炊飯器は1万円台から買える一方、10万円を超える高級モデルもめずらしくない。「タイガー魔法瓶」と「象印マホービン」の2万円台の売れ筋では、どれくらいのレベルで炊けるのか。家電プロレビュアーの石井和美さんが、白米から玄米、保温、冷凍まで食べ比べた--。

■2万円台と10万円超、何が違う?

炊飯器は1万円台で購入できる製品がある一方、各社の最高級モデルは10万円を超える。では、毎日のご飯を炊くために、本当に10万円以上の炊飯器が必要なのだろうか。逆に、価格を抑えた炊飯器を選ぶと、ご飯の仕上がりも大きく妥協しなければならないのだろうか。

筆者はこれまで各社の炊飯器を数多く試してきた。高級モデルが注目される一方、普及価格帯の炊飯器も進化しており、あなどれない。そこで今回は、2万円台で購入できるIH炊飯器を実際に使い、「安い炊飯器でも満足できるご飯が炊けるのか」を検証した。

使用したのは、タイガー魔法瓶(以下、タイガー)「JPW-K100」と象印マホービン(以下、象印)「NV-KA10」の2モデル。どちらも5.5合炊きのIH炊飯器だ。

白米を炊いてすぐ食べるだけではなく、お茶碗によそって少し冷めた状態、おにぎり、6時間保温、冷凍・解凍まで確認。さらに玄米も炊いて、仕上がりの違いをチェックした。

すべてのテストを終えて感じたのは、筆者が数年前に試した同価格帯の炊飯器と比べても、炊き上がりの完成度が上がっているということだ。ただし、10万円を超える最高級モデルとの差がなくなったわけではない。では、何が違うのか。

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タイガー魔法瓶「JPW-K100」と象印マホービン「NV-KA10」の2モデル比較。どちらも2万円台で買える - 筆者撮影

■内釜の重さは扱いやすい600g台

タイガー「JPW-K100」の消費電力は1225W。本体サイズは約幅26×奥行35.4×高さ20cm、重量は約3.6kgだ。象印「NV-KA10」の消費電力は1115W。本体サイズは約幅23×奥行35×高さ20cm、重量は約3.9kgとなっている。

実勢価格はタイガーが2万2000円前後、象印が2万8000円前後(2026年9月時点)。どちらも2万円台で購入できるIH炊飯器だ。

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どちらも5.5合炊き。サイズはほぼ同じだが、デザインは異なる - 筆者撮影

数字を比べると、タイガーは幅が3cmほど大きく、象印のほうが約300g重いものの、消費電力や本体サイズ、重量にそれほど大きな違いはない。実際に内釜の重さを計量してみたが、タイガーは635g、象印は650gで、その差はわずか15gだった。

高級炊飯器では、複雑な構造や厚みのある内釜を採用し、内釜だけでかなりの重量になる製品もある。それと比べると、今回の2台は内釜を洗うときにも扱いやすい。

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左がタイガー、右が象印の内釜。タイガーには取っ手がついており、本体から外しやすい - 筆者撮影

デザインは異なり、象印は幅23cmと比較的スリムで、すっきりとした今風のデザインで、電源コードは着脱できる。タイガーは少し懐かしさを感じるデザインだが、内釜には取っ手があり、しゃもじを本体サイドに立てて置くこともできる。

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象印は電源コードを外せる。タイガーはできない - 筆者撮影
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こんな風にしゃもじをしまっておける。あまり格好は良くないが、実用的 - 筆者撮影

基本的なスペックには大きな差がない一方、実際に使ってみると、使い勝手や炊き上がったご飯の食感には、それぞれの個性が表れていた。

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どちらも計量カップ、しゃもじ付き。タイガー(右)は寅の形になっていてかわいらしい - 筆者撮影

■タイガー「極うま」と象印「白米熟成」

価格を抑えたモデルとはいえ、炊飯モードは白米だけではない。

タイガー「JPW-K100」は、「白米」「極うま」のほか、「冷凍ご飯」「少量高速」「おにぎり」「玄米」「雑穀」「分づき」などを搭載している。「少量高速」では0.5合を最短約15分で炊飯できる。「冷凍ご飯」も用意されており、食べ方や保存方法に合わせて炊飯方法を選べる。

