鉄パイプで殴りチェーンソウでぶったぎるキネクト快感!〈「ライズ オブ ナイトメア」インタビュー前編〉
なかなか酒が抜けない夫になって、連れ去られた妻を救い出せ! 列車事故でルーマニアの森に放り出された乗客たち。アルコール依存症で入院歴もあるジョッシュは、妻をさらった覆面の大男を追って古城に足を踏み入れる。そこでは捕らえた人間を拷問して怪物へと改造していた。他の乗客が次々と変わり果てた姿になっていく中、無事妻を救い出すことはできるのか……。不気味な空間を自由に探索し、扉を開き、はしごを登り下りして、アイテムを拾い、鉄パイプで殴りつけて、チェーンソウでぶったぎる。映画で観たアレやコレをキネクトを通じて体感できるホラーアドベンチャーゲーム「ライズ オブ ナイトメア」が9/8にリリースされました。今まではどう見ても不吉な場所にガンガン入ってくホラー映画の主人公はバカだと思ってましたが、これをプレイして「あ、その場でじっとしてるのも怖いから先に進んじゃうんだな」と理解できたほどの臨場感。この臨場感をどのようにして作ったのか、伊藤プロデューサーに聞きました!
――発売前から動画や写真を見て、ゾンビを殴れるゲームだと期待してました。実際プレイしたら殴りすぎて筋肉痛になってしまって。
伊藤 ありがとうございます。でも敵はゾンビじゃなくて、どちらかといえばフランケン寄りなんですよ。錬金術がキーワードになってまして、それで改造された人間というか、カラクリ人形というか。
――ゾンビじゃなかったんですね……。
伊藤 私も好きなんですけど、ゾンビ映画って日常じゃないですか。一見すると世界は壊れてるようですけど、変わり果ててはいるけど続いていて、それを受け入れていかなきゃいけない。ただ「ライズ オブ ナイトメア」に関しては、とっかかりこそ電車で旅行をしている日常ですが、古城に迷い込んでから後半にかけてどんどん日常から離れていくので、ゾンビとはまた違うかな、と。
――でも海外版のプロモーション映像を見たらゾンビのスポークスマンが出てましたけど……。
伊藤 文化の違いなんでしょうかね(笑)。海外では特に敵を倒すアクションの部分を推してまして。
――ダンスゲームやってる孫におばあちゃんが「あたしはゾンビをぶっ殺すわ!」って言ってるCMもあったりして。
伊藤 海外版のプロモーションは方針を聞いて行き過ぎと思ったら止めてますけど、基本的にはお任せして「ああ、こんなふうになるんだ」と楽しみながら観てました。日本では流してないですけど、あれはあれでパンチが効いてて面白い。アクションが好きな人には見て欲しいです。
――日本ではアクションよりホラーとしてプロモーションされていますね。
伊藤 アクションも重要なんですけど、アドベンチャーなんですよね、このゲームは。最初にキネクトを知ったときに、アドベンチャーをどう変えようかと思ったんです。家庭用ですし、空間の中をひとりで自由に歩いて探索したいな、と。
――そこにホラーを加えたのはどうしてですか?
伊藤 最初にキネクトで何ができるか試してたんですが、コントローラーを使わないから画面の前にただ立つんですね。それが心許なくて。
――心許ない?
伊藤 今までは画面の前に座ってコントローラーを持ってゲームしてたわけじゃないですか。だから手に持ってたものを取り上げられて立たされてるみたいで非常に不安になるんですよ。それがホラーにぴったりじゃないかと思って、今の形になりました。
――コントローラーが無いというのはいままでのゲームと大きな違いになりますね。
伊藤 ボタン一個でも入力装置があれば押した感覚がリアクションになるんですけど、それがひとつも無いのはほんとに大きいです。だから、プレイヤーの動作にきちんとリアクションを返して、信頼関係を築いていくのがすごく重要で。
――リアクションを返せるのは画面だけですよね。
伊藤 そうです。少しでも反応が無いと「なんだこれ、全然動かない」ってやる気が無くなっちゃうんですよ。ちょっと調整するだけでいきなり動かなくなって、昨日まで楽しめたのに今日は楽しくないということもありました。何個かパラメータをいじってるとどれが影響してるかも分からない。それくらいに微妙な違いで大きな差が出るんです。何かしたらできるだけ拾って反応を返したい。でも全部拾うと何をやっても正解になっちゃって、これはこれで面白くない。どこまで許容するかはプログラマも苦労して調整していました。
――操作のジェスチャーはどうやって決めていったんですか?
