宮市亮、アーセナルスタイルへの変貌…スーパーサブの地位確立へ

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 9月12日、アーセナル所属の日本代表MF宮市亮が、U−21プレミアリーグで、今シーズン初のスタメンを飾った。U−21プレミアリーグとはその名のとおり、プレミアリーグの21歳以下の選手を対象としたリーグ戦。ただし、大会の規則はフィールドプレーヤーに3人までオーバーエージ枠を設けていて、トップチームの控え選手も起用可能。負傷明けの選手がコンディションを整える場ともなっている。

 右ウイングでの出場になった宮市は、試合序盤に決定的なチャンスを外したが、交代するまでの62分間、冷静にプレーし、レベルの違いを見せつけた。その2日後の14日に行われたプレミアリーグ第4節サンダーランド戦にベンチ入りしたことを考えると、アルセーヌ・ヴェンゲル監督にとって、ある程度は満足と言える内容だったのだろう。

 少し話が逸れたが、U−21アーセナル対U−21ウェスト・ブロムウィッチは、ほぼユースの選手で構成された試合にも関わらず、観戦には4ポンド(約640円)かかる。無料ではないものの、2,651人のファンが駆けつけ、そこには宮市が出場するとの情報を得た日本人ファンの姿もあった。

 スタンドを多数の英国人ファンが占めるにも関わらず、「リオ! リオ! リオ!」と、宮市のチャントが聞こえる時間帯もあり、現地ファンの宮市への愛情が垣間見えた。

 このコンディション調整のための試合で気になったのは、宮市がかなり球離れの良いプレーをする傾向が強かったことだ。宮市の武器は日本人離れした加速力。ボルトン所属時代、チェルシーのイングランド代表DFギャリー・ケイヒルのようなプレミアのトップレベルのDFをスピードで置き去りにしたシーンは、多くのファンに衝撃を与えた。

 そんな宮市が果敢に仕掛けることなく、すぐにボールを離すよう心がけていたのは2つの理由が考えられる。

 1つはけがをしないプレーを意識していた可能性だ。プレミアリーグは激しいタックルが飛び交うリーグ。時には悪質なタックルが飛んでくるので、慣れていない選手が長くボールを持ち過ぎると危険だ。結果、このリーグではけがを回避する能力、もしくはけがをしにくい体質等が求められる。宮市も度重なるけがもあり、自身のプレースタイルに関して考え直している可能性もある。

 2つ目はチームのスタイルに合わせようとしていた可能性。現在所属するアーセナルが志向するスタイルはパスサッカー。今夏にはドイツ代表MFメスト・エジルという、過去5年のヨーロッパの公式戦で最もアシストを記録したワールドクラスのパサーが加入した。結果、今シーズンは昨シーズン以上にしっかり繋いでから、ペナルティーエリアに侵入するサッカーを志向するのは間違いないだろう。そんなチームなので、ドリブル中心のプレーをするより、すぐにパスを出してDFの裏のスペースへ走り込む等、パサーにパスを出させるようなプレーを心がけていたのかもしれない。

 前述のエジルとは、ポジションが被ってしまうために起用される回数は減ってしまう。ただ、エジルが素晴らしいパサーであるのに疑いはなく、同時にピッチに立てれば宮市をうまく生かしてくれるはずだ。

 そこでまず宮市が目指すべきチーム内での立ち位置は、後半途中からスピードで相手をかき回すスーパーサブの地位だ。右ウイングのレギュラーであるイングランド代表FWセオ・ウォルコットは90分もつタイプではなく、途中で交代することがある。ひとまず、ウォルコットの体力が尽きた時に出すのは宮市。そういう立ち位置を確立するために、現状の球離れをはやくして裏を狙って使ってもらう意識というのは悪くない。

 重ねて言うが、大切なのはけがを避けてコンディションを整える。そして、ボールを持っていない時の動きも含めて、うまく使ってもらえる意識を高め、プレーの質を向上させれば、出場の時間は増えていくだろう。最終的に、ゴール前でも落ち着けるようになり、得点という結果も出せれば、スーパーサブどころかアーセナルという強豪でのレギュラーも見えてくるはずだ。

文●内藤秀明