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タイガーは操作面が斜めなので見やすい - 筆者撮影

象印「NV-KA10」は、「白米」のほか、時間をかけて炊く「白米熟成」、「白米急速」「エコ炊飯」「炊きこみ」「すしめし」「おかゆ」「玄米」「雑穀米」「麦ご飯」などを搭載している。白米では「ふつう」「やわらかめ」「かため」と、好みに合わせて炊き上がりの食感を選ぶこともできる。

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象印は文字数が多く、少し見にくい印象 - 筆者撮影

なお、今回の比較では、白米についてはタイガーを「極うま」、象印を「白米熟成」で炊飯し、そのご飯を使って、炊き立てだけでなく、おにぎりや冷凍・解凍後などの変化も確認した。

■3合を炊くとタイガー62分、象印74分

今回は、白米3合を使って比較した。

タイガーは「極うま」で炊いてみた。「極うま」は、通常の「白米」より吸水工程に時間をかけ、米の甘みや弾力、香り、粘り、柔らかさなどを引き出すことを狙ったメニューだ。さらに炊飯後は約110~115℃の高温で蒸らし、米のα化を促進する。「極うま」で炊飯すると62分だった。一方、「白米」では49分。時間をかけて米に水を吸わせ、炊き上がりを整えるぶん、「極うま」のほうが炊飯時間は長くなる。

象印は「白米熟成」を使用した。こちらも時間をかけて米を水に浸し、芯までじっくり吸水させるのが特徴だ。芯まで水を行き渡らせることで米の芯からα化を促し、甘みを引き出すことを狙っている。3合を「白米熟成」で炊飯すると74分だった。「白米」は59分なので、こちらも通常の白米炊飯より15分長い。

つまり、どちらも吸水などに時間をかけて米の持ち味を引き出すことを狙った炊飯モードだ。タイガーの「極うま」は62分、象印の「白米熟成」は74分。今回の条件では象印のほうが12分長かった。

■タイガーは弾力、象印はみずみずしさ

そして、炊き上がってふたを開けると、まず目に入ったのがご飯のツヤだった。価格を抑えたモデルだからといって、どちらも見た目から物足りないという印象はない。

ただし、食べてみると2台の方向性はかなり違った。タイガーの炊き上がりは、表面にカニ穴も確認できる。しゃもじでほぐして食べてみると、米粒の輪郭がわかりやすい。もちもちしているが、弾力が強く、噛んだときに米粒の存在をしっかり感じる。

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タイガーは想像以上にしっかりした噛み応え - 筆者撮影

一方、象印は柔らかい。炊き立て直後は少し水分が多いようにも感じたが、表面がツルンとしていて舌触りがいい。タイガーほど強いコシはないものの、みずみずしく、スルッと喉を通る。

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象印は柔らかく、やさしい味 - 筆者撮影

同じ2万円台、同じIH方式でも、食感にははっきりとした違いがあった。タイガーは「弾力と粒感」、象印は「柔らかさとなめらかさ」という方向性だ。

■「食卓で食べる温度」で象印の印象が一変

炊飯器のレビューでは、炊き上がってすぐに試食することが多い。しかし家庭では、炊飯器から出したご飯をその場ですぐ口に入れるわけではない。お茶碗によそい、おかずを並べ、食べ始めるころには少し温度が下がっている。そこで、お茶碗によそって少し冷めた状態でも比較した。

タイガーは炊き立てより表面が少し硬く感じられるようになった。ただ、弾力はしっかり残っている。噛み応えのあるご飯を好む人にはわかりやすい特徴だ。

象印は逆に、このタイミングで印象が変わった。熱々の状態では「少し柔らかすぎるかもしれない」と感じたが、少し冷めると柔らかさがちょうどよくなる。みずみずしさも残り、表面のツルンとした感触もある。炊き立て直後より、食卓で実際に食べる温度になったときのほうがバランスよく感じられた。

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左が象印、右がタイガー。見た目はほとんど変わらないが、食感は全く異なる - 筆者撮影

炊飯器は、炊き上がってすぐの状態だけでは判断できない。実際に口にする温度まで確認すると、違った特徴が見えてくる。食感の違いは、炊飯後の内釜にも表れていた。象印の内釜には、少し潰れた状態の米粒が内側に付着していた。

