高齢者の在宅ケア、“手伝いすぎ”はNG? 寝たきりを防ぐ関わり方を医師が解説

「骨折をきっかけに歩く機会が減ってしまった」「膝や腰が痛くて、家の中でもあまり動かなくなった」――整形外科疾患がある高齢者では、活動量が減ることで筋力や体力が低下し、寝たきりにつながることがあります。しかし、適切な治療やリハビリテーションに加え、日々の生活を少し工夫することで、住み慣れた自宅で自分らしい生活を続けられる可能性があります。今回は、高齢者が在宅で暮らすメリットや、整形外科疾患がある人が身体機能を維持するためのポイントについて、仁整形外科クリニック院長の松林先生に話を聞きました。

※2026年7月取材。

監修医師:
松林 保智(仁整形外科クリニック)

1986年に順天堂大学医学部を卒業後、順天堂大学医学部附属病院整形外科学教室に入局。1994年、千葉県市川市に仁整形外科クリニックを開業。医学博士、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医。

高齢になっても、自宅で暮らし続けるために

編集部

高齢になっても、自宅で暮らし続けたいと考える人は多いのでしょうか?

松林先生

多くの人が、できる限り住み慣れた自宅で暮らし続けたいと希望しています。長年生活してきた環境には安心感があり、家族や近所の人とのつながりも保ちやすいためです。高齢になっても、その人らしい生活を続けられることは、心身の健康という面でも非常に大きな意味があると考えています。

編集部

在宅で過ごすことには、どのようなメリットがありますか?

松林先生

在宅では、生活のペースや習慣を大きく変えずに過ごせます。また、食事や着替え、家の中の移動など、日常生活そのものが体を動かす機会になります。私も訪問診療を続ける中で、自宅へ戻ることで表情が明るくなり、意欲を取り戻す患者さんを数多く見てきました。体だけでなく、精神的な面でも在宅生活には大きなメリットがあります。

編集部

疾患があっても、自宅で生活を続けることは可能なのでしょうか?

松林先生

もちろん可能です。慢性疾患があったり手術後であったりしても、適切な治療やリハビリを行い、生活環境を整えれば、自宅で生活を続けられる人は少なくありません。「疾患があるから無理」「一人暮らしだから難しい」と決めつけず、その人に合った生活を一緒に考えることが大切です。

編集部

「通院を続けられるか心配」という人もいると思います。

松林先生

身体機能の低下などによって通院が難しくなった場合には、訪問診療や訪問リハビリなどのサービスを利用できることがあります。必要な医療やリハビリを自宅で受けられるケースもありますので、まずは主治医に相談してもらいたいですね。

整形外科疾患があっても機能を維持するための工夫

編集部

在宅で暮らしている高齢者が抱えている整形外科疾患には、どのようなものがありますか?

松林先生

代表的なのは、大腿骨近位部骨折(だいたいこつきんいぶこっせつ)の手術後、変形性膝関節症・変形性股関節症、脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)などです。こうした疾患では、退院後の生活が身体機能を大きく左右します。リハビリの時間だけ頑張るのではなく、自宅でどのように生活するかが、寝たきりを防ぐための重要なポイントになります。

編集部

自宅で生活する際、まず意識したいポイントを教えてください。

松林先生

まずは、ベッドで過ごす時間をできるだけ減らすことです。食事は可能であればベッドの上ではなく食卓でとりましょう。日中も、座ってテレビを見て過ごすようなときは、ベッドではなくリビングへ移動するなど、生活の中で自然と体を動かしたり、景色が変わったりする機会をつくるとよいでしょう。近くを散歩するのもおすすめです。

編集部

日常生活の中で、体を動かす工夫はありますか?

松林先生

あります。例えば、靴下を自分で履く、椅子から立ち上がる動作を意識して行うなど、日常生活の中でできることを続けていくことが重要です。調子のよい日には、机や手すりにつかまりながらスクワットや足踏みをしてみてください。何でも家族にやってもらうのではなく、「自分でできることは自分で行う」という意識を持つことで、身体機能は保たれやすくなります。

編集部

座ったままや寝たままでもできる運動を教えてください。

松林先生

椅子に座って膝をゆっくり伸ばしたり、足踏みをしたり、足首を回したりする運動は比較的安全に行えます。また、寝たままでも足首を動かしたり、膝を曲げ伸ばししたり、片脚ずつ持ち上げたりする運動は、筋力の維持に役立ちます。ただし、疾患や手術後の状態によって適した運動は異なるため、主治医やリハビリスタッフの指導を受けながら行うようにしましょう。

無理なく続けることが寝たきり予防につながる

編集部

「頑張りすぎてしまう人」や、逆に「動くのが怖い人」も多いと思います。どのような点に注意すればよいでしょうか?

松林先生

無理は禁物です。痛みを我慢して運動を続けたり、一度にたくさん体を動かそうとしたりする必要はありません。一方で、「転ぶのが怖いからまったく動かない」という状態も、筋力の低下を招きます。大切なのは、その日の体調に合わせて、無理のない範囲で毎日少しずつ体を動かすことです。

編集部

家族はどのようなサポートをするとよいですか?

松林先生

転倒しないよう環境を整えたり、見守ったりすることは大切ですが、必要以上に手助けをしてしまうと、本人が体を動かす機会を失ってしまいます。できることは本人に任せ、難しいところだけをサポートすることが、自立した生活を長く続けることにつながります。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

松林先生

通院が難しくなったことをきっかけに、そのまま受診しなくなってしまう人もいますが、それは最も避けたいことだと思っています。私たちは、そうした場合でも訪問診療や訪問看護、訪問リハビリなどを活用しながら、患者さんが元気を取り戻し、再び通院できるようになることを目標にしています。こうしたサービスの利用に遠慮やためらいを感じる人も少なくありませんが、導入が早いほど回復につながりやすいため、ぜひ前向きに検討してもらいたいと思います。
最近は、電話などで相談を受け付けている医療機関もあります。通院が難しくなってきた場合は、近くのこうした医療機関に相談することも一つの方法です。高齢者のADL(日常生活動作)を維持するためにも、本人や家族だけで抱え込まず、必要な支援を積極的に利用することをおすすめします。

編集部まとめ

整形外科疾患があると、「安静にしていたほうがよいのでは?」と考えてしまいがちですが、無理のない範囲で体を動かし続けることが、身体機能の維持や寝たきり予防につながります。食卓で食事をする、リビングで過ごす、自分でできることはできるだけ自分で行うなど、日々の生活の中で活動量を落とさない工夫も欠かせません。通院が難しくなったときでも、訪問診療や訪問リハビリなどを利用できる場合があります。不安がある人は、まずは主治医へ相談してみてはいかがでしょうか?

医院情報

仁整形外科クリニック

■ 診療科目
・千葉県市川市行徳駅前2-1-11花いちビル2F:リハビリテーション科、内科、循環器内科、整形外科
■ 診療時間
・千葉県市川市行徳駅前2-1-11花いちビル2F:午前: 月~土9:00~12:00(科目毎時間・曜日あり)
午後: 月火水金15:00~19:00土14:00~16:00(科目毎時間・曜日あり)
■ 休診日
・千葉県市川市行徳駅前2-1-11花いちビル2F:木曜午後・日・祝

0120-566-751

ホームページ