「ヱヴァンゲリヲン新劇場版-サウンドインパクト-」2011年9月29日発売。バンダイナムコゲームス。PSP対応。「通常版」は6280円(税込)。「サウンドトラックEDITION」は8380円(税込)、「特装版」は11530円(税込)。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」のシーンとBGMで構成されたリズムアクション。遊び方は6種類あり、どれも従来の音ゲーとは違った楽しみ方になっていて、「新劇場版」を観ていない人でも楽しめる。あの歌がバックに流れるステージが特におすすめです。
(C)カラー (C)2011 NBGI

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――あ、これは普通の音ゲーっぽい。ちゃんと次に押すべきボタンが表示されてる。すごい安心感。画面にいる使徒がノリノリで楽しそう。
飯田 と、思ったら。
――え、画面切り替わった! え、え。CGからアニメ絵になった。使徒が近い。ちょ、これどのボタン押せばいいんですか。
飯田 マルとかサンカクとか。
――対応したボタンを押すと国連の戦車がミサイル撃ったり、あ、こっちはランチャーを。エヴァで使徒と戦わないんだ。
飯田 そう、事件は現場で起こっているんだ! って国連が使徒を攻撃しにいくゲームなんです。ほかのひとがミサイル撃っているなか、ひとり非力なのがいるでしょ。
――手だけ表示されて、拳銃撃ってる。
飯田 それ、俺ね。
――これ飯田さんですかー。もっと銃撃たせよう。
飯田 使徒みたいな圧倒的な敵がいたらさ、俺だったらやっぱり銃を持つよなーって。
――普通持たないです。
飯田 だって使徒怖いでしょ。
――まず逃げますよ。
飯田 そっか……。ここは僕のfps好きとしての意地です。
――こだわってますね。
飯田 そう。この「使徒セッション」ってこだわりが多いの。「エヴァ」っていいレーダーがいっぱいで、ほんとにいい仕事しているんですよ。
――鑑定団みたいな言い方ですね。
飯田 あのね、「宇宙戦艦ヤマト」のころから、SFアニメで大事なのはレーダーなんです。「銀河鉄道999」もすごい。松本零士が最高峰だと思っていて。
――はあ。
飯田 ええー。興味ないの?
――あまり。
飯田 俺は零士レーダーって名前をつけているんだけど……まあいいや。
――いや、よくないです。
飯田 よくない? よかった。俺くらいになるとアニメ観るときはレーダーに目がいっちゃうの。「エヴァ」はどうかなーって観ていたら、こんなレーダーがあったんです。もういっかい「使徒セッション」起動してみて。
――……どれ? あ、これか。なんかビルとかを立体的に表示して、斜め上からの視線。
飯田 こういう山水画みたいな素敵なレーダーがあったので、これでゲームを組み立ててみようと考えたんです。えらいでしょ?
――えらいです。

「ヤマト」のレーダーを検索してみたら、「なんだかよくわからないけどすごい」レーダーだった。そういえば「エヴァ」も使徒が出るたびにレーダーみたいなの出ていたなあ。毎回観ていたはずなんだけど気付かなかった。そうやって見逃してしまいがちなところを拾ってゲームにしちゃう飯田さんはやっぱりすごい人なのかも、と思い始めてきた。


飯田 つまりこの使徒セッションはレーダーありき。このレーダーを観たカラー(「ヱヴァ」制作スタジオ)の中の人がツイッターですごい喜んでくれたんだよ。話を聞くと、その人は90年代に……でーてーぴーって言うの?
――でーてーぴー?
飯田 うん、DTP、デスクトップパブリッシング。
――ちゃんと言えるんなら最初から言ってくださいよ!
飯田 はい。デザイナーさんたちがコンピュータをつかったデザインをはじめたんです。そこに、ネンドグラフィックスの草野剛さんという人がいて……知ってる? いま日本のアニメのほとんどは草野さんがロゴデザインしているんだよ。
――知らなかったです。
飯田 アニメ好きじゃないの?「プリキュア」あんなに観ているのに。
――俺そこまでアニメ観ていないんですよ。いま観ているのも、「プリキュア」だけですし。
飯田 そっか。草野さんのデザインに啓発されて、自分も志していまカラーでやっているらしいんだ。そしてその草野さんには、このゲームのユーザーインターフェースはほとんどやってもらったんですよ。あとパッケージも……パッケージすごいんだよ!
――え、どうすごいんですか?
飯田 現物はまだないから、ポスターでしか見られないんだけど、箱がすごいんですよ。なんと海がプリントアウトされてる。
――真っ赤。「ヱヴァ」の世界の海ですね。
飯田 そう。箱の上に海が印刷されてるの。
――もう聞きましたよ。
飯田 ザブ〜ンみたいな感じで。
――ほんとに海なんですか?
飯田 ほんとだよ、俺見たもん。波もちゃんと表現していてデコボコしているから。
――触っても見てもわかるんですか。これポスターの写真ではわからないですよね。
飯田 写真には〜写らない〜♪
――なんでいま歌ったんですか。うれっしそうに(笑)。
飯田 すごい迫力あるから。楽しみだな、Amazonから来るの。
――Amazonからなんですか?
飯田 うん。
――なんでパッケージを海に?
飯田 ゲーム本体を取り出すためには箱をあけなきゃいけないじゃない。海を開けるのって気分がいいよね。そんなことないでしょ。
――モーゼくらいですよね。
飯田 でしょ、ザブ〜ンって、ヱヴァの世界にダイブするんですよ。なんでわかんないの?
――わかんないから聞きに来たんですよ!
飯田 あ、そっか。

