1954年に長崎で生まれたカズオ・イシグロは1960年、5歳のときに家族と共に渡英した。1980年に英国フェイバー社のアンソロジーに3作の短篇が採られ、作家としてデビュー、1982年には初の長篇『遠い山なみの光』を上梓した。作家活動の初期から賞には恵まれ、注目されていたイシグロだったが、第3長篇の『日の名残り』(1989年)ではついに英国文壇の最高峰ともいえるブッカー賞を獲得、その名声を不動のものとした。2005年に第6長