『スウィートホーム』裏側について語った黒沢清監督

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 20日、現在開催中の映画祭「第36回ぴあフィルムフェスティバル」内のプログラム「素晴らしき特撮の世界〜第2部〜」に、矢口史靖監督、映画監督の黒沢清、樋口真嗣、さらに映画監督の犬童一心らが出席。諸般の事情により、いまだDVD化がされていない『スウィートホーム』(1989年)の裏側について語り合った。

 昨年、好評を博した「素晴らしき特撮の世界」第2弾として行われた本イベントでは、今年の7月30日に逝去したメイクアップ界の巨匠ディック・スミスさんを追悼。彼がSFX指揮で参加した日本映画『スウィートホーム』のメガホンをとった黒沢をゲストに迎えた。この日のナビゲーターを務めた犬童も「今日、映画は上映できないですが、フィルムの代わりに本人に登場していただいた」と笑顔で付け加えた。

 公開当時、『エクソシスト』などで知られる巨匠、スミスさんの参加が話題となった本作。「母親の特殊メークが売りの作品なので『もし誰でもいいと言われたら、誰がいい?』と聞かれたので、『それはディック・スミスでしょう』と即答だった」と切り出した黒沢は、スミスさんとのやりとりについて「『四谷怪談』のお岩さんがやりたかったので、彼に中川信夫監督の『東海道四谷怪談』のビデオを送った記憶があります。ものすごく怖かったという返事が来て、とてもうれしかった記憶がありますね」と振り返った。

 また、本作のプロデューサーである伊丹十三がガソリンスタンドの主人役で登場しているが、それについて「当初、プロデューサーの伊丹さんと誰をキャスティングしようかと相談していたんですが、なんとなくもじもじしていて。僕が特殊メークをして出るのはどうかしらと。自分の顔が自分と思えないくらいふけるという役をやりたいと言ってきたんです」と明かした黒沢。

 また、舞台となった屋敷について「僕のイメージとしては『ヘルハウス』の家だと。ああいう家は日本全国どこを探してもない。だからこれはミニチュアで作るしかないだろう」と切り出した黒沢は、「できれば本物がいいと言いつつ、すばらしいにせものがあるなら、本物と間違える人がいるかもしれない。ある意味、映画にした途端に本物になることがゾクゾクする映画作りの快楽につながる気がします」と笑顔を見せた。(取材・文:壬生智裕)

「第36回ぴあフィルムフェスティバル」は9月25日まで東京国立近代美術館フィルムセンターにて開催中