IPO目前、2013年のツイッターの軌跡を振り返る
ツイッターは上場に向けたユーザー獲得と売上拡大のためにどんな努力をしてきたのだろうか。
ツイッターの上場が今週後半に迫っている。同社が今年、売上を向上させるためにとってきた施策を振り返ってみよう。
今年ツイッターは数多くのアップデートを展開してきた。Vineのようにユーザーの心を捉えた機能もあれば、TwitterMusicのようにいつの間にか消えてしまったものもあった。
収入源は広告
当然だが、ツイッターの主な収入源は広告である。広告ツイートはターゲットしたユーザーに対して特定の時間帯に広告を配信し、広告主と消費者を直接つなぐことを可能とする。ただツイッターのアクティブユーザー数は現在2億1800万ユーザーであり、フェイスブックの月間11億9000万人に比べてしまうとまだまだ小さい。
ツイッターは成長の停滞をリスクとして認識しており、IPOを控えた今年は多くの施策によってユーザー数の増加と売上の拡大に拍車をかけている。
1月:「Vine」ツイッターの動画サービス
ツイッターは6秒間の映像を手軽に作成してタイムラインに直接埋め込めるサービスを開始し、インスタグラムが急いで追従する程の人気を誇った。しかしこれは、ユーザーにgif画像のようなループ動画を提供しただけではなかった。よりクリエイティブな広告も可能にしたのである。
ツイッターは直近のアップデート(詳細は後述)において、pic.twitter.com上の画像や動画をフィード内で直接プレビューできるようにし、コンテンツのビジュアル化を図った。動画広告もフィード内でプレビューされるようになったため、ユーザーが広告を見る機会がこれまでよりも増えたことになる。
2月:アメリカンエキスプレスがツイッターをeコマースのプラットフォームとして利用
「tweet to buy」(ツイートして購入)機能は、顧客が選んだ商品をツイートによって購入する事を可能としたサービスだ。アメリカンエキスプレスのカードを持っている人が「#BuyAmExGiftCard25」というハッシュタグと共にツイートすると、その商品を買うことができる。ツイッターをソーシャルプラットフォーム以上のものに成長させたいという当社の思惑が見え隠れしている。
eコマースは一般的に垂直統合モデルとされるようだが、決済サービスと連携させればハッシュタグを売上に変えることができるかもしれない。
スターバックスも似たようなキャンペーン「Tweet a Coffee」を開始した。自分と友人の双方がツイッターアカウントを持っている場合、自分だけでもスターバックスアカウントを持っていれば、相手に5ドルのギフトカード(コーヒー一杯分)を送る事が出来る。
スターバックスのキャンペーンはベータ版だが、仮に成功すれば他社も追従することだろう。
3月:さようなら、サードパーティ製アプリ
ツイッターは、TweetDeckの非Webアプリケーション(TweetDeck for iPhone, Android , Air)のサポートを中止した。
ツイッターが成長を続ける中、サードパーティが提供するツイッタークライアントアプリの廃止が相次いだ。ツイッターはサービスのコントロールを自社で行えるよう他社が提供するツイッターアプリを排除し、ソーシャル・ネットワークのカスタマイズは唐突に終了した。
4月:カード機能が登場
この頃にツイッターは「Twitter Cards」(ツイッター・カード)をリリース。Twitter Cardsによりデベロッパーやメディア企業がアプリ、メディア商品、写真や動画等をツイートと接続できるようにした。
このカード機能を使えば、商品や外部アプリやメディア等をメタデータを利用してツイートとリンクさせ、表示することができる。例えばニュースメディアのリンクがツイートされた際にそれを「ウェブで表示する」オプションで開くと、直接提供元のサイトに飛ばされることになる。
ツイッター・カードは2012年中頃から一応存在していたのだが、今年になってカードの種類が増やされ、ウェブのどこにでも繋げられるようになった。ツイッターは単なるソーシャルネットワークからインターネットの羅針盤とすら言えるサービスに進化し、利用者にとって意義のある方向を示してくれるようになった。
ReadWriteのダン・ロインスキが以前述べたように、ツイッターがカード機能を刷新したことはデベロッパーの想像力をかき立て、ソーシャル以外の使いかたも想起させるであろう。
