「007 スカイフォール」の音楽が何故素晴らしいのか
そのような「状況」に表出する(観客を含めた)「場」の感情に音楽を当てていくのがアクション映画の劇伴の常套句だ。
20世紀初頭~中期に活躍した作曲家スコット・ブラッドリーはMGMの代表作(奇しくも本作もMGM制作である。)「トムとジェリー」において、2人の主人公全ての動きを見ながらオーケストレーションを施したと言われている。従って録音も絵合わせ。オーケストラの全員に映像を見せ、一挙手一投足に音楽を合わせた。これはアクション映画として最も高度かつ困難な作曲、録音の部類と言える。現代の映画音楽はこういった手法を取る事はあまり無い。基本的には作曲した数ある楽曲を先に提出し、それを画面に当てはめていくのが一般的になっている。
この事実を知った上で、本作を観ると如何にこの映画の劇伴が凄まじい方法で作られているかを思い知る事になる。
端的に本作の劇伴を説明すると、この映画は全ての事象に音楽がリンクしていると言える。
登場人物の感情、状況の緊迫感、カットの移り変わり、小道具、大道具の動きに至るまで。細かいところでは主人公が銃を構えた瞬間にそれまで鳴っていた音楽に新たな楽器の音色が加わり、音楽のステージが一つ上がる。
これを総尺142分58秒、全てにおいて行っているのだ。
本作はほとんどのシーンで音楽が流れている。逆に流れていないシーンでは意図的に音楽を排している事が見て取れる。つまりそのシーンにおいて「無音」が最も有効な音楽になる。これは観なければ納得のいかない意見かも知れないが、一度観ると誰しも頷くと思う。
特に冒頭のシークエンスにおける劇伴の素晴らしさは筆舌に難い。打ち込みとオーケストレーションが過不足無く交差し、場面展開に全てリンクし、あれだけの大活劇を最も魅力的に魅せている。そして登場するいくつもの楽曲がシームレスに繋がる。bpmや調性、音色の差異も綿密に計算されている為、観ている側には全く違和感を持たせない。果たして、こんな作曲、編曲、録音が可能なのだろうか。
そして、これだけ複雑な音楽的思考を張り巡らせながら、ここぞという時に「007のテーマ」を違和感無く流せる天才的な所業。正直、アクション映画の劇伴として一分の隙も無い。
言い換えれば、この映画における音楽は142分58秒という長い長い1曲とも評せるのだ。
冒頭に述べた「一度観て印象に残るのはモンティ・ノーマンが作曲した「007のテーマ」位だろう」という一文は決してこの映画の劇伴を卑下するフレーズではない。むしろ最大限の賛辞なのだ。この文を読む前に本作を観た方々は、この142分の間に音楽が一体何曲流れたか分かるだろうか。あれだけ大量の音楽が流れ続けながら、観ている側に全く食傷感を抱かせず、むしろ、音楽によって無意識的に映画のテンポを操作されている事に気付いているだろうか。印象に残らないと感じるのは、あくまで楽曲的な部分、音楽単体の話にしか過ぎないのだ。
20世紀初頭~中期に活躍した作曲家スコット・ブラッドリーはMGMの代表作(奇しくも本作もMGM制作である。)「トムとジェリー」において、2人の主人公全ての動きを見ながらオーケストレーションを施したと言われている。従って録音も絵合わせ。オーケストラの全員に映像を見せ、一挙手一投足に音楽を合わせた。これはアクション映画として最も高度かつ困難な作曲、録音の部類と言える。現代の映画音楽はこういった手法を取る事はあまり無い。基本的には作曲した数ある楽曲を先に提出し、それを画面に当てはめていくのが一般的になっている。
この事実を知った上で、本作を観ると如何にこの映画の劇伴が凄まじい方法で作られているかを思い知る事になる。
登場人物の感情、状況の緊迫感、カットの移り変わり、小道具、大道具の動きに至るまで。細かいところでは主人公が銃を構えた瞬間にそれまで鳴っていた音楽に新たな楽器の音色が加わり、音楽のステージが一つ上がる。
これを総尺142分58秒、全てにおいて行っているのだ。
本作はほとんどのシーンで音楽が流れている。逆に流れていないシーンでは意図的に音楽を排している事が見て取れる。つまりそのシーンにおいて「無音」が最も有効な音楽になる。これは観なければ納得のいかない意見かも知れないが、一度観ると誰しも頷くと思う。
特に冒頭のシークエンスにおける劇伴の素晴らしさは筆舌に難い。打ち込みとオーケストレーションが過不足無く交差し、場面展開に全てリンクし、あれだけの大活劇を最も魅力的に魅せている。そして登場するいくつもの楽曲がシームレスに繋がる。bpmや調性、音色の差異も綿密に計算されている為、観ている側には全く違和感を持たせない。果たして、こんな作曲、編曲、録音が可能なのだろうか。
そして、これだけ複雑な音楽的思考を張り巡らせながら、ここぞという時に「007のテーマ」を違和感無く流せる天才的な所業。正直、アクション映画の劇伴として一分の隙も無い。
言い換えれば、この映画における音楽は142分58秒という長い長い1曲とも評せるのだ。
冒頭に述べた「一度観て印象に残るのはモンティ・ノーマンが作曲した「007のテーマ」位だろう」という一文は決してこの映画の劇伴を卑下するフレーズではない。むしろ最大限の賛辞なのだ。この文を読む前に本作を観た方々は、この142分の間に音楽が一体何曲流れたか分かるだろうか。あれだけ大量の音楽が流れ続けながら、観ている側に全く食傷感を抱かせず、むしろ、音楽によって無意識的に映画のテンポを操作されている事に気付いているだろうか。印象に残らないと感じるのは、あくまで楽曲的な部分、音楽単体の話にしか過ぎないのだ。