一方、タイガーは米粒がほとんど付着していない。象印を食べたときに感じた「柔らかく、米粒が潰れやすい」という特徴が、内釜の状態にも表れているように見えた。

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象印は米粒が内側につきやすい。しゃもじでほぐしているときに、潰れてしまうことがあるからだ - 筆者撮影
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タイガーはキレイにすべてとれる - 筆者撮影

■おにぎりで違いがさらに鮮明に

タイガーは粒立ちがある一方、少し硬く感じることがあり、部分的にはダマになっているところもあった。食べたときの感覚だけでなく、炊飯後の釜にも2台の違いが見られた。

次に、冷めた状態での違いを見るため、おにぎりを作った。条件をそろえるため1個80gとし、強く握りすぎないよう軽く握った。

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冷めているおにぎり。これも見た目はわかりにくいが、食感がかなり異なった。左が象印、右がタイガー - 筆者撮影

タイガーは冷めても、もちもちとした弾力がかなり残っている。噛み応えがあり、冷めても米粒の存在を感じられる。一方、表面には少し乾燥したような印象もあった。

象印は柔らかく、なめらかで、冷めてもみずみずしい。ただし、柔らかいぶん、握ったときに米粒が少し潰れるような感覚がある。食べたときにも、噛むと米粒がギュッと潰れるように感じた。

タイガーほどの噛み応えはなく、口当たりはなめらかだ。おにぎりにしてみると、「弾力のタイガー」「柔らかさとみずみずしさの象印」という違いがさらに明確になった。

■6時間保温すると、個性がさらに強く出た

6時間、保温したご飯も食べてみた。

象印はかなり柔らかく、ご飯同士がくっついていた。しゃもじでほぐそうとすると、米粒が少し潰れるような感覚もある。それでも水分は十分残っており、パサパサした状態にはなっていない。

タイガーは6時間経っても弾力が強く、もちもちしている。ご飯同士もほぐれやすく、口に入れると米粒がパラパラッとほどける。一方で、水分感は象印より少なく、人によっては少し乾燥していると感じるかもしれない。

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6時間経過後、食べ比べ。どちらも変色などはないが、より個性が強調された感じになる。タイガーのほうが少し乾燥とごわつきが気になった - 筆者撮影

6時間保温したことで2台の差が縮まるのではなく、むしろ炊き立てで感じた特徴が強くなった。象印はより「柔らかく、みずみずしい」、タイガーは「弾力が強く、粒がほぐれる」といった印象だ。

なお、象印では保温中、定期的に「ジー」という音がするので、少し気になった。

炊いたご飯を冷凍保存する家庭も多い。そこで冷凍し、解凍した状態でも比較した。象印はかなり柔らかく、ご飯同士がくっついている。それでも、炊き立てで感じたなめらかさや食べやすさは残っていた。タイガーは冷凍後ももちもちとした弾力が残っている。ただ、若干ダマになったような部分があり、口に入れるとかなり強い噛み応えを感じた。

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1日冷凍した後、電子レンジで解凍 - 筆者撮影

そして両方に共通していたのが、冷凍・解凍すると、炊き立てに比べて粒立ちがやや損なわれたことだ。それでも柔らかい象印、弾力のあるタイガーという基本的な特徴は際立っている。

■玄米は「しっとり」の象印が食べやすい

白米だけでなく、「ソフトブラウン玄米」でも試した。条件は両機種とも2合。炊飯前に約1時間、水に浸した。通常の白米モードで炊飯できるタイプの玄米で、説明にもそのように書いてあったため、タイガーは「白米」モード、象印は「白米・ふつう」モードで炊飯した。炊飯時間はタイガーが49分、象印が59分だった。

タイガーは白米以上にカニ穴がはっきり確認できた。しゃもじを入れるとパラパラッとほぐれ、食べてもかなりほろほろしている。口の中で粒がほどけていくような感覚だ。ただ、少し硬く、パサつきも感じた。象印は対照的にしっとりしており、白米に近い感覚で食べられた。柔らかすぎるわけではなく、噛み応えも適度にある。

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象印の玄米は、しっとりと食べやすい - 筆者撮影
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タイガーの玄米は、口の中でパラパラッとほぐれる感じ - 筆者撮影

