橘玲『エロス資本論』週刊SPA!で連載中!<イラスト>leionarts

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-[橘玲『エロス資本論』]-

「性的魅力は、資本になる」ーー。’00年代初頭、イギリスの社会学者キャサリン・ハキムが提唱した「エロス資本」という概念がある。若い女性の性的魅力は経済的価値を持つ「資本」であり、それをマネタイズすることには経済合理性がある、という考え方だ。
キャバクラ嬢、コンカフェ嬢、アイドル、立ちんぼ……。本連載では、作家・橘玲がエロス資本の視点から、彼女たちの行動と動機を深く掘り下げていく。

(※本記事は週刊SPA!連載「エロス資本論」Vol.3を元に構成しました)

◆若い女性があえて低時給のコンカフェで働く合理的な理由

かつて、女性が「自らの若さと美貌」という年齢に制約された資本をマネタイズしようと考えたとき、その向かう先は明快だった。銀座のクラブであり、六本木のキャバクラであり、あるいはもっと直接的な風俗産業だ。そこには明確な「エロス資本」の相場があり、女性たちはその対価として、一般的なアルバイトとは比較にならない高額な報酬を手にしてきた。

しかし今、夜の繁華街ではまったく異なる力学で動く生態系が急速に拡大している。コンセプトカフェ、通称「コンカフェ」--特定の衣装を着たり、お店独自のテーマや世界観に沿った内装・サービスを提供する飲食店の総称だ。

かつてキャバクラよりも安く楽しめるということで一世を風靡した「ガールズバー」は、法規制の回避や多様化する客層への対応、集客力の向上などから、次々とコンカフェへと姿を変えてきた。

コンカフェの店舗数は、秋葉原の中心部だけでも2000年代初頭の約11店から、2002年には約100店、今では200店を超え、右肩上がりに増え続けている。

しかし、驚くべきはその給与水準だ。東京都の最低賃金が1226円(※1)というなか、有名コンカフェの多くが提示する時給は1300円。ほぼ最低時給と言ってもいい。体を張る風俗嬢や、高い時給と引き換えに厳しい出勤ノルマや売り上げランキングを課されるキャバクラ嬢と比べれば、経済的なリターンはあまりにも少ない。

しかし、この時給1300円の求人に、信じられないほどの数の女性たちが殺到している。新宿にある日本一のコンカフェと称される店では、新店舗のオープンにあたり、公式LINEでの応募が400人、面接に進んだのが100人、そして最終的な合格者はわずか25人だったという。合格率およそ6%の超高倍率の競争だ。

なぜ、現代の若い女性たちは、これほどまでに「稼げない場所」を目指すのか。若さや美貌という有限の資産を最大限収益化する「エロス資本の経済学」は、一見通用しないように思える。しかしそこには別のモチベーションがあり、現代特有の「新しい合理性」が浮かび上がってくる。