伊藤 もう一からルールを作っていくようなかんじですね。アイデアを出して、テストプレイでプレイヤーの反応をフィードバックしていきました。
――テストプレイはどれくらいやったんですか?
伊藤 開発の初期のころと中盤くらいと何回もやりました。最初から海外を視野に入れて作ってますので、アメリカやヨーロッパで全く初めての人を連れてきて、開発スタッフみんなでプレイしているところをライブカメラから見てました。
――フィードバックで大きく変わったものはありますか?
伊藤 移動ですね。最終的にはどちらかの足を前に出すだけで進むようにしたんですが、最初はその場で足踏みすると進むようにしてたんですよ。
――確かにそれは臨場感ありそうですね。自分で歩いてるみたいで。
伊藤 でしょう? でも、海外の方ってその場足踏みができないんですよ。
――えっ? どういう意味ですか?
伊藤 そのままです。ほんとにできないんです。日本だと小学校で行進とかやるじゃないですか。海外ではやらないんでしょうね、きっと。
――行動のパターンに足踏みが無いんですね。
伊藤 そうみたいです。なんか、こんなかんじ(腕と足を一緒にあげる)になる人とか、こんなかんじ(膝を曲げないでロボットみたいに左右に揺れる)になる人とか、その場にとどまっていられない人とか、みんなバラバラなんですよ。おかしいな、理にかなったジェスチャーのはずなのに、なんでみんなこんなに下手なのかな? って。
――足踏みできるのが当たり前、と思っちゃいますね。
伊藤 あ、できないんだ、と気付くまでに結構時間がかかりました。それで今はシンプルに、前に足を出すだけで進むようにしたんです。確かにこっちのほうがゲームに没入できる。それでようやく納得しました。
――採用をとりやめたジェスチャーもありますか?
伊藤 いろいろあります。たとえば足を横に出すと横に動くとか。
――サイドステップみたいな。
伊藤 上半身を横に振ったら横に動くとかいろいろ考えたんですが、消えては復活してまた消えてを何度か繰り返して、最後はとりやめました。
――なぜとりやめたんでしょうか?
伊藤 なんていうのかな。前に踏み出せば進む、後ろに下がればバックする、横に踏み出せばサイドステップとなると、足をコントローラーに見立てられちゃうんですよ。それはちょっと違うのかなと。
――どういう違いが出てくるんですか?
伊藤 ただ横にステップするだけだと、動きがデジタルになってしっくりこないんですよ。戦闘のときに腕を上げてファイティングポーズを取るジェスチャーがありますが、ただ上げてるだけじゃなくて高低をリンクさせてるんですね。腕を高く上げると画面の中でも高く上がる。カチッと決めるんじゃなくてアナログになっているところが重要で。
――いつも同じ動きにすると記号になっちゃうってことですか?
伊藤 そうですね。そうすると身体がコントローラーになった気になる。
――ああ、プレイヤーとゲームの間に身体がコントローラーとして入って距離があいてしまう。
伊藤 先ほどいった信頼関係が崩れてしまう。臨場感を高めるためには、動きを反映してると思ってもらわないといけないんです。
――そういった工夫は他にもしてるんですか?
伊藤 主人公をアルコール依存症に設定してますね。
――それはどういう……?
