カメラやリンゴの陶芸作品を作るとどうなる!?
焼き物でできたカメラ、焼き物でできたやかん、焼き物でできたアイロン、焼き物でできたリンゴ……。すべて作ったのは多摩美術大学工芸科2年の高田成美さん。表面は非常に繊細な凸凹となっており、どこか不思議な雰囲気が漂っている。先日展示された作品には多くの人々の感心を集めていた。一体、どのようにして作ったのか、高田さんにお話を伺った。
――なんとも見ごたえのある作品ですが、なぜ作ろうと思われたんですか??
高田さん: 日常品を、全て同じ質感にすると違和感を覚えて面白くなるのでは?と考えた挙句、凸凹をつけたいと思ったんです。
とはいえ、一言で「凸凹をつける」といってもこれが大変だったようで……。何か良い方法はないかと思い、大学内の売店で使えそうなモノはないかと探していたそう。
高田さん: 最初は表面をひたすら削ってたんですけど、これがとてつもなく大変で……。その時、売店でピンセットが目に飛び込んできたんです。これは良いんじゃないかって。
例えば、リンゴ(作品)の場合、まずは粘土でりんごの形を作ってから、ピンセットでつまんでいって、凸凹を作るそうだ。高田さんが作ったのは11作品。文章で書くとほんの1〜2行だが、これでも想像以上に大変そうである。
ここで、素人丸出しで素朴な疑問を聞いてみました。
――粘土だったら、形を整えている間に、すぐに硬くなるんじゃないですか?
高田さん: 保湿して、濡れたタオルでくるんでおけば大丈夫ですよ。ラップをしておけば、一週間は持ちますし。
なるほど。これなら、焦らなくてもすみそう。
――陶芸のイメージというと、自分の思うような作品ができないと、その場で割ってしまうイメージなんですけど、失敗すると割ってしまうんですか?
高田さん: それはないです(笑)。でも、ろくろを回して形を整えていくうちに、その形が良いのかどうか分からなくなってくることがあるんで、その場合は友達に意見を聞いたりして、形を変えたりはしますね。たまに、全然うまくできなくて、ぶっ壊したいと思うこともありますが(笑)。
爆発する恐怖!
――形を作っていく上で、気を付けないといけないことはありますか?
高田さん: 爆発を防ぐことです。1250℃の高熱で焼いた時に、空気が膨張して爆発することがあるんです。密閉になるような形の作品は、どこかに空気穴を開けます。
確かに、高田さんの作品をよく見ると、アイロンなどに穴が開けてある。
高田さん:あと、厚さにも要注意です。厚さが指2本分以上あると、爆発する可能性があるんです。かといって、薄すぎると変形することがあるんで、難しいところです。
ちなみに、バイオリンの形の作品を作ろうとしたものの、厚くなってしまって、うまくいかなったそう。
高田さん: 作ろうと思ったまではよかったけど、そもそもバイオリンをやらないから、バイオリンの厚さとか、わかってなくて(笑)。
――発表した作品の中で、とりわけ難しかった作品はどれですか?
高田さん: やかんは苦戦しました。粘土は焼くと縮むし、乾燥しても縮むし、だから、どのくらいの大きさで作ったらいいのか分からなかったんです。あと、一眼レフカメラは、カメラの形をまじまじと見たことがなかったので、友達に借りて形を整えました。意外に複雑な形だったので、凸凹を綺麗に形付けるのが大変でしたね。
爆発する恐怖・再び
いよいよ焼く段階に入るのだが、今度は“怒られポイント”があるそう。
高田さん: 窯がスカスカのまま焼こうとすると、「電気代がもったいない!!」って焚かせてもらえないんです(笑)。だから、なるべく詰めて焼きます。
――どのくらいの間、焼くんですか?