ツイッターが音楽のストリーミングにどう参入するかが注目される中、4月末にはTwitter#Musicも公開された。噂されていたストリーミングサービスとは異なり、iOSとウェブ用に公開された単体アプリでユーザーが好きなアーティストをフォローしたり音楽を購入したり出来るというものであった。
このサービスはアーティストからは歓迎されたが、利用者へのメリットが明確でなかった。
Twitter#Musicは他社の音楽配信サービスとの差別化が出来ておらず、消費者は何故他のサービスからわざわざ乗り換える必要があるのか分からなかったようだ。ちなみにこのサービスは10月には廃止された。
ここで明らかになったのは、ツイッターはあまり本業であるマイクロブログやコンテンツ共有サービスから逸れるべきではないということである。今度同じ過ちを繰り返せば、投資家から反感を買うことになりそうだ。
8月:関連リンク
ツイッターが関連リンクの掲載を開始した。これは元のツイートを表示しながら関連リンクがその下に並ぶ形となっており、ユーザーにより広く深く情報を提供しようとするものだ。
このサービスが始まった際に関連リンクの順位や表示ロジックが公開されなかったので、一部の噂ではツイッターは広告主から広告料を徴収してランクを決めるのではないかとすら言われている。
この新機能は、オンラインでニュースを発見したり追いかけたりする場所としてのツイッターの位置づけを固めた。今後同社は多くのユーザーに、ツイッターを使って最新ニュースを読んでほしいと願っているようだ。
9月:スパム問題に直面
ツイッターは9月12日に同社の上場を発表した。発表はツイートのみで行い、リアルタイムな情報への自社の強さと影響力を強調した。
同時期にツイッターはパーソナライズされたユーザーレコメンデーションを始めている。「@MagicRcs」がその機能のアカウントだ。@MagicRcsをフォローしたユーザーには、彼らがどのアカウントをフォローすべきか等の提案がダイレクトメッセージで送られてくる。この機能は瞬く間に人気となったが、スパムのターゲットになりやすいという脆弱性もあった。
最終的にツイッターは、@MagicRecsの主要機能であるフォロー提案をモバイルアプリのビルトイン機能とし、ユーザーがツイッターからの提案を受け取るかどうかを選択できるようにした。
広告目的のフォロー提案はまだないようだが、今後はフィード上と同じような形で展開されてもおかしくはない。
10月:ツイッターのビジュアル戦略
ツイッターは10月3日に株式公開申請を行い、その書類にはユーザー増加の停滞が会社の成功に影響を与える可能性があると記載された。
ツイッターはコムキャスト及びNBCユニバーサルとの提携を発表。テレビの「ながら」視聴のマネタイズを狙った試みであろうと思われる。現在ではテレビ番組の放送中や放送後に視聴者がツイッターで語り合う事が多く、そんな「ながら」利用をツイッターは積極的に取り込もうとしている。発表されたアプリは視聴者がツイッターからテレビを操作できるようにしたもので、番組の視聴から録画予約までをも可能とする。
ニールセンのレポートによると、ソーシャルネットワークの中ではツイッターが一番、視聴者のテレビ番組への関心を煽っていると言う。今後も同社のテレビ業界における動きが気になるところである。
ツイッターのビジュアル化は多方面で進んでいる。先週からは、ニュースフィードの中に直接画像や動画のプレビューが表示されるようになった。困惑する利用者もいるようだが、ツイッターからすればよりビジュアルな表示によりタイムラインを美化することでユーザーへのアピールを図りたいのは当然であろう。今後はユーザーのみならず、投資家の関心も重要となるのだから。
大ヒットは期待できるか
今年ツイッターがユーザーの拡大と広告収入の拡大を積極的に行ったことは間違いない。より大衆的で魅力的なサービスとなり、ユーザーから歓迎される新しいサービスも多く目につく。今後その人気が投資家の心をつかむこともまた、間違いないであろう。
実際上場してみないことにはツイッターがどう扱われるかは分からない。ただ先輩であるフェイスブックのパフォーマンスから考えれば、ツイッターは上場企業として消費者及び投資家に大歓迎されることだろう。
トップ画像提供:Garrett Heath(Flickrより)Twitter #Music の画像提供:SharonHahnDarlin
Selena Larson
[原文]