坂戸西vs東日本国際大昌平
高い身体能力が魅力の梶君（坂戸西）
埼玉県は、4月の2週目あたりから地区ブロック予選が始まる。福島県は、それよりさらに1週間ほど遅れて春季大会がスタートする。その大会を目指して、今は、冬の間に取り組んできたことを、さまざまな局面に応じて確認し、指揮官としては、こういう場面で誰が何をできるのか、誰がどんな判断能力があるのか、といったことをその場その場に応じて確認していく期間でもある。また、選手たちは、それに対して自分をアピールしていくことが大切になってくるだろう。
今の季節の練習試合は、そんなチームの様子を見ていく楽しみがある。秋季大会の反省やチームとして目指していることに対して、どこまでやれているのか、それをチームとして、個人として、それぞれの立ち位置で確認していく時期でもあるからだ。そして、チームとしては春季大会でもう一度試して、その上で夏の本番へ向けてチームを作っていくという形になる。
坂戸西は、公式戦登板経験がまったくないという梶君が大きく成長している。野中祐之監督は、入学して以来10cm以上も身長が伸びたという身体の成長度合いに合わせて、投手としても成長していくことに大いに期待しているようだ。「体育の教員という目で見ても、楽しみなんです。走り方もいいし、地面をギュッと掴んで蹴っていく走り方をしていて、身体能力は非常に高い子だと思いますよ。中学時代には、チームでは4番手か5番手くらいの存在だったので、ほとんど投手として試合で投げていないんですよ。実質、投手経験は2年くらいですが、それだけに、これからの伸びシロは大きいと思います」
今のところは、ストレートをきちっと投げていくことに精いっぱいだということで、カーブやスライダーはまだマスターしきっていない。ただ、手も大きいということで、変化球はフォークボールと握りをいろいろ工夫したスプリットがメインとなっているが、それが大きくタテに変化していくので、三振が奪える。この日は、5イニング投げたのだが、振り逃げを含めて6三振を奪っている。
会心の2ラン本塁打を放った湯川君（坂土西）
東日本国際大昌平の吉田幸祐監督も、「おそらく、まだまだ伸びていくでしょうね。140キロくらい出せるようになるのではないですか」と、評価していた。梶君の両親はバレーボールの選手で、どちらも身長が高いということも今後、まだまだ身体が大きくなっていきそうなことへの期待が持てる要素だ。しかも父親は、坂戸西時代には春の高校バレーの全国大会にも出場していたというから、運動能力の高いDNAは受け継いでいると言っていいだろう。元々、じっくりと投手を成長させていくことでは定評のある坂戸西である。夏へ向けての、梶君の成長を期待したい。
また、秋季大会では4番を打っていたという湯川君が打順を下げられて発奮。この日は、6番に入っていたが、7回に左中間に会心の2ランを放っている。湯川君は、身体もしっかりとできており、一発の魅力はやはり捨てがたい。その湯川君だけではなく、秋山君、石井君などが振れているという印象で、坂戸西は、ここというチャンスに集中打が出ていた。「今年は、実は例年より打つ時は打てるし、面白いチームになりそうなんですよ」と、野中監督は、3回戦へ進出した秋季大会以上の位置への感触も十分に感じているようだ。
一方、昨秋は福島県大会で準優勝し、東北地区大会に進出して、1回戦で強豪花巻東と延長15回引き分け再試合で敗退した東日本国際大昌平、「花巻東とウチの、層の違いが出てしまいました」と、再戦で敗退した原因を分析していた。その試合では投げていなかったが、準優勝した県大会では軸になって投げていたという大宮君が一試合目に先発。
大宮君は、決して身体は大きくないが、丁寧にコースをついていきながら、かわしていくタイプ。ただし、少し甘いとつかまってしまう。このあたりの微妙な制球が今後の調整目標であろう。
チームを引っ張るリーダーシップの高い小田君（東日本国際大昌平）
東日本国際大昌平のチームの特徴は、思い切りのいいスイングだ。三振を恐れず、振り切ってくる打線は、守る側としては、やはり恐怖を感じるであろう。とくに、芯でとらえた打球は、打球も速く伸びもいい。そんな中でも、7番に入っていた菅澤君のスイングの思いきりの良さは特筆ものだった。
3回の第1打席では結果的に降り逃げとなったが、梶君の球の落ち具合も大きかったが、思い切りのスイングに捕手の赤池君も思わず驚いたというところもあったようだ。そして、5回は無死一三塁で中堅へライナーを放ちこれが犠飛となった。この打球は少しでも右か左へそれていけば間違いなく長打になったであろう。
そして、3打席目の6回は、二番手の滝澤君が少し入り方でもたついていたということもあったのだが四死球で走者をためていた。そこを突いて若林君、後藤君の連打で反撃が始まり、2点返してなおも二死一塁という場面で、フルスイングの打球は左中間へ2ランとなった。
菅澤君は、次の打席でも中前へいい打球を放っていた。2試合目も代打で途中出場したが、遊直と中飛に倒れたが、凡退しても振り切っているので迫力はあった。
2試合目では、昌平はDHとして入っていた小田君が3回に2ランを放っているが、小田君は一塁手として出ていた第1試合では常に守りで声を掛けて、守る位置の指示も含めてリーダーシップを発揮していた。本来は外野手だったというが、「守りということを考えると、どうしても（マウンドの）近くに置いておきたい選手なんですよね」と、吉田監督からの信頼も高い。
聖光学院の壁が厚い福島県だが、東日本国際大昌平も、何とかその壁を突き破って甲子園出場の悲願を実現したいという思いは強い。
(文=手束 仁)