伊藤 慣れない最初のうちは、ただ移動するだけでもちょっとフラフラするんですよね。
――だんだん酒が抜けてまっすぐ歩けるようになるんですね……。
伊藤 他に細かいところだと、デモシーンのほとんどが主人公の一人称視点なんですが、頭で動かすと画面も動くようになってるんですね。そうして自分の視点で語られていくのがこのゲームの特徴かな、と思ってます。
家庭用ゲームの前提ともいえるコントローラーから解放されて、一から操作方法を構築していった「ライズ オブ ナイトメア」。実際、説明書を読まなくてもキネクトの前に立ってチュートリアルだけやればすっと遊べたんですが、その裏にあった試行錯誤は想像以上でした。後編ではホラーアドベンチャーのホラーの部分と、アクション好きな方に向けて武器でクリーチャーをやっつけるアクションについて聞いています。(tk_zombie)
伊藤 ありがとうございます。でも敵はゾンビじゃなくて、どちらかといえばフランケン寄りなんですよ。錬金術がキーワードになってまして、それで改造された人間というか、カラクリ人形というか。
――ゾンビじゃなかったんですね……。
伊藤 私も好きなんですけど、ゾンビ映画って日常じゃないですか。一見すると世界は壊れてるようですけど、変わり果ててはいるけど続いていて、それを受け入れていかなきゃいけない。ただ「ライズ オブ ナイトメア」に関しては、とっかかりこそ電車で旅行をしている日常ですが、古城に迷い込んでから後半にかけてどんどん日常から離れていくので、ゾンビとはまた違うかな、と。
――でも海外版のプロモーション映像を見たらゾンビのスポークスマンが出てましたけど……。
伊藤 文化の違いなんでしょうかね(笑)。海外では特に敵を倒すアクションの部分を推してまして。
――ダンスゲームやってる孫におばあちゃんが「あたしはゾンビをぶっ殺すわ!」って言ってるCMもあったりして。
伊藤 海外版のプロモーションは方針を聞いて行き過ぎと思ったら止めてますけど、基本的にはお任せして「ああ、こんなふうになるんだ」と楽しみながら観てました。日本では流してないですけど、あれはあれでパンチが効いてて面白い。アクションが好きな人には見て欲しいです。
――日本ではアクションよりホラーとしてプロモーションされていますね。
伊藤 アクションも重要なんですけど、アドベンチャーなんですよね、このゲームは。最初にキネクトを知ったときに、アドベンチャーをどう変えようかと思ったんです。家庭用ですし、空間の中をひとりで自由に歩いて探索したいな、と。
――そこにホラーを加えたのはどうしてですか?
伊藤 最初にキネクトで何ができるか試してたんですが、コントローラーを使わないから画面の前にただ立つんですね。それが心許なくて。
――心許ない?
伊藤 今までは画面の前に座ってコントローラーを持ってゲームしてたわけじゃないですか。だから手に持ってたものを取り上げられて立たされてるみたいで非常に不安になるんですよ。それがホラーにぴったりじゃないかと思って、今の形になりました。
――コントローラーが無いというのはいままでのゲームと大きな違いになりますね。
伊藤 ボタン一個でも入力装置があれば押した感覚がリアクションになるんですけど、それがひとつも無いのはほんとに大きいです。だから、プレイヤーの動作にきちんとリアクションを返して、信頼関係を築いていくのがすごく重要で。
――リアクションを返せるのは画面だけですよね。
伊藤 そうです。少しでも反応が無いと「なんだこれ、全然動かない」ってやる気が無くなっちゃうんですよ。ちょっと調整するだけでいきなり動かなくなって、昨日まで楽しめたのに今日は楽しくないということもありました。何個かパラメータをいじってるとどれが影響してるかも分からない。それくらいに微妙な違いで大きな差が出るんです。何かしたらできるだけ拾って反応を返したい。でも全部拾うと何をやっても正解になっちゃって、これはこれで面白くない。どこまで許容するかはプログラマも苦労して調整していました。
――操作のジェスチャーはどうやって決めていったんですか?
伊藤 もう一からルールを作っていくようなかんじですね。アイデアを出して、テストプレイでプレイヤーの反応をフィードバックしていきました。
――テストプレイはどれくらいやったんですか?
