タブレット用アプリの開発者はゲームよりもエンタープライズ・アプリに目を向けるべき

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誰も彼もがiPad用のゲームを作ろうとしているが、本当にすべきことは他にある。

デベロッパーたちには、スマートフォンよりもタブレット用のアプリを開発したいという明確な動機がある。人々がタブレットを使う時間はスマートフォンよりも長いし、タブレット向けアプリのほうが収益化もしやすいからだ。そして信じられないかもしれないが、タブレット用のアプリ・エコシステムには、デベロッパーがまだ手を付けていないまっさらな領域が存在するのだ。


ガジェット界の経済面において、タブレットは並々ならぬ影響力を持っている。世の中には(今のところ)、タブレットよりもPCやラップトップの方が多く出回っている。10億人を超える人々がスマートフォンを所有しており、その数はねずみ算式に増え続けている。調査会社のIDCによれば、2013年第二四半期におけるタブレットの出荷台数は、全世界で4510万であった。同時期のスマートフォンの総出荷台数は2億3640万であり、出荷台数で言えばタブレットはスマートフォンの19%に過ぎない。


ところが分析会社Mixpanelの最新の統計によると、モバイルの利用状況においては、タブレットの占める割合は25%に達するという。人々がタブレットを使ってゲームをしたり、テキストを読んだり、SNSを利用したりする時間は、スマートフォンよりも長いのである。


もしあなたが、一般に普及しているタブレット用アプリを開発したことがあるとしたら、それはゲームである可能性が高い。Mixpanelの最新のレポートによれば、タブレット利用の44%はゲームだ。ゲームに続く4つのカテゴリー(ソーシャル、教育、eコマース、メディア)を合計すると全体の27%になり、残りの29%は旅行、エンタープライズ、音楽、メール、写真、健康などのカテゴリーに分配されている。


「タブレットとスマートフォンの最大にして明確な違いはスクリーンサイズだ。優良なアプリはタブレットのほうが収益化に結び付けやすいだろう。」と、MixpanelのCEO、スハイル・ドーシは語っている。「重要なのは、使える面積が広いということだ。スマートフォンの小さいスクリーンと違ってタブレットはサイズの制限を受けないので、デザインの幅が広がる」


ここで、デベロッパーが陥りやすい罠を挙げてみよう。「みんながゲームアプリを使っている。ゲームは儲かるんだ。よし、もっとゲームを作ろう!」他のみんながやっていることは、当然自分もやるべき、というありがちな考えである。


本当にそうだろうか?


必ずしもそうではない。タブレットで(スマートフォンでも)ゲームのカテゴリーが順調な理由の一つは、アップルのApp Storeにもアンドロイドの Google Playにも、膨大な数の品揃えがあるからだ。Infinity BladeやTemple Runのような素晴らしいゲームもあるし、Candy Crushのような廃人になりかねないゲームもある。モバイル・ゲームの開発者にとって、今はまさに黄金時代なのだ。


だからこそデベロッパーは、タブレット用アプリのまだ手つかずのカテゴリーを探す必要があると言える。例えば、タブレットはメディア消費に特化したデバイスだ。FlipboardやZite 、Netflixのような会社は実に上手くこの分野を扱っている。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストも、自社のiOS、アンドロイド用のタブレット・アプリをつい最近アップデートしたばかりだ。


タブレットはまた、世界中の働く人々に対しても大きな可能性を秘めている。Mixpanelの棒グラフが示している通り、「エンタープライズ」カテゴリーのアプリより利用率が低いのは、音楽、メール、写真&動画、出会系アプリである。「Health」関連のアプリが第6位に来ており、「旅行」「エンタープライズ」を上回っている。WebMDの素晴らしいiPadアプリを使った経験がある人は、なぜデベロッパーたちが医者や患者のための健康アプリをもっと優先的に開発しないのか、疑問に思うだろう(コンピューターに入力された患者データの転送に関する厳しい法律を考えなければ、だが)。


スハイル・ドーシは、Salesforceのようなエンタープライズ・アプリはスマートフォンには向かないと言う。ならタブレットはどうか?スマートフォンよりはかなりマシである。


「iPhoneでSalesforceの機能をまともに使うのは絶対に無理だ。今のところ、Salesforceは実用に耐えうるスマートフォン・アプリを開発できていない。」とドーシは述べている。「Salesforceの最大の特徴はレポート機能だが、スマートフォン上で複雑なレポート機能を構築するのは基本的に不可能だ。込み入ったレポートを作成するためのUIコンポーネントを構築するにはあまりにもスペースが足りないからだ。」


Mixpanelのレポートの主旨は、「これがアプリ利用の現状だ。チャンスを掴むためには現状に従え」というものだ。しかし、この考察は間違っているかもしれない。メディア、健康、旅行、エンタープライズ、音楽といったカテゴリは全て、タブレット・アプリのエコシステムでは非効率的な市場である。では、デベロッパーや企業家が大好きなものは何か?それは、「正しく非効率であること」だ。そう考えてみると、これらのカテゴリーは無視すべきものではなく、絶好のチャンスなのである。


アンドロイド・タブレットの場合、チャンスはさらに2倍だ。Mixpanelのグラフを見ると、アンドロイド・タブレットにおいてはゲームの利用率が全体の68%を占めている。今後アンドロイド環境で素晴らしいエンタープライズ、教育、メディア等のタブレット・アプリを開発したいと熱望する企業家にとっては、まさに進出するのにうってつけの舞台が整っている。


そろそろ結論を述べよう。世間(そしてデータ)は、iOS用のゲーム・アプリを開発せよと言っている。これにみんな惑わされ過ぎているのである。なぜ他者がまだ作っていないものを開発しようとしないのか?そういった種類のアプリこそ、消費者は必要としているのに。


「タブレットで成功を収めるのは、ユーザーに創造的な自由を与えるようなアプリだと思う。例えばフォトショップだが、スマートフォン上でフォトショップの機能を構築するのはまず不可能だろう。操作があまりにも複雑過ぎる。」とスハイル・ドーシは語った。「でも、タブレットならなんとかなるかもしれない。タブレットならもっとたくさんの機能を構築するスペースがある。もっとパワフルなアプリを開発することだってできるだろう。くすぶっている連中が成功する道はここにあると私は考えている。」


Dan Rowinski
[原文]