消費税増税の是非を巡り、民主党内での対立が深まっている。野田佳彦総理は11日、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案の採決に関し、「(民主党内では)当然、党議拘束がかかる」と、法案に反対する民主党議員の処分も辞さない考えを示した。

野田総理はこれまで、輿石東(こしいし・あずま)幹事長とともに、小沢元代表との三者会談を2度行ない、いわゆる“小沢切り”を決意。自民党との協調路線に本格的にかじを切ったかのように思われている。先日の改造内閣発足に伴う、問責決議を受けた2大臣の交代劇も、まさに自民党への配慮を象徴する出来事だった。

しかし、民主党の某中堅議員A氏は「あの三者会談は、世間で報道されているような小沢切りをアピールする儀式ではない」と断言する。

「もしそうなら結論が見えている会談を2度も行なう必要はない。野田総理は改造内閣のメンバーも小沢さんと相談して決めたと思います。そしてどのような手順で増税法案の採決に進み、選挙を行なうかにまで話が及んでいたのではないかと私は考えています」

一方、ジャーナリストの田中良紹氏は、野田総理の腹の中をこう予測する。

「本来、野田総理は東日本大震災の復興や世界的な経済危機への対応に集中していれば、長期政権化も可能だった。なのに消費税を持ち出して支持率を下げた。今回の内閣改造も、森本防衛大臣を除けば明らかに二軍メンバー。政権を長期安定化させようなんて気はさらさら感じられません。野田さんの狙いは、消費税を掲げることで政界再編を仕掛けることなんだと思います。自民が賛成しなければ法案は否決されて選挙。もし可決されても、民主党は法案成立後に選挙を実施すると言っています」

つまり、自民党が法案に賛成するかどうかに関わらず、野田総理はすでに次の選挙を見据えた計算を立てているということ。前出のA議員も、野田総理は消費税増税法案をきっかけに政界再編を狙っていると見る。

「民主党の代表選も自民党の総裁選も9月に控えている。野田さんも谷垣さんも再選は難しいでしょう。ならば消費税を争点にした選挙に打って出て、政界再編に持ち込む。そして民主も自民も大分裂し、そこに大阪維新の会などの第三極も加わり、政策の近い集団同士で連立を組んで過半数勢力を形成することが、彼らにとって唯一の生き残る道なのです」(A議員)

だからこそ、野田・輿石・小沢の三者会談は、そう遠くない未来に迫った選挙を前に、野田総理自身が生き残る道を探るための“相談”だったという見立てが成り立つ。そして、民主党同様に党内融和に苦しむ自民党の谷垣総裁も、この流れに乗ったのだ。

「野田さんや谷垣さんは、敗北が確定的な9月の“党内選挙”を座して待つより、組織が傷を負ってでも解散総選挙で勝負する道を選んだのだと思います。選挙は(総裁選前の)8月か9月にあるかもしれません!」(A議員)

(取材/菅沼 慶)

■週刊プレイボーイ26号「民主VS自民のチキンレース 勝つのはどっちでもない!!」より