンストレーション。



FlexCaseを閉じると……



マップ上で表示している地点を保存することができます。



さらに、FlexCaseの上部を曲げて、地図のズームイン・アウトを行うことも可能。



角部分を曲げることで……



地図を平面図から鳥瞰図に変更したり……



回転させたりもできます。



他にも、カメラアプリの場合はFlexCase上にスマートフォン操作用のボタンを配置。



さらに、角を曲げてズームイン・アウトを行い……



もう片方の角を曲げて、露出を調整します。





次はスマートフォンでネットショッピングを楽しんでいる場合。



購入画面などでのパスワード入力操作をFlexCaseで行うことができます。



さらにはFlexCaseをスマートフォンの裏面に折りたたんでいても、タップした際の動作を割り振っておけば、スマートフォンディスプレイに触れなくとも本体を操作可能になります。



「FlexCase」を開発しているのはオーストリアにある上オーストリア州応用科学大学の研究室のひとつであるMedia Interaction Labの研究者および、マイクロソフトリサーチJOANNEUM RESEARCHの研究者によるチーム。どこから電源を供給してもらうことになるのかなどまだ謎も多いFlexCaseですが、スマートフォンを手軽に拡張してくれる優れたアイデアに感じます。

なお、過去には電子ペーパーを本体背面に搭載したスマートフォン「YotaPhone 2」がロシアで発売され、バッテリーの悩みを解決できることから大人気を集めたことがあります。

E-ink背面ディスプレイ搭載スマホ「YotaPhone 2」が爆発的人気 - GIGAZINE