申・セビョルさん作(多摩美術大学1年)。作品によって、早ければ3分で描きあげてしまう

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紙コップといえば、使い終わったらすぐに捨てられてしまうもの。しかし、このような絵が描いてあったらもったいなくて捨てられない。描いたのは、多摩美術大学工芸学科1年の申・セビョルさん。ソウル出身の留学生だ。先日行われた学園祭で100種類を展示したところ大好評で、たくさんの作品が売れていた。申さんに、紙コップに描いた絵についてお聞きした。

●早ければ3分で!!

――そもそも、なぜ紙コップに絵を描こうと?
「紙コップって、使い終わると手でグシャグシャにされて捨てられてしまうけど、私はそれがすごく嫌だったんです。大切にしてもらえる方法はないかな〜と思って・・・」

細かい線で描いてあるが、全て下書きをせずに描くという。
「描きたい絵を頭の中に描いて、それを描いていく場合と、描きながら考えていく場合とがあります」
――1個の絵を描きあげるのに、どのくらいの時間がかかりましたか?
「3分から30分です」
――さすが、描くのが早いですね!学園祭では100種類を展示されてましたが、全てを描くのに何日くらいかかりました?
「2〜3週間です。疲れるというよりも、展示初日までに時間が足りないんじゃないかと思って、そっちの方が心配でした。前日までかかって、なんとか100種類を描き上げました。さすがに、60種類を超えたあたりから、ムリなんじゃないかと思って心が折れかかりましたけど(笑)」

途中でやめてしまってもいいようなものだが、まわりの人に「100種類作る」と言ってしまったがために、描き続けたという。

使っているペンは主に2種類。
「マッキーケアの超極細の0.7ミリのほうと、100円ショップで2本で100円で売られているゲルインクのものを使ってます。特にマッキーは描きやすいし、描いた時に少しだけにじむので気に入っています」
描く時の力加減によっても、全く雰囲気が違ってくるという。

●申さんの「ラーメンズ運」

冒頭でも触れたように、申さんは韓国のソウル出身だ。
――なぜ多摩美に入ろうと?
「きっかけはラーメンズだったんです。昨年までは韓国にいたんですけど、映像でラーメンズを知って以来、どんどんハマっていって、多摩美出身の小林賢太郎さんと片桐仁さんの後輩になりたいと思うようになったんです」

しかも、申さんには「ラーメンズ運」があった!
昨年、ラーメンズの公演のプレオーダーチケットが2回も当たって、日本に遊びにきたのである。

ラーメンズに生で触れた申さん。
「やっぱり面白いものを創る人は凄いな〜と思いました。でも、『凄いな〜』と思って終わるんじゃなくて、逆に、私の作品も他の人が見た時に『凄い』と思って欲しいという気持ちになりました」

申さんは、美大受験のための予備校に通っていた訳ではない。入試のための勉強をすることに乗り気ではなく、どうしようかと悩んだ末、高校を卒業後の1年間はバイトに励んだり、旅行をしたりの毎日を過ごす。
「合格するかどうかはさすがに不安だったけど、思い切って受験してみました」

ここまでをまとめると・・・
ソウルに住んでいて、昨年、ラーメンズを知る→多摩美に入ろうと決意→受験→合格→日本に留学

――ということは、日本に住み始めてからまだ半年しか経ってないんですね!
「そうです」

なぜ私が驚いたのかというと、実は、申さんはビックリするほど日本語が堪能なのである。

――日本語はどのようにして勉強したんですか?
「元々、異文化には興味があって、映画を観たり、小説を読んだり、ラーメンズのようなお笑いの映像を観たりしているうちに、話せるようになっていきました。でも、まだまだです」

なんて腰が低いんだ。
映画も、世間にはあまり知られていないような若い監督が撮影したような映画も観ていたという。ちなみに、音楽はアジアン・カンフー・ジェネレーションのファンで、中学の頃からよく応援していたそうだ。

――今後の目標は?
「いつかはラーメンズのお二人と一緒に何かでコラボできたらという思いはありますが、そのために頑張って成長していきたいです!」

ラーメンズのことが好きで好きでしょうがないというのに、敢えて興奮を抑え気味にラーメンズの魅力を語ってくれた申さん。ソウルに住んでいる申さんのご家族の皆さん、娘さんは日本で頑張ってますよ〜。
(取材・文/やきそばかおる)