IoTプラットフォーム「BizStack」を提供するMODEは9月17日、現場DXをテーマとしたイベント「MODE CHANGE 2026」を開催した。

イベントでは、MODE CEO/Co-Founderの上田学氏が「デジタルから、フィジカルへ - AIが現場に降りてくる時代に、MODEは何を賭けるのか」と題して基調講演を行った。

上田氏は、AIエージェントの急速な普及によって仕事のあり方が大きく変わり始めていると指摘。一方、設備や車両、センサーなどとつながる現実世界では、不安定さを持つAIをそのまま動かすことにはリスクがあるとして、AIを業務プロセスの中で安全に活用する「AIワークフロー」の考え方を紹介した。

さらにMODEは、この考え方を実装する新たなワークフローエンジン「BizStack Workflow」を披露した。AIエージェントが現実世界に入り込む中、企業はAIをどのように業務へ組み込めばよいのか。上田氏の講演と新製品から見ていこう。

MODE CEO/Co-Founder 上田学氏

「今後20年間続く仕事の変革が始まった」、AIエージェントがもたらす変化

上田氏はまず、現在のシリコンバレーについて「AI技術の進歩は日進月歩で、毎週のように何かが起こっている」と説明した。技術の進歩があまりに速く、「最新技術が自分たちの領域にどう関わるのかを見極めていくのが非常に大変」な状況にあるという。

最近のシリコンバレーで起こっていること(講演資料より)

こうした中、上田氏が2026年前半の大きなトレンドとして挙げたのが「AIエージェントの爆発的普及」だ。AIは質問に回答するだけの存在から、自らタスクを遂行する存在へと進化し、特にソフトウェア開発の現場ではコーディングエージェントが急速に普及している。

上田氏によると、シリコンバレーでは、人間のリーダーと複数のAIエージェントで開発チームを構成するケースも現れ始めているという。こうした変化を踏まえ、これからのエンジニアには、自らプログラムを書くことだけでなく、「何を作るのか」というビジョンを示し、AIの成果を判断してフィードバックする役割が求められるとの見方を示した。

AIのブレークスルー(講演資料より)

そして上田氏は、現在を「今後20年間続く、仕事の変革の始まり」と表現した。インターネットが長い時間をかけて社会に浸透し、生活や仕事に欠かせないインフラになったように、AIも今後長い時間をかけてさまざまな仕事に入り込んでいくという。

では、AIエージェントがソフトウェアの世界を越え、設備や機械が動く現実世界に入ってきたとき、どのように安全に利用すればいいのか。ここにMODEが取り組もうとしている課題がある。

なぜMODEはAIエージェントを「現実世界」に持ち込むのか

AIエージェントの活用が広がる中、MODEが注力するのが、設備や車両などが動く「現実世界」だ。上田氏は、MODEが創業以来、「ソフトウェア技術を仮想の世界ではなく、現実の世界に持ってくる」ことに取り組んできたと説明した。

AIを現場で活用するためには、設備や車両、既存システム、カメラ、センサーなど、現実世界に存在するさまざまなデータとAIをつなぐ必要がある。

MODEの「BizStack」は、センサーやカメラなどから収集した現場データを統合し、AIで業務を支援するIoTプラットフォームだ。チャットで質問するだけで、現場データの照会や分析、レポート作成などを自動化でき、AIが複雑な情報を整理することで、人間は判断に集中できる。上田氏はBizStackを「現場の今を理解するための情報基盤」と位置付けた。

現場全体を理解しつなぎ、動かすレイヤー「BizStack」(講演資料より)

一方、AIが現場の状況を理解するだけでなく、その情報をもとに判断し、業務を実行するようになれば、安全性という新たな課題が生じる。生成AIは従来のプログラムとは異なり、同じ指示に対して常に同じ結果を返すとは限らないからだ。

では、不確実性を持つAIエージェントを、設備などが動く現実世界でどのように安全に働かせるのか。そこでMODEが示したのが「AIワークフロー」という考え方だ。

不安定なAIを現場で安全に動かす「AIワークフロー」とは

AIが現場の状況を理解するだけでなく、その情報をもとに判断し、業務を実行するようになれば、安全性という新たな課題が生じる。生成AIは従来のプログラムとは異なり、同じ指示に対して常に同じ結果を返すとは限らないからだ。

