Airbnbの「マネジメントしない」マネジメント方法とは:後編
画像:Airbnbサイト内のツールを開発しているビュー・ハウとアルビン・スン
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事業を行う上でのもてなしの心
Airbnbは、同社のプロダクトと企業環境の両方で「もてなしの心」を体現しようとしている。これには、従業員同士が互いに相手をどう処遇するかということも含まれる。
「ホストになるということは、相手の気持ちを思いやるということです」とカーティスは言う。「同僚をあなたのゲストだと思ってみてください。我々は、他人のタスクを優先的に手伝うということを非常に重要視しています」。
カーティスは、「自身で成果を出す」ことと「他人を優先的に手伝う」ことの間に明らかな矛盾が存在することは認めている。「誰かを手伝おうと思ったら当然、自分自身が抱えているタスクは手が止まることになりますからね」。
この問題に対するAirbnbの解決方法は、同僚に手を貸すことの長期的な意義を明確化することだった。
「誰かを困らせている問題を解決できる機会に遭遇したら、それを逃してはいけません。その人を教育する絶好のチャンスだからです」とカーティスは述べている。
プロセスの標準化
Airbnbの技術者は14のチームに分かれて作業している。チームはソフトウェア・エンジニア、プロダクト・マネージャー、デザイナー、データ・サイエンティスト等で構成されており、一つのチームに所属する人数は大抵10人未満だ。個々の従業員と同様、これらのチームもほぼ独立して仕事を進めている。
(Airbnbのエンジニアリングチームの規模が現在どれくらいなのか、正確な数字は分からない。しかしLinkedInの検索から推測できる限りでは100人を超えると思われる。カーティスが入社時に引き継いだチームの規模からすると倍以上になっているようだ)
「我が社では個人単位でも自主性が尊重されますし、チーム単位でも自治が保たれています」とカーティスは言う。
Airbnbではプロセス周りの標準化が行われている。基本的にボトムアップで作成され、管理部門によって軽い調整が行われる。カーティスやマネージャーたちがミーティングで成功事例について語り、それが各チームへと広められていくのだという。
カーティスがAirbnbに着任した当初、個々のエンジニアたちはしばしば他者のレビューを介していないコードを製品にそのまま追加していた。その結果、もし第三者の目を通していたら避けられたであろうバグを引き起こし、修正に時間を取られていたのだ。カーティスは彼らに対し、「プルリクエスト(pull requests)」と呼ばれるプロセスの検討を要請した。これは、ソフトウェアが製品化される前に他者のレビューを入れるための手軽な手法である。Airbnbのエンジニアはこの新しいコーディング手法を採用しやすくするため、プルリクエストのスピードアップを行うツールを開発したそうだ。
他にもこんな例がある。あるときエンジニアの一人が、ドキュメントの共同編集ツールとしてGitHubの既存ツールよりもHackpadのほうが優れていると気付いた。すると他のチームも彼に続き、速やかにHackpadに切り替えたという。彼らはトップダウンの命令に従うのではなく、互いの仕事ぶりを参考にし合うのである。
「あなたが提唱した何らかのアイデアにメリットがあると証明できた場合には、そのアイテアはチームによって組織的に採用されるでしょう。それがチームの意思決定なのです」とカーティスは述べている。
カーティスはこうしたプロセス採用の仕組みがAirbnbの生産性を抜本的に改善すると考えており、数学用語にちなんで「階段関数」と呼んでいる。
「標準化をやりすぎてしまうと、身動きがとれなくなってしまいます。混沌とした部分も少し残しておくことで、こうし階段関数による改善につながるのです」。
Airbnbがこうした大きな前進を必要としているのは、急激に成長している自社の市場に追いつくためだ。現在のシステムでいつまでも対応を続けられる保証はない。何もカーティスの独りよがりでこのやり方を取り入れているわけではない。変わり続ける状況を現実的に捉えた結果なのである。
私はカーティスに、Airbnbが採用している均等と混沌の中間、つまりトップダウン型マネジメントとホラクラシーの中間的なやり方は意図的なものかどうか聞いてみた。
彼は、「これまで、そうした哲学的な疑問を自分たちに問いかけたことはなかったように思います」と答えた。「私たちが目指しているのは、自分たちの成長段階に一番相応しい働き方をすることです。私たちは、エンジニアが自分の仕事をもっと自由にコントロールすることで、モチベーションが上がって結果的に仕事の質も向上すると考えているのです」。
大規模なホテルチェーンなどとは違い、Airbnbの場合はホスト側にベッドルームの整え方やゲストのもてなし方を指示することはできない。その予測不可能な個性こそが、Airbnbを利用した旅の魅力でもあるのだ。そしてその個性は、Airbnbというビジネス自体の魅了にもなりつつある。
画像提供:Stephanie Chan
Owen Thomas
[原文]