値千金の前半終了間際の1点…苦境を打破するきっかけを与えた男・大迫勇也
「大迫のゴールはホントにチームに大きな勢いを与えた」と開始時から献身的な守備で貢献していた岡崎慎司(マインツ)も感謝する一発が飛び出し、日本は後半、内容でオランダを圧倒する。最終的には2-2のドローに終わったが、10月2連戦(セルビア/ベラルーシ)の停滞感を打ち破る試合ができたのは間違いない。
A代表初招集となった7月の東アジアカップ(韓国)のオーストラリア戦でいきなり2ゴールを挙げ、8月のウルグアイ戦(宮城)、9月のグアテマラ(大阪)/ガーナ(横浜)2連戦で続けてザックジャパンに帯同した。が、10月2連戦はハーフナー・マイク(フィテッセ)の復帰によって落選。チームの無得点2連敗を遠く日本から眺めることになってしまった。
2014年ブラジル・ワールドカップ行きが現実になりつつあった若きFWにとって、これは大きな挫折だったに違いない。それでも大迫は腐らず、鹿島で結果にこだわり続けた。その意地と気迫が10月5日のFC東京戦から4戦連続ゴールとなって表れる。今季通算得点数をウルグアイ戦から代表主力組の1トップに君臨してきた柿谷曜一朗(セレッソ大阪)と並ぶ18に乗せ、存在を強烈にアピールした。
その好調ぶりにザッケローニ監督は賭けたのだろう。結果と内容によってはさらなる危機に陥る可能性のあるオランダとの大一番に柿谷ではなく大迫を抜擢。重要な1トップに据えた。前半はなかなかボールが収まらずに苦労していたが、「圭佑(本田=CSKAモスクワ)さんから『積極的に前から行こう』と言われたので迷わず前から行けた」と本人も言うように、いつかチャンスが来ると信じて前線からプレスをかけ続けた。こうしたアグレッシブな姿勢が反撃ののろしとなる1点目を引き寄せた。
遠藤保仁(ガンバ大阪)と香川真司(マンチェスター・U)が入った後半は完全にボールを支配。大迫が攻撃に絡む場面も増えてくる。そして15分には内田、岡崎、本田、内田とつながったボールをペナルティエリア内で受け、飛び込んできた本田にダイレクトで落とした。次の瞬間、本田は左足でシュート。GKの左わきを破って2点目を奪った。流れるような理想的な崩しからアシストを決めた大迫は、このプレーでさらに自信を深めた。
「篤人さんがあれだけ上がってきてくれたら自然と奥が空く。そこでうまく相手のギャップを突けたと思う。圭佑さんもいいタイミングで入ってくれたので、簡単に落としただけ。本当に技術の高いシュートでした。オランダのDFは大きかったけど、全然大丈夫だった。駆け引きの面でうまくいったと思います」と大迫も力強くコメントしていた。
2009年の対戦で0-3、2010年南アフリカ・ワールドカップの時は0-1と過去の対戦で一度もゴールを割れなかったオランダ相手に1ゴール1アシストという結果は称賛に値する。だが、彼自身は勝ちきれなかった悔しさの方が強いようだ。
「2-2に追いついたからには勝ちたかったし、個人的にももう1点取るチャンスはあった。そこはしっかり決めきれるようにならないと。そういう力をつけたいです」と意気込みを新たにした大迫。柿谷との1トップ争いも一歩リードし、レギュラー定着へ大きなアピールを見せた。
文●元川悦子

