健大高崎vs日本文理
【攻守で引っ張る柘植世那（健大高崎）】
健大高崎は機動力を使った攻撃が注目されることが多いが、この試合は日本文理を相手に2年生バッテリーの活躍で勝利をモノにした。健大高崎の先発は川井 智也（2年）。この秋からエースとしてチームを関東大会に導いた好投手である。
左オーバーハンドから常時130キロ前半の速球で勝負する投手で、曲がりの大きいカーブ、キレのあるスライダーを武器に、まとまった投球が期待できる。複数の投手陣で勝負する健大高崎だが、この試合、川井が「一人で投げ切るつもりでした」と気合十分だった。
だが気合だけでは抑えられるものではない。強打を誇る日本文理打線に対して、どう抑えるか。川井は「ストレートと変化球の緩急とコントロールを意識して、配球については柘植に任せました」とコメント。
首脳陣からの評価は非常に高く、新チームでは主将を任されている捕手の柘植 世那（2年）は「打者一巡するまではコーナーで散らしながら、またその後は相手打者の裏をかくようなリードを心掛けました」
健大高崎バッテリーは、低めに変化球を集め、そしてキレのあるストレートでどんどん攻め、日本文理打線を抑えこんでいく。130キロ前半だが、健大高崎の投手陣の中では最も勢いがあった。
打線は、1回裏、一死一、三塁のチャンスを作り、4番長島 僚平（3年）の適時打で先制をすると、さらに柘植の適時打で2点目。さらに6番山上 貴之（3年）の右横線を破る二塁打で長島が生還し、3点を先行する。
2点目の適時打を放った柘植はスローイング能力、リードセンス、打撃の勝負強さと攻守のスキルが高い。柘植目当てにスカウトが視察している情報があったが、捕手は頭脳的な素質が非常に重要だ。リードを見ると、考えたリードが出来ており、この夏、上位進出の立役者といっても過言ではない。スカウトが注目するのも頷ける。
【新チームではエースを任される川井が完投勝利を収める】
試合は4回表、日本文理に一死一、二塁から5番川口 達朗（3年）の適時二塁打で2点を返され3対2と1点差に詰め寄られる。しかし5回裏、一死から3番脇本 直人（3年）が死球で出塁。さらに盗塁を決めると、送球ミスの間に一気に三塁へ。長島の二塁内野安打（敵失も絡み、長島は二塁へ）で1点を追加し4対2に。5番柘植の右飛で長島は三塁へ進塁すると、6番山上の遊撃内野安打で、さらに1点を追加。山上は盗塁を決め、二死二塁として、横溝 拓斗（3年）の適時打で、6対2と再び点差を大きく広げる。
川井は7回表に川口に本塁打を打たれるが、要所を締める投球。健大高崎は8回裏に一死一、三塁のチャンスを作り、8番横溝のスクイズで1点を追加。川井は強力打線・日本文理を凌ぎ、3失点完投勝利。初の決勝進出を決めた。
今回、初の国体出場で、初の決勝進出を果たした健大高崎。青柳監督は、「日本一を目指してきて1年間取り組んできましたが、夏の甲子園ではベスト8に終わり、国体はこのチームで日本一を目指せる最後のチャンス。掴んでいきたい」と、この国体に対する胸中を明かしてくれた。3年生たちはほぼ1、2年生と同じメニューをこなし、調整をしてきた。
その思いに応えようと力投を見せた川井。川井はこの秋、エースとしてマウンドを任される立場。関東大会前に全国レベルの相手を前に投球が出来ることを心待ちにしていた。「強豪相手に勝てたことは僕にとって大きな自信になりましたし、関東大会でも自信を持って投げることが出来るのではないかと思います。前チームでは継投で投げることが多かったですが、今年は自分1人で投げ切りたいと思います」エースとしての自覚をみせた川井。
日本一に挑戦する権利を手に入れた健大高崎。決勝戦は明徳義塾と対戦する。ここまで投打に渡る活躍を見せている岸 潤一郎擁する明徳義塾か、それとも2試合で11盗塁を記録し、機動力で日本一を狙う健大高崎か。試合巧者同士との決戦となった。
（文＝河嶋 宗一）