伊藤 開発の初期のころと中盤くらいと何回もやりました。最初から海外を視野に入れて作ってますので、アメリカやヨーロッパで全く初めての人を連れてきて、開発スタッフみんなでプレイしているところをライブカメラから見てました。
――フィードバックで大きく変わったものはありますか?
伊藤 移動ですね。最終的にはどちらかの足を前に出すだけで進むようにしたんですが、最初はその場で足踏みすると進むようにしてたんですよ。
――確かにそれは臨場感ありそうですね。自分で歩いてるみたいで。
伊藤 でしょう? でも、海外の方ってその場足踏みができないんですよ。
――えっ? どういう意味ですか?
伊藤 そのままです。ほんとにできないんです。日本だと小学校で行進とかやるじゃないですか。海外ではやらないんでしょうね、きっと。
――行動のパターンに足踏みが無いんですね。
伊藤 そうみたいです。なんか、こんなかんじ(腕と足を一緒にあげる)になる人とか、こんなかんじ(膝を曲げないでロボットみたいに左右に揺れる)になる人とか、その場にとどまっていられない人とか、みんなバラバラなんですよ。おかしいな、理にかなったジェスチャーのはずなのに、なんでみんなこんなに下手なのかな? って。
――足踏みできるのが当たり前、と思っちゃいますね。
伊藤 あ、できないんだ、と気付くまでに結構時間がかかりました。それで今はシンプルに、前に足を出すだけで進むようにしたんです。確かにこっちのほうがゲームに没入できる。それでようやく納得しました。
――採用をとりやめたジェスチャーもありますか?
伊藤 いろいろあります。たとえば足を横に出すと横に動くとか。
――サイドステップみたいな。
伊藤 上半身を横に振ったら横に動くとかいろいろ考えたんですが、消えては復活してまた消えてを何度か繰り返して、最後はとりやめました。
――なぜとりやめたんでしょうか?
伊藤 なんていうのかな。前に踏み出せば進む、後ろに下がればバックする、横に踏み出せばサイドステップとなると、足をコントローラーに見立てられちゃうんですよ。それはちょっと違うのかなと。
――どういう違いが出てくるんですか?
伊藤 ただ横にステップするだけだと、動きがデジタルになってしっくりこないんですよ。戦闘のときに腕を上げてファイティングポーズを取るジェスチャーがありますが、ただ上げてるだけじゃなくて高低をリンクさせてるんですね。腕を高く上げると画面の中でも高く上がる。カチッと決めるんじゃなくてアナログになっているところが重要で。
――いつも同じ動きにすると記号になっちゃうってことですか?
伊藤 そうですね。そうすると身体がコントローラーになった気になる。
――ああ、プレイヤーとゲームの間に身体がコントローラーとして入って距離があいてしまう。
伊藤 先ほどいった信頼関係が崩れてしまう。臨場感を高めるためには、動きを反映してると思ってもらわないといけないんです。
――そういった工夫は他にもしてるんですか?
伊藤 主人公をアルコール依存症に設定してますね。
――それはどういう……?
伊藤 慣れない最初のうちは、ただ移動するだけでもちょっとフラフラするんですよね。
――だんだん酒が抜けてまっすぐ歩けるようになるんですね……。
伊藤 他に細かいところだと、デモシーンのほとんどが主人公の一人称視点なんですが、頭で動かすと画面も動くようになってるんですね。そうして自分の視点で語られていくのがこのゲームの特徴かな、と思ってます。
家庭用ゲームの前提ともいえるコントローラーから解放されて、一から操作方法を構築していった「ライズ オブ ナイトメア」。実際、説明書を読まなくてもキネクトの前に立ってチュートリアルだけやればすっと遊べたんですが、その裏にあった試行錯誤は想像以上でした。後編ではホラーアドベンチャーのホラーの部分と、アクション好きな方に向けて武器でクリーチャーをやっつけるアクションについて聞いています。(tk_zombie)