玄米特有の硬さやパサつきが苦手な人なら、今回の条件では象印のほうが取り入れやすいと感じた。白米だけでなく玄米でも、それぞれの炊飯器の個性が表れた。

■お手入れは内釜と内ぶたの2点だけ

炊飯器はほぼ毎日使うものだけに、炊き上がりだけでなく手入れのしやすさも重要だ。

以前の炊飯器では、内釜や内ぶたに加えて、蒸気口まわりの部品なども取り外して洗う必要がある製品があったが、今回の2機種は、日常的に洗う部品が内釜と内ぶたの2点で済む。これは、最上位モデルと同じで、5年以上前の炊飯器よりもお手入れはラクになっている。

そして、一連のテストを終えて改めて感じたのは、普及価格帯の炊飯器の底上げだ。筆者はこれまで仕事で数多くの炊飯器を試してきたが、数年前に試した同価格帯の製品と比べると、今回の2台は炊き上がりの完成度が上がっていると感じた。ツヤがあり、食感にも明確な特徴がある。しかも、炊き立てだけでなく、少し冷めた状態、保温後、冷凍・解凍後にも、それぞれの個性が残っている。モードも豊富だ。

「価格を抑えた炊飯器は、とりあえずご飯が炊ければいい」というイメージは、今回のテストでは当てはまらなかった。むしろ2万円台でも、「どんなご飯が好きなのか」で選べる。タイガーなら、粒立ちがあり、もちもちとした弾力と強い噛み応え。象印なら、柔らかくみずみずしく、なめらかな舌触り。基本スペックが近い2台でも、炊き上がりの方向性はこれだけ違っていた。

■最高級モデルとの差は「粒立ち」「甘み」

ここで気になるのが、「2万円台でここまで炊けるなら、10万円を超える炊飯器は必要ないのではないか」ということだろう。

しかし、筆者がこれまで最高級モデルを試してきた経験からすると、価格差がまったく仕上がりに表れないわけではない。特に差を感じるのは、「粒立ち」と「甘さ」だ。

最高級モデルの中には、一粒一粒の輪郭が明確でありながら、中心までふっくらと仕上がるものがある。さらに、噛んでいくうちに米そのものの甘みが広がり、白いご飯だけでも食べ進めたくなるような炊き上がりになる。

今回の2万円台の炊飯器でも、ツヤや弾力、みずみずしさは十分感じられたが、米粒の輪郭の鮮明さ、食感の繊細さ、そして噛んだときに引き出される甘みという点では、筆者がこれまで試してきた10万円を超える最高級モデルとの差を感じる。

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タイガーの最上位モデル「土鍋圧力IHジャー炊飯器 JRT-A100」で炊飯したご飯。こちらは土鍋が特徴で、価格は10万円以上。ご飯がピカピカで、粒立ちが際立っていることは、写真で見てもわかる。粒立ちと甘さを両立している - 筆者撮影

■「どんなご飯を食べたいか」で選ぶ

日々の食事で、ツヤがあり、自分の好みに合った食感のご飯を食べたいのであれば、2万円台のIH炊飯器も十分検討できる。ご飯そのものを主役として、食感や甘みまで追求したいのであれば、やはり上位モデルのほうが満足度は高いだろう。

なお、比較した2台はいずれも圧力機能を搭載していないIHタイプだが、もう少し予算を上げれば、3万~6万円台の圧力IH炊飯器も選択肢に入ってくる。炊き上がりにもう一段こだわりたいのであれば、この価格帯まで広げて検討するのもひとつの方法だ。

今回改めて感じたのは、価格だけで炊飯器を選ぶのではなく、「どんなご飯を食べたいか」を考えることの大切さだ。普及価格帯の実力が上がり、2万円台でも炊き上がりにこれだけ個性が出るようになった。だからこそ、価格の高低だけではなく、粒立ち、柔らかさ、弾力、みずみずしさ、甘みなど、自分がご飯に何を求めるのかを基準に選んでほしい。

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石井 和美(いしい・かずみ)
家電プロレビュアー
1972年生まれ。出版社の編集者を経てフリーランスに。日用品や家電のレビューを行うライターとして活動を始め、家電レビュー歴は15年以上。一戸建ての「家電ラボ」を開設し大型白物家電をはじめ生活家電の性能や使いやすさをテストしている。
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(家電プロレビュアー 石井 和美)