インタビュー:一青窈「痛いとか、悲しいと感じるアルバムは作りたくない」
一青:無意識の内に月が出ていて、それを武部さんに指摘されて。「じゃあ、パートとしてこのアルバムで月部門を作ろう」みたいに、あえて月の部分をまとめていったんですよね(笑)。私は何か考えごとをしたい時に、下を向いてるとものすごくクヨクヨしてくるので、見上げる癖があって。あと、夜の方が思考が自由に流れやすいんですよね。私は割とお酒の力も借りちゃうんですよ(笑)。夜をギリギリまで持っていくという。
■昼間に歌詞を書かれることは少ないですか?
一青:夜に書いて、昼に提出するという感じですね。昼に何回も見直すんですけど、大体20分ぐらいで骨子が出来て、その後で肉付けをしたり削ぎ落としたりは昼夜合わせて。
■歌詞の主人公が、「僕」「君」という時と、「私」「あなた」という時とでは、使い分ける基準のようなものはあるんですか?
一青:音節の頭にあるかどうかとか、リズムによる部分とか、テクニカルにはあるんですけど。もうちょっと主人公に母性を持ってきたいとか、女の包む柔らかさとかを前に出したい場合は「あなた」「私」を入れるぐらいで。基本的には中立な立場でありたいと思っているので「僕」「君」が多いですかね。
■今回、川江美奈子さんや武部さんの他に、秦 基博さんや、高野寛さん、CRAZY KEN BANDの横山剣さんなどの楽曲を歌われていますが、作曲陣はどのようにして選ばれたのですか?
一青:一番最初にアルバムのプロデュースをお願いすると決めた段階で、武部さんに「やりたい人は誰?」と聞かれて。私がご一緒してみたいアーティスト名を挙げていって、その中で武部さんと「一緒にやったら面白そうだね」って二人でオファーしていったのがこの方々でした。
■1曲目のポエトリー・リーディングで静かに始まる「Key」から、2曲目の「空中ブランコ」(作曲:秦 基博)で一気にテンポアップして世界が開けて。こういう疾走感のある楽曲も一青窈さんの歌声とすごく合っているなと思いましたね。
一青:皆川さんのアレンジがカオス感を出してくれて。
■今回初めて一緒にやられた方などもいましたか?
一青:はい。アレンジャーは武部さんと話して、あえて武部さんではない方に、作曲家のブレーンでお願いしたので。鈴木正人さんや高田さんなんかは、私が好きなハナレグミやクラムボンなどと良くご一緒にされていているのですが、今回のような機会がないと世界観が交わることのないであろうミュージシャンなので、一緒に仕事ができて嬉しかったですね。
■「受け入れて」のPVは、監督の丹下さんと意見交換しながら制作されたそうですが、映像制作に対してもこだわりは強いですか?
一青:カメラをやりたいとか、映画を撮りたいという所にはあまりいかないですけど、表現していく媒体が違うというだけで、基本的に表現をするという意味では同じだとは思っていますね。私はたまたま文字が好きだったというだけで、その考えを共有できれば、視覚的に器とか絵で見せるとか、もっと新しく広がっていくから。他のアーティストの人が私の作品をもっと膨らませてくれる時に、自分が通り一辺倒でしか見えていなかったというのにも気付かされますし、他の人とコラボしていくというのは、批判も含めてすごく勉強になります。だから、私の世界だけを具現化していくというアーティストだと多分、物足りないと感じるかな。それは分かっている…分かっているというのはちょっと穿った言い方ですけど、「この曲は、もうちょっとこっちにも受け取れるよね」というのを見せてくれると、自分としても新たな発見があって嬉しいですね。それがすごく楽しいことだなと。