高田さん: ほぼ1日です。温度を徐々に上げていくと爆発する危険性は低くなります」
それでも作品が爆発する可能性は、ゼロではない。
高田さん: 焼いている間は、他の作品を焼いている人と交代で見張り番をするんですが、万が一、窯の中で作品が爆発したらすぐに止めます。
――ひょっとして、誰かの作品が爆発したら、他の作品もとばっちりを受けてしまうんですか……。
高田さん: 釉薬(ゆうやく)がついた破片がついてしまうと、その部分が溶けちゃうことがあります。
――なんと!! その場合はどうするんですか?
高田さん: ひたすら謝るしかないです(苦笑)。リコーダーの形の作品を焼いていた時に、先端が『ふにゃっ』と曲がってしまって、隣に置いてあった人の作品に釉薬がついてしまったことがあって、ひたすら謝りました。
陶芸家のように、「マイ窯」があるのが羨ましくてしょうがないそう。
片道2時間!? 長い通学時間
高田さんは墨田区出身。東京スカイツリーを見上げるようなところで育ったという。今も墨田区の自宅から多摩美術大学まで通っているとのこと。
――結構、時間がかかりませんか?
高田さん: 片道2時間はかかります。朝1限の授業がある時は、6時半には家を出ます。
――工芸科を選んだ理由は何ですか?
高田さん: 最初はデザイン系の学科を志望していましたが、オープンキャンパスに行ったら工芸科に魅力を感じて、次の日から通っていた美術の予備校の科を変えたほどです(笑)」
高田さんは次世代工芸展で入選経験がある。将来は作家として活動するのが夢で、頑張って江東区の東京都現代美術館で展示させてもらえるような作家になりたいという。
高田さん: 自転車でも行ける距離なので(笑)
さすが墨田っ子。いつか高田さんがマイ窯を買って、爆発を気にせずに作品が焼ける日がきますように…。
(エキサイトニュース コネタ編集部)
【高田成美さんからのお知らせ】
「交差展 vol.7」
会期:2014年1月26日(日)〜2月2日(日)
場所:横浜元町商店街の有志店舗
「Re:animal 多摩美術大学工芸学科二年制作展」
会期:2014年2月24日(月)〜3月2日(日)
場所:SUBWAY GALLERY M
交差展のほうはPatternシリーズのカメラと靴を、
Re:animalでは学年で廃材を使って動物を作るという課題で作った作品を展示する予定です。
――なんとも見ごたえのある作品ですが、なぜ作ろうと思われたんですか??
高田さん: 日常品を、全て同じ質感にすると違和感を覚えて面白くなるのでは?と考えた挙句、凸凹をつけたいと思ったんです。
高田さん: 最初は表面をひたすら削ってたんですけど、これがとてつもなく大変で……。その時、売店でピンセットが目に飛び込んできたんです。これは良いんじゃないかって。
例えば、リンゴ(作品)の場合、まずは粘土でりんごの形を作ってから、ピンセットでつまんでいって、凸凹を作るそうだ。高田さんが作ったのは11作品。文章で書くとほんの1〜2行だが、これでも想像以上に大変そうである。
ここで、素人丸出しで素朴な疑問を聞いてみました。
――粘土だったら、形を整えている間に、すぐに硬くなるんじゃないですか?
高田さん: 保湿して、濡れたタオルでくるんでおけば大丈夫ですよ。ラップをしておけば、一週間は持ちますし。
なるほど。これなら、焦らなくてもすみそう。
――陶芸のイメージというと、自分の思うような作品ができないと、その場で割ってしまうイメージなんですけど、失敗すると割ってしまうんですか?
高田さん: それはないです(笑)。でも、ろくろを回して形を整えていくうちに、その形が良いのかどうか分からなくなってくることがあるんで、その場合は友達に意見を聞いたりして、形を変えたりはしますね。たまに、全然うまくできなくて、ぶっ壊したいと思うこともありますが(笑)。
爆発する恐怖!
――形を作っていく上で、気を付けないといけないことはありますか?