ファミ通でまたまた調べたところ、草野剛さんはユーザーインターフェースと箱のデザインだけでなく、取扱説明書、イヤホンの色など、デザインまわりはほとんど担当しているそうだ。ありがとうございます、ファミ通さん。
うーん、飯田さんから聞いたことばを検索する機械になってるな、俺。


――この特装版すごいですね、サントラもあるんだ。
飯田 そうそう。イヤホンが付いてて、ワンポイントで使徒が入ってるの。他には売ってないですよ。
――限定ですか。
飯田 これもので釣ってる感じする?
――いや、しないですよ。欲しいです。Tシャツもある。
飯田 俺これ持ってるよー。
――そりゃ持っているでしょうけど、いいなあ。ください
飯田 だめ〜。ゲームショウに着ていくんだもん。洗濯しておこう。(写真発見!)
――くそー……、今日一番のくやしさ。
飯田 いまね、ポスター見ていて気付いたんだけど、「3nd Impact」のスペル間違えてるね。
――え、わざとじゃないんですか?「サードインパクト」とかけてて、これで「サウンドインパクト」って読むんですよね。
飯田 「サードインパクト」です。
――え? サウ……サン……? え、どっちなんですか、ほんとうは。
飯田 わからない……、どっちが面白いのかな。
――面白いからって適当なこと言わないでくださいよ!
飯田 だよね。ほんとうは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版-サウンドイ ンパクト-」。
――このタイトル思いついたときは、やった! って。
飯田 思ったよ(笑)。
――ははは、やっぱり。これよくオーケーが出ましたね。
飯田 一発オーケーだったんだよ。意外。ふざけんな! って言われるかと思ってた。いいダジャレでしょ、一世一代の大ダジャレ。

ファミ通のインタビューによると、「サウンドインパクト」は〈“第3の音ゲー”というつもりです。音ゲーというつねに需要のあるジャンルに対して、僕らが新しく発明した“第3の音ゲー”を供給したいというトライアルでもあったんです〉と飯田さんは語っていた。
キャラものの音ゲーって珍しいし、ルールの違うステージがこんなにあるのもあまりみたことがない。

――ダジャレからはじまった「サウンドインパクト」はどういう思いで作っていたんですか?
飯田 このゲームって「新劇場版」のシーンやBGMを使っているんだけど、映画を観た人は「このシーンでこのBGMは使われていない」って思うかもしれない。
――あ、それは思いました。ここ、こんな曲だったかなって。
飯田 意図的にやっていて、ただシーンを垂れ流しているわけではないんです。映像とBGMを一旦切り離して、別の文脈でくっつけることによって、「この映画はこういうことだっけ?」って、最初に観たときと印象が変わってくる。
――もう一回映画を確認したくなりました。
飯田 でしょ? 俺もゲームを作りながら、これどういう映画だっけ? って思ったんだよ。面白そうだなあって映画を観たもん。
――シーンの確認のためじゃなくて、どういう映画がわからなくなったから(笑)。
飯田 うん。ゲーム作りながら、これは面白いぞと思って、映画を観に行ったらこれも面白くて、そのあとにゲームをプレイしたらまた面白くて……。
――もうそこらへんで。
飯田 それで出来上がった「サウンドインパクト」は、ゲームとして面白い自信があるし、「ヱヴァ」という主役を立てたという気持ちもすごくある。最後は映画のほうにクリエイティブを返せたと思う。
――最後まで通してやるとますますそう思いそうです。いますでに映画見直したいですもん。
飯田 ゲームと映画のサイクルにカタルシスがあるんです。単なるミニゲーム集にするとつまらないからね。1面1面クリアして行って、最後まで通してやるとすごい盛り上がるし、最後は「俺がシンジじゃないの?」ってくらい入り込むと思う。音ゲーなんだけど、映画を観ているような臨場感が味わえる。あと、きっかけは「スターウォーズ」でもある。
――そうなんですか?
飯田 「スターウォーズ」って、映画公開の1ヶ月前からでも劇場に並んでいたりするじゃない。俺も中学生のとき「機動戦士ガンダム」の映画に並んだんだよ。
――なぜ?
飯田 セル画もらえるから。
――あー。確実にもらうために。
飯田 「Q」も公開何日か前から徹夜で並ぶ人たちがいるだろうと思っているんです。あのときはウォークマンも携帯もないから、並んでいてもやることがなかった。でもいまはゲーム機がある。並んでいる人たちに「サウンドインパクト」をプレイしてほしい。「Q」に対する心の準備もできるし、テンションを上げることもできる。そうやって「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の完結を迎えることができたらいいなあ、と思い描いてつくりました。お、きれいにまとまったんじゃないの?
――「Q」公開時にプレイしている人がいないか見に行きましょう。
飯田 いいねいいね!
――でもみんな狩りをしている。
飯田 せっかくまとまったのに台無しだよ。
(加藤レイズナ)