《内田梨瑚受刑者の裁判に乱入した村山哲志被告(48)》弁護人が“暴力団所属・前科2犯”の過去を法廷で明かした理由 「遺族の無念を少しでも…」本人主張に裁判官が入れた「ツッコミ」
注目の公判中、事件は今年6月22日に起きた--この日、旭川地方裁判所では、2024年4月に当時17歳の女子高生を全裸にした上で橋から転落させて死亡させた(以下、旭川事件)として、殺人などの罪に問われていた内田梨瑚受刑者(2026年6月判決時点で23歳、懲役27年確定)に対する裁判員裁判の判決が言い渡されていた。その最中、法廷に入るのに必要な傍聴券を持たない村山哲志被告(48)が法廷内に乱入すると、「死刑やろが、コラ!」「何が(懲役)27年じゃ!」などと騒ぎ立て、裁判の進行を妨害した。
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9月11日、旭川地方裁判所はこの行為によって建造物侵入罪、威力業務妨害罪で起訴された村山被告の初公判を開き、検察官は拘禁刑2年を求刑して結審した。
村山被告の逮捕、そして初公判報道にはネット上でさまざまな反応が見られた。事件のきっかけとなった旭川事件の公判の注目度も高かったため、厳しい判決を求めるような村山被告の行動を英雄視する反応も決して少なくなかった。
そんな村山被告は実際なぜ事件を起こしたのか。法廷でその理由が本人の口から語られた--傍聴を行った裁判ライターの普通氏がレポートする。【全3回の第3回。第1回から読む】
弁護人が指摘した「遵法意識の欠如」
村山被告の規範意識に関わる点なども質問していく。
70万円ほどの借金があるという村山被告。しかし、捜査機関への取調べに際し「返す気がないから気にしていない」といった供述が残されている。借金と、今回の事件は直接的な結びつきは立証されていないが、弁護人は「遵法意識の欠如は事件にも関係ある」として、根本の思考を省みるよう指摘する。
また、暴力団組織に所属していた時期に、揉め事の見せしめとして車で建造物に衝突したことから実刑判決を受けた村山被告。また、それ以外にも組織幹部と共謀し、今回の罪名と同じ威力業務妨害罪で有罪判決を受けている。
今回の判決に直接影響しないほどの古い前科であったのだが、あえて弁護人は指摘して突発的に行動してしまう性格を自覚させているようだった。また犯行には直接影響ないとされているが、軽度の統合失調症、注意欠如・多動症の診断もあり、適切に医療機関を受診するように促した。
「遺族がどんな気持ちになると思ったのか」
続いて検察官も質問を行う。検察官は、司法手続きを妨害されたという立場はもちろんのこと、旭川事件の遺族に触れてきたという立場でもある。村山被告は判決の場で起こした犯行に、遺族に迷惑をかけたと謝罪をする。犯行当時も遺族にかかる迷惑が頭に浮かんだというが、それでも決行した。
検察官 「迷惑かかるかもという考えがあったのにやったのですか?」
村山被告 「被害者家族の無念を晴らさないと、とそのときは思ってました」
検察官 「家族の方は静かに判決を聞いてて、どんな気持ちか考えなかったんですか」
村山被告 「最初は思いました。しかし、女の子の親として無念は言い表せないと思い……少しでも力になろうと思い……。結果として迷惑をかけて心よりお詫び申し上げます」
あくまで、遺族の力になりたい思いであったと主張する村山被告。しかし、当然遺族の思いを直接聞いたものではない。
裁判官 「あなたが内田さんに暴力を振るって、ご遺族の無念はどのように晴れると思ったんですか」
村山被告 「(懲役)27年はとても自分は容認しがたく、無念が残ると思い、ほんの僅かでも無念が晴れたらと」
裁判官 「遺族の無念が晴れるというのはどういうことですか」
村山被告 「一撃でも二撃でもしたら、少しでも晴れるのかなと」
裁判官 「あなたが攻撃を加えることで、遺族がどんな気持ちになると思ったんですか?」
村山被告 「何もしないよりかは、打撃があった方がよかったんじゃないかと思い」
遺族の方は、内田受刑者の判決の後に方々に配慮しながら、冷静にその気持ちを表すコメントを残している。そのほんの一部を抜粋する。
「大切な人を殺されれば、もうその命は戻ってきません。遺族はその悲しみ苦しみとともにずっと歩むことになります」
今後も、家族を失った現実とともに生活を歩む遺族と、一時的な感情の爆発で「遺族のために」と一撃を加えようとした村山被告。その思慮の深さの差は、虚しさを感じるほどだった。事件以後、逮捕勾留された村山被告はこのような遺族のコメントを見て、考えを改めることがあったのかは裁判では明らかにならなかった。
検察求刑は「拘禁刑2年」
検察官は、司法手続きを不能ならしめる極めて悪質な犯行と厳しく非難。事件とは関係ない第三者による、一方的な不満で、自身の考えを押し通すために暴力を持って制裁を加えるような姿勢は、今後の社会的影響も鑑み厳しく罰するべきとして、拘禁刑2年の実刑に処するべきと求刑した。
弁護人は、旭川事件の報道に触れる中で、十分な情報も吟味しないまま妄信した犯行ではあるが、その判決はネット上でも大きく話題になるなど個人の考えとしては容認できるものと弁護。その他、前科も暴力団組織に所属していた15年以上前のもので、本件も素直に供述し、反省の態度を示しているなどとして寛大な判決を希望した。
単に著名な凶悪犯罪に付随した事件として終わらせるのでなく、司法手続きとあり方、情報の発信と受け取り方、さまざまな方面に課題をあらわにした本件に、司法はどのような判断を下すのか注目したい。
判決は9月29日に言い渡される。
(了。第1回から読む)
◆取材・文/普通(裁判ライター)