高田さん: 爆発を防ぐことです。1250℃の高熱で焼いた時に、空気が膨張して爆発することがあるんです。密閉になるような形の作品は、どこかに空気穴を開けます。
確かに、高田さんの作品をよく見ると、アイロンなどに穴が開けてある。
高田さん:あと、厚さにも要注意です。厚さが指2本分以上あると、爆発する可能性があるんです。かといって、薄すぎると変形することがあるんで、難しいところです。
ちなみに、バイオリンの形の作品を作ろうとしたものの、厚くなってしまって、うまくいかなったそう。
高田さん: 作ろうと思ったまではよかったけど、そもそもバイオリンをやらないから、バイオリンの厚さとか、わかってなくて(笑)。
――発表した作品の中で、とりわけ難しかった作品はどれですか?
高田さん: やかんは苦戦しました。粘土は焼くと縮むし、乾燥しても縮むし、だから、どのくらいの大きさで作ったらいいのか分からなかったんです。あと、一眼レフカメラは、カメラの形をまじまじと見たことがなかったので、友達に借りて形を整えました。意外に複雑な形だったので、凸凹を綺麗に形付けるのが大変でしたね。
爆発する恐怖・再び
いよいよ焼く段階に入るのだが、今度は“怒られポイント”があるそう。
高田さん: 窯がスカスカのまま焼こうとすると、「電気代がもったいない!!」って焚かせてもらえないんです(笑)。だから、なるべく詰めて焼きます。
――どのくらいの間、焼くんですか?
高田さん: ほぼ1日です。温度を徐々に上げていくと爆発する危険性は低くなります」
それでも作品が爆発する可能性は、ゼロではない。
高田さん: 焼いている間は、他の作品を焼いている人と交代で見張り番をするんですが、万が一、窯の中で作品が爆発したらすぐに止めます。
――ひょっとして、誰かの作品が爆発したら、他の作品もとばっちりを受けてしまうんですか……。
高田さん: 釉薬(ゆうやく)がついた破片がついてしまうと、その部分が溶けちゃうことがあります。
――なんと!! その場合はどうするんですか?
高田さん: ひたすら謝るしかないです(苦笑)。リコーダーの形の作品を焼いていた時に、先端が『ふにゃっ』と曲がってしまって、隣に置いてあった人の作品に釉薬がついてしまったことがあって、ひたすら謝りました。
陶芸家のように、「マイ窯」があるのが羨ましくてしょうがないそう。
片道2時間!? 長い通学時間
高田さんは墨田区出身。東京スカイツリーを見上げるようなところで育ったという。今も墨田区の自宅から多摩美術大学まで通っているとのこと。
――結構、時間がかかりませんか?
高田さん: 片道2時間はかかります。朝1限の授業がある時は、6時半には家を出ます。
――工芸科を選んだ理由は何ですか?
高田さん: 最初はデザイン系の学科を志望していましたが、オープンキャンパスに行ったら工芸科に魅力を感じて、次の日から通っていた美術の予備校の科を変えたほどです(笑)」
高田さんは次世代工芸展で入選経験がある。将来は作家として活動するのが夢で、頑張って江東区の東京都現代美術館で展示させてもらえるような作家になりたいという。
高田さん: 自転車でも行ける距離なので(笑)
さすが墨田っ子。いつか高田さんがマイ窯を買って、爆発を気にせずに作品が焼ける日がきますように…。
(エキサイトニュース コネタ編集部)
【高田成美さんからのお知らせ】
「交差展 vol.7」
会期:2014年1月26日(日)〜2月2日(日)
場所:横浜元町商店街の有志店舗
「Re:animal 多摩美術大学工芸学科二年制作展」
会期:2014年2月24日(月)〜3月2日(日)
場所:SUBWAY GALLERY M
交差展のほうはPatternシリーズのカメラと靴を、
Re:animalでは学年で廃材を使って動物を作るという課題で作った作品を展示する予定です。