2025年の現実を犯罪小説的視点で見ればこういう長編になる。先般、『虚の伽藍』(新潮社)が高校生直木賞に選ばれたばかりの月村了衛が、書き下ろし長篇『普通の底』(講談社)を上梓した。正確に言えば、「小説現代」に一挙掲載されてからの刊行である。版元が期待を寄せていることがよくわかる。先月『おぼろ迷宮』を取り上げたばかりだが、別傾向の作品だし、これを紹介しないわけにはいかない。