設備などが動く現実世界では、AIエージェントが誤った判断をそのまま実行すれば、大きなリスクにつながる可能性もある。

AIが自律的に判断・実行することには現場ならではのリスクもある(講演資料より)

そこでMODEが示したのが「AIワークフロー」という考え方だ。業務をAIエージェントに丸ごと任せるのではなく、あらかじめ定めた業務プロセスの中にAIによる判断を組み込み、自動化していく。

上田氏は、人間が仕事をする際にも手順書やマニュアルに従うのと同様に、AIエージェントも能力があるからといって自由に動かすのではなく、決められた手順に沿って働かせる必要があると説明する。

具体的には、「検知」「状況把握」「判断」「手順実行」「報告」という一連のプロセスを定義し、その中にAIや人間の判断を組み込む。AIにすべてを任せるのではなく、必要に応じて人間が判断することで、安全性を確保する考え方だ。

AI活用のサイクル(講演資料より)

上田氏は、AIは同じ処理を毎回同じように実行することを得意としていないと指摘する。そのため、決められた処理を確実に実行する従来型のプログラムと、AIによる柔軟な判断を組み合わせることが重要になるという。

そのうえで上田氏は「一番大事なのは人間との協調」と強調した。すべての仕事をAIに置き換えるのではなく、人間とAIがそれぞれの役割を担いながら業務を進めることが、現場でAIを活用するうえで重要になるとの考えだ。

「決められた業務」と「AIの判断」を組み合わせる「BizStack Workflow」

こうしたAIワークフローの考え方を実装するためにMODEが開発したのが、ワークフローエンジン「BizStack Workflow」だ。

BizStackに集約された現場データに加え、天気や警報などの外部情報を取得し、AIによる判断や通知、レポート作成などを組み合わせることで、一連の業務プロセスを自動化する。定義したワークフローは再利用することもできる。

「BizStack Workflow」(講演資料より)

上田氏がそのコンセプトとして掲げたのが、「Deterministicな業務の骨格」×「AIによる柔軟な判断」だ。決められた処理は確実に実行しながら、必要な部分にAIの判断能力を組み込む。

BizStack Workflowは、この仕組みを「エンティティ」「トリガー」「ワークフロー」「ガバナンス」の4つのレイヤーで構成する。エンティティは現場の「今」をデータとして捉え、トリガーは現実世界の変化を業務開始のきっかけにする。ワークフローはその後の一連の処理を実行し、ガバナンスでは権限や承認、実行記録などを管理する。

「BizStack Workflow」の4つのレイヤー(講演資料より)

AIへの指示からワークフローそのものを作成

講演では、BizStack Workflowを使ったデモも披露された。紹介されたのは、平日の朝に天気予報を確認し、その結果に応じて貯水タンクの水位をチェックして、結果をチャットで報告するワークフローだ。

発動する日時などの条件を設定し、BizStackに集約された貯水タンクのデータを取得。天気予報と水位データを組み合わせ、結果をレポートとして通知する一連の処理を構築した。

発動条件として日付や時間を入力(講演資料より)

結果を出力(講演資料より)

各処理は「ノード」と呼ばれる作業単位として組み合わせる。AIエージェントに処理全体を自由に任せるのではなく、あらかじめ定義されたフローの中にAIによる判断を組み込むことで、業務を予測可能な形で実行できるという。

さらにBizStack Workflowでは、AIエージェントを使ってワークフロー自体を作成することもできる。デモでは、AIに「サイロの位置を地図の画像に表示して」と自然言語で指示し、地図上に情報をマッピングする機能を作成。その処理をワークフローとして書き出す様子も披露された。

AIエージェントによるワークフローの作成(講演資料より)

上田氏は、AIエージェントを現場で活用するには、AIにすべてを任せるのではなく、定められたワークフローの中で動かすことが重要だと改めて強調した。

MODEは今後、トリガーやノードを拡充するとともに、AIエージェントによるワークフロー構築機能などを強化していく方針だ。上田氏は「人間とAIが共に働く現場の未来をつくっていく」と、今後の方向性を示した。